「無用の用」の意味や読み方とは?
初めて「無用の用」という表現を目にした時「結局、用なの? 無用なの?」と混乱しませんでしたか? 相反する言葉が連なっているため、とっさに正確な意味を推測するのは難しいかもしれません。記事や辞書を読んでもすぐに忘れてしまうとお悩みの方は、言葉の意味だけでなく由来まで知ることで、慣れない言葉も印象付けて覚えることができます。
読み方と意味
「無用の用(むようのよう)」とは、一見意味がないように感じるものが、実は重要な役割を担っているという意味を持つ言葉です。
むよう‐の‐よう【無用の用】
《「荘子」人間世から》一見無用とされているものが、実は大切な役割を果たしていること。不用の用。「—をなす」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「用」という漢字単体には、「役に立つ」「必要に応える働きをする」という意味があります。一方「無用」は「役に立たない」「使い道がない」「無益」という意味になります。
由来
「無用の用」の言葉の由来は、遡ること紀元前300年頃。中国の思想家「荘子」が書いた書物『荘子 人間世』の中にある「人皆知有用之用、而莫知無用之用也」という言葉です。
これは「人は皆、有用の用を知れども、無用の用を知るなし(無用の用を知るなきなり)」と読み、現代語訳すると「人は皆、役に立つものが役立つことは知っているが、役に立たないものが役立つことを知らない」となります。まさに「無用の用」の意味をそのまま表している文章ですね。
また、荘子からさらに遡ること約300年。「老子」という思想家も「無用の用」の思想を説いていました。老子が書いた書物『老子(老子道徳経)』では、車輪、器、家の中にある、一見何もないように見える空間に着目した上で、その存在の重要性を説き「形あるものが役に立つのは、形のないものがあるがゆえだ」としました。
ビジネス等で使う場合の注意点
「無用の用」とは、あくまで「一見役に立たないもの」を前提とした言葉であるため、人や物を純粋に褒めたい時に使うのは避けましょう。例えば、同僚が仕事で成功したことをたたえたい時などに「彼は無用の用だね」と表現するのはふさわしくありません。「彼は一見役に立たないように思えたけど、役に立ったね」というニュアンスになってしまいます。
他にも、上司が愛用している何気ない小物を褒めたい時に、うっかり「これは無用の用ですね」と言ってしまったら「これが何の役に立つのかなと思っていたけれど、案外役に立つのですね」と馬鹿にしているように聞こえることもあるため、注意して使いましょう。
使い方を例文でチェック
使い方に少々注意が必要な「無用の用」。複数の例文で自然な使い方を確認して、自分にも相手にも気持ちのよい言葉として使えるようにしましょう。例文から具体的な状況をイメージすることで、より言葉に対する理解が深まります。
『捨てずに保管してあったファイルは無用の用だった』
職場にいつまでも保管されていた何十年も前のデータファイル。もう必要ないだろうと処分しようとしたものの、万が一のことを考えて、保管し続けることにしたとします。場所ばかりとって役に立たないと思われていましたが、ある日突然調査が入り、何十年も前のデータが必要になった! しかも、電子データで保管していなかったため、そのファイルだけが唯一参考にできるデータだった、なんてことも。
『無用の用ということもあるから、傘を持って行こう』
便利だけれど、若干でも荷物が重くなるのが気になる折り畳み傘。常にカバンに入れている人も多いのではないでしょうか。天気予報で晴れと言われると「さすがに今日はいらないのではないか」と思うときもありますが、そんな日に限って予想外の雨が降って大助かり…なんて事があるんですよね。
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類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「無用の用」は、字面だけでは意味が推測しづらい言葉ということもあり、相手にうまく伝わらなかったり、誤解を生んでしまう可能性もあります。使い方に注意が必要である点からも、類義語や言い換え表現を確認して、安心して使えるようにしておきましょう。