「言語道断」とは言葉に表せないほどひどいこと
「言語道断」とは、「ごんごどうだん」と読みます。言葉には言い表せないほどひどいという意味です。「言語」は言葉に出して表現するという意味があり、「道断」は方法がないことを表します。
【言語道断】
[名・形動]
1 仏語。奥深い真理は言葉で表現できないこと。
2 言葉で言い表せないほどひどいこと。とんでもないこと。また、そのさま。もってのほか。「人のものを盗むとは言語道断だ」「言語道断な(の)行い」
3 言葉で言いようもないほど、りっぱなこと。また、そのさま。
「時々刻々の法施祈念、—の事どもなり」〈平家・一〉
4 表現しがたいほど驚嘆した気持ちを表す語。感動詞的に用いられる。
「—、ご兄弟のご心中を感じ申して」〈謡・春栄〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「言語道断」は仏教に由来する言葉であり、本来は異なる意味を持ちます。ここでは、「言語道断」の由来や言葉の意味についてご紹介します。
「げんごどうだん」は誤り
「言語道断」は、「げんごどうだん」と間違って読まれることが多い言葉です。
「言語道断」の「言」は「げん」とも読みますが、「言語道断」の場合は「ごん」と読みます。「ごん」の音読みは仏教用語に多い呉音(ごおん)という読み方で、これは、「言語道断」が仏教由来の言葉であることに関係しています。
くれぐれも「げんごどうだん」とは読まないよう、十分注意しましょう。
仏教に由来する言葉
「言語道断」が仏教由来の言葉であるとお伝えしましたが、もともとは仏教の奥深い真理や悟りの境地を表すポジティブな言葉でした。奥深い教えや究極の境地が、言葉では到底表現することができないほど尊く、素晴らしいことを意味していたのです。
仏教から離れて使用されるようになってからも、しばらくは肯定的な意味で使われていました。平家物語でも、「言いようがないほど立派である」という意味合いで使われています。
しかし、現代では本来の意味では使われなくなり、「言葉に言い表せないほどひどい」という、正反対の意味で用いられるようになったのです。
強い否定や批判の意味が込められている
現代における「言語道断」の意味は、「言葉にならないほどひどい」という、強い否定や批判が込められています。断罪にも近いニュアンスが含まれており、「言語道断」と言われた側は、少なからず衝撃を受けるでしょう。使う場面は、慎重に考えなければなりません。
そのほか、「言語道断」は常軌を逸している事柄に対し、端的に表現したいときにも使える便利な言葉です。「子どもをいじめるのは言語道断だ」「言語道断な行為がまかり通っている」という使い方をします。
「言語道断」の例文
「言語道断」の例文をいくつかご紹介します。前後の文脈から、言葉の意味を確認しましょう。
・自分の結婚式に遅刻するなんて【言語道断】だ
・不祥事をもみ消そうとした行為は【言語道断】である
・パワハラをなかったことにしようとする上層部は、【言語道断】と断罪された
・失礼な行為をした上にお詫びの一言もないのは【言語道断】である
・彼が出した企画は奇抜すぎて、【言語道断】と一蹴された
「言語道断」の類義語
「言語道断」にはいくつかの類義語があります。そのうち、相手を拒絶する意味合いのある「問答無用」は、「言語道断」と同じく強いニュアンスがある言葉です。また、議論する価値もないと一蹴する「論外」も、相手を責める意味合いが強い類義語といえるでしょう。
ほかにも、類義語として「沙汰の限り」という言葉があります。ここでは、「言語道断」とよく似た言葉について見てみましょう。
問答無用(もんどうむよう)
「問答無用」は、議論の必要はない、議論しても何の利益もないという意味です。話を拒絶するニュアンスがあります。相手の話を一方的に打ち切る場合、あるいは一方的な行動を押し通す相手を表現する際に使う言葉です。
例文を確認してみましょう。
・話し合っても解決には至らなそうだ。これ以上は【問答無用】だ
・上司から、【問答無用】で残業を命じられてしまった
論外(ろんがい)
「論外」とは、論ずる価値もないという意味です。当面の議論に関係ないという意味でも使われますが、「話にならない」など批判的な意味合いで使われることが多いでしょう。「取り合う価値もない」と軽んじるニュアンスがあるため、使用する際は注意が必要です。
例文で意味を確認しておきましょう。
・進行中のプロジェクトに関する会議をしているとき、別の企画の話を持ち出すのは【論外】だ
・夜遅い外出も許されないのに、何日も家を開ける旅行なんて【論外】と言われるに違いない
沙汰の限り(さたのかぎり)
「沙汰の限り」は、是非や善悪を議論する余地がない、その範囲を越えているという意味です。
「沙汰」の「沙」は砂、「汰」はより分けるという意味があり、「沙汰」には物事を処理することや、物事の善悪や是非などを論じ定めるという意味があります。
例文は以下の通りです。
・これだけ注意しても守れないのでは、【沙汰】の限りだ
・自分が行ったことを人のせいにしようとするのは、【沙汰】の限りといってよいだろう
「言語道断」の対義語
「言語道断」には、明確な対義語とされるものはありません。「言語道断」が持つ「ありえない」という意味合いから考えれば、「許容」や「容認」「寛容」といった言葉が反対の言葉として挙げられます。
また、四字熟語では「当代無双 (とうだいむそう)」という言葉が対義語になりうる言葉といえるでしょう。「その時代のなかで右に出る者がいないほど優れている」という意味で、「言語道断」の「言葉にならないほどひどい」という意味の反対となりえます。
ここでは、「言語道断」の反対「許容」を見ていきましょう。
許容(きょよう)
「許容」は、本来は許せないことを大目に見て許すという意味です。歓迎はしないものの、受け入れるというニュアンスがあります。拒絶の意味合いがある「言語道断」とは正反対の意味になるといえるでしょう。
例文を紹介します。
・今回のことは自分にも原因があり、【許容】しようと考えている
・誰にでも間違いはあり、多少のことは【許容】すべきだ
まとめ
「言語道断」は言葉には表せないほどひどいという意味です。仏教に由来する言葉で、本来は仏教の奥深い真理などが言葉にならないほど素晴らしいというポジティブな意味で使われていました。
しかし、現在は正反対のネガティブな意味を持つようになり、強い批判を表す言葉となっています。相手を拒絶する意味合いがあり、使う場面は慎重に選ばなければなりません。例文も参考に、「言語道断」を正しく理解しましょう。
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