「八百万」の意味と正しい読み方
八百万とは、“限りないほどの数があること”を意味する言葉です。表記を見た限りでは、漢数字が並んでいるという印象しか受けないかもしれません。
しかし実際には、八百万には特別な読み方と言葉に込められた意味があります。八百万を誤って「はっぴゃくまん」と読んでしまわないために、正しい知識をマスターしておきましょう。
■正しい読み方
八百万の正しい読み方は……「やおよろず」です!漢字からは連想できなかったけれど、なんとなく耳にしたことがあると感じた方も多いでしょう。
八百万は、古くから伝わる日本固有の考え方と深い関係がある言葉でもあります。間違っても「はっぴゃくまん」と読むことがないように、この機会に正しい読み方を定着させておいてください。
■意味は数が限りなく多いこと
八百万はその表記を見てもわかるとおり、大きな数を意味しています。限りないほどの数があるものを指して、八百万という言葉が使われます。
デジタル大辞泉での解説も確認しておきましょう。
【八百万】やおよろず/やほよろづ
数の限りなく多いこと。多数。無数。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
普段の生活ではあまり積極的に利用する表現ではありませんが、知っておくことで日本ならではの歴史や文化が感じられるでしょう。
「八百万」の言葉の成り立ち
八百万という表現をより詳しく理解するためには、言葉の成り立ちに注目することが大切です。八百万とは、ただ単に数字を表しているのではありません。
「八百」と「万」の2つの部分に分けて意味を確認しておくと、八百万に対する知識が深まるでしょう。ここからは、八百万を構成している2つの言葉の意味をわかりやすく解説します。
■“八百”の意味
八百の読み方は「やお」で、この1語で実は「数多くの」という意味をもっています。「八」という数字が選ばれたのには、日本では昔から八が吉兆の数字として扱われていたことが関係しているという説があります。
八百という言葉が私たちの生活の身近なところで利用されている代表例は、八百屋さんです。新鮮で種類がさまざまな野菜や果物が並んでいるところから、八百屋という表現が用いられるようになりました。
八百は、常用漢字表の付表に当て字として掲載されている言葉でもあります。
■“万”の意味
「万」は数としての万を指して使われるほかにも、数が多いことを意味する言葉です。万の一般的な読み方は「まん」ですが、常用漢字表にない表外訓として「よろず」と読まれるケースがあります。
万を旧字の「萬」で表記するのは有名で、ドラマや映画など時代劇のシーンで目にした方も多いでしょう。地方によっても、万を表外訓で読む風習が残っている所があるようです。
何か1つに特化しているのではなく、多くの品物を取り扱う何でも屋のことを万屋(萬屋)と呼びます。
八百万の神とは
八百万と聞いて多くの方が連想するのが「神」というキーワードでしょう。“八百万の神”とは、日本で古くから親しまれてきた信仰に関係がある言葉です。
神に対する考え方は、宗教や宗派、国によっても大きく異なります。日本では、自然界のすべてのものに神が宿っているとされてきました。
八百万の神という言葉の由来と、神道との関係性をご紹介します。
■八百万の神の由来
八百万という表現が数え切れないほど多いことを意味するため、八百万の神とは数多くの神様を指した言葉です。自然界に存在するすべてのものに神が宿っていると考えられてきた日本では、木や空、河などさまざまな所にそれぞれ神様が居ることになります。
自然界のあらゆるものに感謝をする気持ちが、この考え方の根底となっています。神々の見た目や存在の仕方もさまざまで、これといった決められた形があるものではありません。
日本には多くの信仰や宗派が取り入れられてきた背景があり、多くの違いがある神々を受け入れ、八百万の神として日々を生きる力の拠り所としてきました。
■神道と八百万の神の関り
八百万の神を知るうえで忘れてはいけないのが、神道です。神道とは、具体的な教本や教えがないにも関わらず、今もなお信仰されている日本生まれの宗教の1つです。
人々の共同体を救うために信仰されてきた神道では、さまざまな宗教の考え方が取り入れられています。多くの考え方を尊重するという神道の姿勢と、さまざまな神を敬う八百万の神の概念には共通点がみられます。
八百万の神々が集合する“神無月”
神無月と呼ばれる旧暦の10月は、日本にとって少々特別な時期とされています。この神無月の由来に関係しているのが、八百万の神々です。
知っておくといざという時に活かせるかもしれない、神無月に関する知識をご紹介します。
■神無月の由来
神無月は、読んで字のごとく神が居ない月という意味です。同時期には八百万の神々が一斉に出かけてしまうため、神が不在となってしまう状態を表しています。
ただし、日本で唯一出雲地方では、旧暦の10月が神の集まる「神在(かみあり)月」と呼ばれています。日本全国に点在している八百万の神々が、年に1度だけ出雲の地で集合することが由来です。
■出雲大社でおこなわれること
神無月・神在月には、八百万の神が出雲大社に集まります。全国から集まった八百万の神は、主に人々同士の縁や運命に関しての話し合いをしているとされます。
出雲大社が縁結びの総本社と呼ばれるのには、この神々の集会が関係しているかもしれません。議題はほかにも、来年の天候や農作物や酒の出来具合などに及びます。
「八百万」を正しく理解し、日本の文化を感じよう!
八百万は、数え切れない大きな数を表す言葉です。「やおよろず」という読み方が特殊であるため、誤用をしないように注意しましょう。
八百万の成り立ちや由来、使われ方を知ることで、日本で古くから伝えられてきた考え方や風習を知るきっかけとなります。この機会に細かい表現に注目して、言葉の背景を調べてみるのもおすすめです。
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