書き入れ時とは?
書き入れ時とは、もともとは商売で売れ行きのよい時期という意味を表す言葉です。しかし、現在では商売に限らず、さまざまな分野において、忙しい時や仕事が集中する時期などの意味でも使われています。
つまり必ずしも、利益が出る時期だけに使われる言葉ではなくなってきました。
かきいれ‐どき【書(き)入れ時】
《帳簿の書き入れに忙しい時の意から》商店などで売れ行きがよく、最も利益の上がる時。利益の多い時。「年末の―」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
書き入れ時は日常会話でもよく使われる言葉です。漢字で書く場合に、「書き入れ時」もしくは「書入れ時」と表記することを覚えておくといいでしょう。
■書き入れ時の語源
書き入れ時の語源は、“帳簿の書き入れ”です。しかし、厳密にはこの帳簿の書き入れにも2つの説があります。1つ目は、売れ行きがあまりにも良すぎて、帳簿に書き入れるのが忙しいことから、書き入れ時という言葉ができたという説です。この説が一般的といえるでしょう。
2つ目はあらかじめ売れ行きのいい時期を予測し、自然に帳簿に書き入れておいたことから、書き入れ時という言葉が生まれた説です。この語源から転じて、「楽しみにする」や「当てにする」という意味での使い方が生まれたとされています。
現在では、この使い方はほとんどされていません。しかし、古い文献では、「楽しみにする」や「当てにする」という使い方もされています。
古語と現代語を網羅している『日本国語大辞典』にも、『雑俳・柳多留拾遺巻七』の一節、「旅迎へこれ書入れの一つなり」が掲載されています。ここでの「書入れ」には「期待」という意味があるとのことです。
■「搔き入れ時」は間違い
書き入れ時という言葉を文章で使う場合に、注意しなければならないのは、「掻き入れ時」ではないことです。熊手のようなものでお金を掻き集めることをイメージして、「掻き入れ時」という誤用をしてしまったというケースが少なくありません。
間違いが多いことから、「掻き入れ時」と書くのは誤りと明記されている辞書もあります。「掻き入れ時」は間違いなので、はっきり覚えておくといいでしょう。
書き入れ時の使い方・例文
書き入れ時の使い方・例文を紹介します。この言葉は日常会話でも登場しますが、もともとの語源からもわかるように、ビジネスで使われるケースが多い言葉といえるでしょう。
現在、「書き入れ時」という言葉を使うタイミングは、もっとも利益のでる時期、もっとも利益がでると期待されている時期、通常よりもとても忙しい時期などです。つまりビジネスで使う場合には、該当する時期を知っておく必要があります。
■書き入れ時は業種で異なる
書き入れ時という言葉を使う際に注意しなければならないのは、利益の出る時期や忙しい時期は、業種によって異なることです。一般的な商店は、ボーナスが出たあとの年末が書き入れ時となるケースが多いといえるでしょう。
ホテルや旅館の書き入れ時は、ゴールデンウィーク、夏休み、秋の行楽シーズン、年末年始などです。スキー場ならば冬、プールならば夏、ドラッグストアならば、花粉症が多くなる春など、季節に左右される業種においてよく使われる傾向があります。
■書き入れ時の例文
書き入れ時の例文をいくつかご紹介します。
【例文】
・駅前にある蕎麦屋は、年に1度の書き入れ時である大晦日に、臨時で配達のアルバイトを雇って対応しているようです。
・毎年、近所の商店街では、クリスマス商戦を展開するタイミングが早くなっているので、11月下旬に書き入れ時を迎えました。
・新入社員の研修用ソフトを開発したIT企業の書き入れ時は、新入社員が入社する春です。
書き入れ時の類語と反対語
書き入れ時にはいくつかの類語と反対語があります。書き入れ時の類語は「繁忙期」「繁盛期」「忙しい時期」「儲け時」「稼ぎ時」「全盛期」「最盛期」「旬」など、反対語は「閑散期」「オフシーズン」「シーズンオフ」などです。
ここではビジネスシーンや経済用語として使われる頻度の高い、類語の「繁忙期」と反対語の「閑散期」について解説します。
【類語】繁忙期
繁忙期とは、仕事が多くて忙しい時期、注文の多い時期という意味の言葉で、読み方は「はんぼうき」です。1年のサイクルの中でもとくに忙しい時期を指します。一日単位の短期間ではなく、数週間から数か月単位の中長期に使うのが一般的です。
【例文】
・我が社の繁忙期は、9月上旬から9月下旬までなので、しっかり夏休みを取って、英気を養っておいてください。
・旅行費用を抑えるためには、ホテルや旅館の繁忙期を避けてプランを立てることをおすすめします。
・りんご農家をやっている親戚の繁忙期は秋ですが、さまざまな品種のりんごを育てることで、収穫時期の分散の工夫をしています。
【反対語】閑散期
閑散期とは、仕事がなくてひまな時期のことです。人のまばらな状態が続いている時期、人がほとんどいなくて、ひっそりとしている時期に使う言葉といえるでしょう。
【例文】
・閑散期こそが、新しいビジネスを開拓するビジネスチャンスであると考えているため、ひまな時間を有効に活用してください。
・10年ほど前に鳴り物入りで開業した複合娯楽施設は、1年目以外はずっと閑散期が続いています。
・繁忙期と閑散期がはっきり分かれる業種においては、人手をいかに確保するか、いかに余らせないかが重要な課題です。
書き入れ時の意味を知って正しく使おう
書き入れ時とは、利益がたくさん出る時期、利益が期待できる時期、忙しい時などを指す言葉です。日常会話でも使われますが、ビジネスシーンでもよく登場する言葉といえるでしょう。
業種によって書き入れ時は異なるため、この言葉を使う場合には、それぞれの業種や会社の忙しい時期を正しく把握しておく必要があります。
「掻き入れ時」という表記は誤りです。しかし、この使い方をするケースは少なくありません。「掻き入れ時」と書かないように、注意しましょう。書き入れ時の意味と使うタイミングを知って、正しい使い方をしてください。
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