乙女の香り
「空木」には、「乙女の香り」という花言葉も。ちょうど「空木」の花が咲く頃は、「早乙女」と呼ばれる女性たちが、田植え作業に精を出す時期でもありました。若々しい女性と、白く可憐な「空木」の花のイメージが重なったのかもしれません。
古典の中の「空木」
「空木」の白い花は初夏を告げる風物詩とされ、古くから多くの詩歌に詠まれてきました。平安時代には、清少納言が書いた随筆『枕草子』に「空木」が登場します。ある日、ホトトギスを見に出かけた清少納言一行が、帰り道に「空木(作中では卯の花)」を見つけました。彼女はそれを車に飾り、帰京したという話が記されています。
その他にも、日本最古の和歌集『万葉集』には、「五月山 卯の花月夜 ほととぎす 聞けども飽かず また鳴かぬかも」と詠われています。当時は、「空木」よりも「卯の花」と呼ばれるのが一般的であったようです。
「空木」の種類
「空木」は、庭木として自宅でも育てることができる樹木です。気になる種類を見つけて、植えてみてはいかがでしょう。
シロバナヤエウツギ
「シロバナヤエウツギ」は、白い八重咲きの花を咲かせます。通常「空木」は5枚の花弁を持つ一重咲きの花なので、こちらはより華やかな重厚感のある品種となっています。
サラサウツギ
「サラサウツギ」も同じく八重咲きで、花弁の外側が淡桃色の品種。柔らかく可愛らしい印象があります。
ヒメウツギ
「ヒメウツギ」は、関東より西の地域の山地などに自生します。葉がやや薄く、鮮やかな緑色をしているのが特徴です。花の開花時期が「空木」よりも早く、ひとまわりサイズが小ぶりなため「ヒメウツギ」と呼ばれます。
ウメウツギ
「ウメウツギ」は、関東地方や中部地方の山地にまれに生える品種。朝鮮にも分布し、少数の白い花を下向きにつけているのが特徴です。
ビロードウツギ
濃いピンク色の花を咲かせる「ビロードウツギ」。「ケウツギ」とも呼ばれます。花の表面に産毛のようなものが生えており、ベルベットのような光沢感があることから名付けられたといわれています。
ムラサキウツギ
色鮮やかな赤紫色の花が美しい「ムラサキウツギ」。「空木」の花には珍しい濃い色の花を咲かせます。白い「空木」と共に植えて、白と紫のコントラストを楽しんでみるのもよいでしょう。別名「アケボノウツギ(曙空木)」とも呼びます。
「空木」の育てかた
「空木」は、暑さや寒さに強く初心者にも育てやすい樹木です。庭に植えるのは、12月〜3月が適期。前もって腐葉土などの有機物を撒いてから苗を植えましょう。「空木」は日当たりがよく、湿り気のある場所を好みます。できれば風通しや水捌けのいい土壌が適していますが、そこまで気にする必要もないようです。
庭植えであれば、ほとんど水やりの必要はありません。鉢植えの場合は、土の上面が乾いていたら朝か夕方にたっぷりと水を与えましょう。「空木」は枝を伸ばす習性があるので、枝が茂る春〜夏にかけて剪定するのがおすすめです。
最後に
初夏になると、白やピンク色の花を咲かせる「空木」。名前は聞いたことがあっても、どんな花か初めて知った方も多いのではないでしょうか。その儚げな名前とは裏腹に、寒さや暑さに強く場所も特に選ばないため、初心者にも育てやすいのが魅力です。庭に植えて、古くから親しまれてきた「空木」の花を、身近に感じてみてはいかがでしょうか。
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