モラハラ(モラルハラスメント)の意味
モラハラは、フランスの精神科医であるマリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱し知られるようになった言葉で、「モラルハラスメント」の略語です。
「モラル」は倫理観や道徳意識のことを意味し、「ハラスメント」は、広い範囲の「嫌がらせ」を意味する言葉。つまり、モラハラは「社会における善悪や倫理観、道徳に反した嫌がらせ」のことです。
モラハラはどこで起こる?
モラハラは、職場はもちろん家庭内でも発生し得るもの。モラハラをはじめとするハラスメント行為は、ハラスメントを受けた人が不快に感じ「これはハラスメント行為」と思えば、ハラスメント行為をした人に悪気がなかったとしても、「ハラスメント」として成立します。
パワハラとの違い
厚生労働省によるパワハラの定義は次の通りです。
〈パワーハラスメント(パワハラ)〉
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為
「精神的苦痛を与えられる」という点など、モラハラと共通することもありますが、モラハラの場合は職場内での立場が同等もしくは下位の者からされるケースもあり、その点が大きく異なります。
また、パワハラには身体的な苦痛を与えられることも含まれますが、モラハラにそれは含まれず、精神的な暴力や苦痛で相手を追い詰めることを指します。しかし見えない暴力であるがゆえに周囲は気づきにくいというリスクがあり、モラハラに悩む人は後を絶ちません。
セクハラとの違いは
厚生労働省によるセクハラの定義は次の通りです。
〈セクシュアルハラスメント(セクハラ)〉
職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなること
セクハラは「性的な嫌がらせ」のことを指しますが、モラハラは「人格を否定する嫌がらせ」を指しますので、その点が異なります。
出典:厚生労働省 都道府県労働局「職場でつらい思いしていませんか?」
モラハラに該当する行為とは
モラハラに該当する行為とはどのようなものを指すのでしょうか。
家庭内モラハラについて
2019年に養命酒製造株式会社が行った【ママの「ストレス」と「胃腸不調」に関する調査2019】によると、夫からモラハラを受けたことがあると答えた女性は全体の85.0%に及びました。
調査において挙げられた夫によるモラハラの例は次の通りです。
・すぐにイライラする(57.6%)
・絶対に謝らない(55.3%)
・子育てを押し付ける(44.4%)
・何を言っても反対する(43.8%)
・嘘をつく(43.0%)
・ミスを責め立てる(42.7%)
・無視をする(30.8%)
・容姿をけなす(25.6%)
・嫌なことを強制する(20.8%)
・激しく束縛する(14.3%)
夫婦のパワーバランスが大きく影響する家庭内のモラハラは、陰湿な嫌がらせが延々と続く可能性がありますが、周囲からは見えにくく、介入もしにくい傾向にあります。
上記アンケートは「夫から妻へのモラハラ」という内容ですが、妻にモラハラを受け悩む夫も多く、深刻な問題になっています。
職場内モラハラについて
職場におけるモラハラは、ほかの従業員がいる状況で行われるケースが多いので、家庭に比べれば周囲に気づいてもらいやすく、第三者の介入もしやすい傾向にあります。
・無視や人格否定をされる
・周囲から孤立するよう仕向けられる
・仲間外れ
・失敗などをしたら執拗に怒鳴られたり、責められたりする
・正当な理由がない異動や降格、リストラなどをちらつかせて脅される
・仕事の割り振りが少ない、もしくは、極端に多い
上記のようなことがあれば、それはモラハラに該当する可能性が高いと考えられます。
モラハラが起きたときの対策は
モラハラが起きてしまったとき、どのような対策法があるのでしょうか。
モラハラかもと思ったら記録をする
モラハラが起きてしまったとき、重要になるのが「証言」もしくは「証拠」です。モラハラがあったと判断するには、客観的な証言や証拠が必要になりますので、証拠として残すことも考え、モラハラだと思われる行為を記録するようにしましょう。
モラハラと感じる言動の録画や録音はもちろん、メールやLINE、チャットの履歴も必ず保存します。また、モラハラを受けた日や時間、内容を明確に記録しておくと、証拠として扱われる可能性が高くなるかもしれません。
モラハラ被害に遭った場面に居合わせたり、内容を聞いていた同僚や友人、知人がいれば、証言をとっておきましょう。
もしモラハラに悩み、心身を病んでしまって受診した場合は、医師の診断書をとっておくのもひとつです。
モラハラかもと思ったら、すぐに相談を
モラハラかもと思ったら、迷わず第三者に相談しましょう。職場内のモラハラについては、全国の労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」に相談するとよいでしょう。職場トラブルを解決するためのサポートが受けられる可能性があります。また、社内に相談窓口があれば、そこを利用してみるという方法もあります。
家庭内モラハラの場合は、内閣府が実施している「DV相談ナビ」や、モラハラ問題を扱っている弁護士に相談するのがよいでしょう。
モラハラかもと思ったときに避けたい行動とは
モラハラかもしれないと思ったとき、ひとりで解決しようと考えるのは避けましょう。モラハラは精神的な攻撃を受けている状態です。ひとりで解決するのは難しいことが多いので、必ず第三者に相談をし、早めに対策をとるようにしましょう。また「自分さえ我慢すればいい」と考えるのも避けて。我慢していても、モラハラはなくならないことがほとんどです。
誰かに相談をする場合は、相談する相手をしっかりと見極めることが大切です。相談をする相手をまちがえると、かえって自分が傷ついてしまうこともあるからです。相談をする場合は、前述した機関を選ぶのが適切でしょう。
最後に
モラハラは、人格や人権、尊厳を傷つけるなどの嫌がらせをして、相手を精神的に追い詰める卑劣な行為です。モラハラだと感じたら、必ず第三者に相談を。モラハラについて正しく理解し、早めに対策できるようにしましょう。
監修
益田瑛己子
ライター・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー。金融機関の営業職として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)と就職支援をメインに活動中。3人の子供が自立し、仕事と趣味を謳歌している。
ライター所属:京都メディアライン