免疫力の低下が招く代表的な疾患には、がんがあります。酪酸はがんのなかでもっとも患者数が多い、「大腸がん」の発生を抑えるという報告もあります。
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すでに医薬品として医療現場で使用
![酪酸 医薬品](https://domani.shogakukan.co.jp/wp-content/uploads/2022/04/shutterstock_1167232732.jpg)
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酪酸を作り出す酪酸菌で有名な菌として、「クロストリジウム・ブチリカム」があります。この菌は、千葉医科大学(現・千葉大学医学部)の宮入近治博士が日本人の腸内フローラから発見し、分離した菌で、すでに医薬品として医療現場で処方されています。
大腸がんができやすいマウス(APC遺伝子ノックアウトマウス)に高脂肪のエサを与えると、さらに大腸がんが発生しやすくなります。しかし、このマウスに酪酸菌であるクロストリジウム・ブチリカムを与えると、大腸がんができづらくなるのです。
つまり、酪酸菌は大腸がんの発生を抑える効果が期待できるのです。
![大腸腫瘍細胞における酪酸の効果](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/1040/img_d3c2a6a2d5a0df855b833151007854e061652.jpg)
大腸腫瘍細胞における酪酸の効果(同書より)
反対に、酪酸は免疫の過剰反応が招く「アレルギー」や「自己免疫疾患」にも役立つ可能性が示唆されています。
アレルギーと聞くと、真っ先に思い浮かべるのが「花粉症」ではないでしょうか。花粉による季節性のアレルギー性鼻炎は、毎年、特に春になると発症。ひどい鼻水や鼻づまり、くしゃみに悩まされたり、苦しんだりする人が多く、国民病ともいわれています。これは免疫の反応が過剰になることで起こるアレルギー症状の1つです。