「蝦蛄」はどんな生き物?
「蝦蛄」は「シャコ」と読みます。 エビと同じ甲殻類の生き物ですが、生物学上の「目」という単位で異なります。「蝦蛄」は「口脚 (こうきゃく) 目」に属し、エビは「十脚(じっきゃく)目」に属します。
われわれ人間に例えると、人間と猫のような違いになります。人間は哺乳類の中の「霊長目」に属します。同じ哺乳類でも猫は「ネコ目」に属します。あくまで生物学上での違いですが、随分違いますね! それでは「蝦蛄」の生態や特徴を見ていきましょう。
「蝦蛄」の生態
蝦蛄は、北海道より南に生息し、水深10~30メートルの砂泥地にU字型の穴を掘って住んでいます。体長はメスが生後1年で6~7センチ、その後14~15センチくらいまで成長します。寿命は3年5~9ヵ月くらいとされています。
「蝦蛄」の体の特徴
「蝦蛄」の体を裏返してみるとわかるのですが、小さな脚がたくさんついています。後ろの方の脚は「遊泳脚」といってエビにもある泳ぐための小さな脚です。「蝦蛄」の場合、たくさんある脚の中で頭部近くにある第二脚が特徴的。
普段は折りたたまれて見えないようになっていますが、引っ張り出すとまるでカマキリのような「捕脚」が出てきます。これは「蝦蛄」の英名であるMantis shrimp(日本語訳でカマキリエビ)の由来となっています。
「捕脚」とは獲物を捕らえるための脚のこと。これはエビにはない機能です。エビの中でもロブスターなどは大きな鋏を持っており、捕食するものも一部存在しています。また「蝦蛄」の体の後ろの「尾節」にある「尾扇」は平べったい形状になっていて穴を掘るのに適しています。
また頭部から出ている「触覚」にも特徴があり、左右対称に2本ずつ、長いのと短いのがあります。この「触覚」はエビと比べるとかなり太くなっています。「捕脚」といい、「触角」といい、「蝦蛄」はよく見るとまるで昆虫のような出で立ちです。
「蝦蛄」は甲殻類最強の生き物
「蝦蛄」は肉食で虫や魚、貝や甲殻類の仲間であるカニをも捕食します。「蝦蛄」はどのように貝類や甲殻類を捕食するのでしょうか? それは背甲の裏にある捕脚に秘密があります。
実はこの捕脚からものすごいパンチを繰り出して、貝やカニの硬い甲羅を一撃で割って身を引っ張り出して捕食するのです。その破壊力たるや水中であっても人の手などにヒットすると、打撲や内出血は当たり前、骨が折れた例も。もし「蝦蛄」を飼育するのであれば、ある程度の厚みのある水槽でないと破壊される恐れがあります。そのパンチのスピードは時速80キロメートル、これが甲殻類最強といわれる所以です。
では、そんな強靭なパンチを繰り出しても壊れない捕脚の構造はどうなっているのでしょうか? 不思議ですよね。実はたんぱく質や多糖類からなる柔らかい部分と、リン酸カルシウムからなる硬い部分が結合したナノ粒子で出来ており、まさにボクサーミットのようになっているのです。
ところが、その威力が発揮されるのは水中だけで、陸に出ると空中では威力が抑えられます。それは、自分自身の体を傷つけないためといわれています。
「蝦蛄」の食べ方
見た目や色合いは決して良くはないのですが、身はふんわりと柔らかく、あっさりとした味わい。メスの「蝦蛄」は卵を持っていて、こりこりとした食感とコクがあります。
「蝦蛄」の美味しい時期
「蝦蛄」は年間を通して水揚げされていますが、特に美味しい旬の時期は3~5月の春から初夏だといわれています。この時期は産卵期を控えて「蝦蛄」の卵巣が発達するのでメスの身が特別美味しくなります。また、9~12月にかけても「蝦蛄」の身が大きく成長するので、オスメスともに美味しい時期です。
「蝦蛄」の料理方法
「蝦蛄」は直前まで生きた状態にしておき「活け」の状態で食するのが一番。というのは、「蝦蛄」はエビやカニと同様に、死んだら自分の身体を溶かす酵素を出してしまうのですぐに腐敗が始まります。
また生のままだと寄生虫を持っている可能性が高いので、より新鮮なものを選ばなくてはなりません。一般に流通しているものは、水揚げした漁港で茹でられて処理されたもの。料理の種類としては、お寿司、酢の物、てんぷら、卵とじなどが代表的なものです。