「自負」とは?基礎知識を解説
「自負」は、どちらの漢字も音読みして「じふ」と読みます。就職活動や転職活動などで、希望する会社の担当者に自己PRする場面で、「自負しております」などとしばしば使われています。ただし、自負という表現を使いすぎると、自慢っぽく聞こえてしまいかねないため注意が必要です。
はじめに、自負とはどのような言葉か、基礎知識を確認していきましょう。まずは、言葉の意味や使い方・例文、会社の面接などで有効なフレーズであること、表現の注意点などを解説します。
■意味は自分の才能などに自信と誇りを持つこと
【じ‐ふ自負】
(名)スル
自分の才能・知識・業績などに自信と誇りを持つこと。「プロであると―している」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
自負の意味は、自分の才能などに自信と誇りを持つことです。自分には才能や知識、能力、功績などに優れた部分があると感じて、自分からそう話してしまえるときに使います。
つまり、それほどの自信を持っていることを伝える言葉です。「誰にも負けないと自負しております」などと伝えると、堂々とした印象を与えます。
使う際は、「自負する」「自負心」などの表現があります。一般的には、相手に対して「自負しております」と伝えることが多いです。
■自負の語源・由来
自負は、漢字自体の意味が由来となってできた言葉です。
「負」という漢字は、「負ける」「負債」「負担」などのネガティブな意味の言葉として使うことがよくあります。しかし、自負の「負」に込められた意味は、これらのようなネガティブな意味ではありません。
「負」の字には、「背負う」「あてにする」「頼りにする」「恃む(たのむ)」「頼む」などの字義があります。自負の「負」には「頼りにする」などのポジティブな意味が込められています。つまり、「自」とあわせることで、「自らを頼みとする」という頼もしい意味を持つ表現です。
また、「抱負」の「負」という字も、同様に「頼りにする」などの意味が込められています。
■自負の使い方・例文
それでは、実際に自負の使い方を例文で確認しましょう。
・この病気に関しては30年以上研究し続けてきたため、誰よりも詳しいと自負しています。
・当社は省エネの技術をいち早く世に出すなど、社会に貢献し続けてきたと自負しております。
・前職で身に付けたスキルを使い、御社で高成績をお見せできると自負しております。
・水道のプロとしての自負を持って、業務にあたらせていただきます。
自負という表現は、外部に対して自分の有用性をアピールする際に使うと効果的です。また、プロとしての自覚を伝えるシーンでも使います。
■自負は会社の面接などでも有効な言葉
自負は、会社の面接を受けるシーンなどでも有効な表現です。「自負しております」と伝えると、ただ自信があることを伝えるだけではなく、やわらかくて謙虚な印象をアピールできます。
面接で自己PRするときは、自信があることを伝えるだけではなく、応募した会社の求める人物像を把握したうえでアピールするポイントを考えましょう。自己PRを作成する際は、まずは結論を述べることや過程を入れたエピソードを伝えること、具体的な根拠を伝えることなどがポイントです。
■自負していると表現する際の注意点
自負していると表現する際は、注意すべき点もあります。
自負という表現は、基本的にネガティブなことには使いません。「負」というネガティブなイメージのある字が使われているためか、マイナスの面を自認しているといいたいときに使われる場合があるものの、これは誤用です。
自分のマイナスの面に関して伝える場合には、「自認」もしくは「自覚」と表現しましょう。
「責任を負う」という意味で用いられている場合があるものの、これも誤用です。
また、使いすぎると傲慢に見えてしまう恐れがあります。何度も使いすぎないこと、またあわせて「自分でいうのも恐縮ですが」などと伝えることなどで、謙虚な印象にできるでしょう。
自負の類義語・言い換えや対義語表現などの関連語
さらに、自負の関連語も確認しておきましょう。
自負の類義語・言い換えや対義語表現は、以下のとおりです。
〈類義語・言い換え表現〉
・誇り
・自信
・矜恃(きょうじ)
・プライド
・自任(じにん)
〈対義語表現〉
・卑下(ひげ)
・自虐
・劣等感
・卑屈
それでは、これらの関連語の意味などを解説します。あわせて、似た意味を持つ言葉と自負との違いもご紹介します。
■自負の類義語・言い換え表現
自負と似た意味を持つ類義語・言い換え表現やその意味は、以下のとおりです。
・誇り
……名誉に感じること。
・自信
……自分の能力や価値を確信すること。
・矜恃(きょうじ)
……自分の能力を信じて抱く、誇りやプライド。
・プライド
……誇り。自尊心。自負心。
・自任(じにん)
……自分の能力などが優秀で、適任者であると思うこと。
・自慢
……自分に関係の深い物事を自分で褒めて、他人に誇ること。
■自負の対義語表現
一方、自負の対義語表現は以下のとおりです。
・卑下(ひげ)
……自分を劣ったものとしていやしめること。
・自虐
……自分で自分をいじめること。
・劣等感
……自分が他人より劣っていると感じる思い。
・卑屈
……いじけて必要以上に自分をいやしめること。
・へりくだる
……相手を敬って自分を控えめにすること。
このほか、「謙遜」「引け目」「謙虚」なども、自負の対義語表現だといわれます。
■誇りと自負との違い
誇りと自負とは、非常に似た意味を持つ言葉であるものの、異なる面もあります。誇りとは「名誉に感じること」で、自負とは「自分の才能などを信じて誇りを持つこと」です。ニュアンスが少々異なることに注意しましょう。
また、「自信」とも違いがあります。自信は「自分の能力や価値などを信じること」で、自負は「自信を持ったうえで誇りに思うこと」を意味します。
自負という言葉を理解しよう
自負の意味は、自分の才能などに自信と誇りを持つことです。「負」という漢字は、「負ける」などのネガティブなイメージがあります。しかし、自負の「負」に込められた意味は、ネガティブなものではありません。
自負という表現を使う際は、ネガティブな内容には使わないことなどに注意しましょう。
似た意味を持つ類義語・言い換え表現には、「誇り」「自信」「矜恃(きょうじ)」などがあります。また、これらの似た表現であっても、意味が異なる部分もあるため注意が必要です。
言葉自体の意味や使い方・例文、関連語などを確認し、理解を深めましょう。
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