スメハラとは
ハラスメント(harassment)とは、相手を不快にさせるような、いじめや嫌がらせにあたる行動を指す言葉です。
職場でも問題になり得るハラスメントとして、「スメハラ」が挙げられます。まずはスメハラが何なのか、基本を確認しておきましょう。
臭いによるハラスメントを指す
スメハラは「スメルハラスメント(smell harassment)」を省略した言葉で、不快に感じる臭いによるハラスメントのことを指します。
体臭や口臭だけでなく、香水のつけすぎや過度な柔軟剤の香りなど、香りをまとっている本人がよいと思っていても、周りが不快に感じればスメハラに。
単体の臭いだけでなく、それぞれの臭い・香りが混ざってしまうことで、周囲が不快に感じるケースもあります。
スメハラに該当する臭いの種類
スメハラとみなされ得る臭いには、さまざまな種類があります。ネットリサーチ「DIMSDRIVE」がモニター3,644人に対して行った、スメハラに対する意識調査をもとに解説します。
口臭や汗の臭い
「スメハラに関する意識調査」で調査対象が気になったり不快になったりする臭いとして、1位になったのは口臭でした。
多くの人が不快な臭いとして挙げる口臭には、さまざまな原因があります。まずは虫歯や歯周病、歯垢がたまっているなど、口腔内のトラブルです。ほかにも、強い臭いの食べ物を食べた・緊張している・空腹などの状態が、口臭につながります。
3位は口臭と同じく人体そのものが発する「汗」「あぶら汗」でした。スメハラになり得る体臭は、汗の臭い・ワキガなど、強い臭いが代表的です。靴を脱いだときの足の臭いや、年齢を重ねることで発生する加齢臭、生活リズムの乱れからくる疲労臭もスメハラになり得ます。
体調や季節によって、ある程度の口臭や体臭が発生するのは仕方がないことです。しかし、周りが不快に感じるほどひどい場合は、スメハラになりかねません。
タバコの臭い
最近では喫煙箇所が限られるようになってきたものの、非喫煙者は喫煙者の臭いが気になってしまうもの。「スメハラに関する意識調査」でも、不快・気になる臭いの2位がタバコ臭で、不快に感じる人が多いことを表しています。
タバコを吸った後は口臭がするだけでなく、髪・衣服・肌など全身にタバコの臭いが付着します。喫煙所でタバコを吸ってオフィスに戻ってきた喫煙者は、自分で思うよりも臭いが強いものです。
分煙・禁煙が進んでいる現代では、非喫煙者が目の前で喫煙される機会はほとんどないといえます。非喫煙者は以前よりも、タバコの臭いに敏感になっているのかもしれません。非喫煙者の多くがタバコ臭に嫌悪感を抱き、ハラスメントだと感じやすい可能性があります。
香水や柔軟剤の臭い
よい香りをまとっているはずの香水や柔軟剤も、つけすぎてしまうとスメハラになり得ます。「スメハラに関する意識調査」では、気になる・不快な臭いの第4位に香水・コロンが、第10位に仕上げ剤・芳香剤の臭いがきつい衣類がランクインしました。
基本的に香水や柔軟剤は、ほのかに香らせて楽しむものです。しかし、香らせている本人が慣れてしまうと、徐々に臭いが強くなってしまいます。どんな香りをよい香りと感じるかは人それぞれ。ある人にとっては好みでも、別の人にとっては嫌な臭いになる可能性があります。
電車やエレベーター・狭いオフィスなど換気が不十分な空間では、過度な香水・柔軟剤の香りが体調不良につながるケースも少なくありません。
ニオイ問題にケア・予防法はある?
自分の臭いは注意しているつもりでも、なかなかわからないもの。あらかじめ「ニオイケア」をして、予防する方法を解説します。日頃から注意し、周囲に不快感を与えないよう気をつけましょう。
体臭を抑える方法
暑い季節だけでなく、暖房や緊張などによって、年中汗の臭いは気になるものです。汗をかいたときはこまめに拭いたり、制汗剤を使用したりしてケアしましょう。
体の汚れも体臭の原因になるので、入浴時は洗い残しがないよう念入りに洗ったり、デオドラント効果のあるボディーソープを使用したりなどの対策をしましょう。
また、過度のアルコール摂取は、翌日に息が酒臭くなるだけでなく、体臭がきつくなる原因にもなります。アルコールが発汗を促す上に、アルコールが分解されるときに不快な臭いのもと「アセトアルデヒド」が発生するためです。飲酒は適量にとどめましょう。
喫煙者の場合もニコチンが汗腺を刺激し、ワキの臭いが強くなる傾向にあるのだそう。タバコの臭いだけでなく体臭も気になるなら、喫煙を控えるのが理想です。
口臭を抑える方法
口臭を抑えるためには、虫歯や歯周病がないことはもちろん、歯磨き・うがいなどのデンタルケアは大前提です。基本のデンタルケアしていても、舌や唾液量が原因で口臭が強くなる可能性があることも覚えておきましょう。
口臭の原因として多いのは、舌についている白い苔のような「舌苔(ぜったい)」という、舌についた細菌のかたまりです。放置しておくと口臭の原因物質が多く作られてしまうので、舌ブラシなどで1日1回の舌清掃を行いましょう。
唾液不足で唾液が減少し、口腔内が乾燥した状態も、口臭につながります。普段の食事でよく噛んだり適切な水分補給をしたりして、唾液の分泌を増やすとよいでしょう。
香水をつけるときのポイント
香水によるスメハラの予防法は、つける量と場所に注意することです。自分が香りに慣れてつける量が増えてしまうと、スメハラにつながりかねません。
適量とされるのは、パルファム・オーデパルファム・オードトワレ(スプレータイプ)で1カ所1プッシュ、オーデコロンで1か所2~3プッシュです。
耳の後ろ・手首につけると強く香りすぎる可能性が高くなります。優しく香らせたい場合は、ひざ裏・足首・お腹など頭から遠い部分につけましょう。体臭が気になるからといって、ワキ・足の裏など臭いの発生源につけるのはNG。香りと体臭が混ざり、不快な臭いになり得ます。
夏はさわやか系を選んだり、オフィスで甘すぎる香りは避けたりと、TPOに合わせて香水を選ぶことも大切です。
柔軟剤の選び方
近年では香りにこだわった柔軟剤や強く香る外国製の製品も増え、香りを楽しめるようになりました。しかし、柔軟剤の香りがあまりに強いと、周囲不快にさせてしまう場合があります。
柔軟剤で周りを不快にさせないための基本的な対策は、パッケージに書かれている目安以上に使用せず、用法と用量を守ることです。
香水を使う場合は、柔軟剤の使用を控えたり無香料・微香性のものを使ったりするのもよいでしょう。柔軟剤の香りを楽しみたいなら香水をつけないといった、香りが混ざらないような配慮が大切です。
スメハラだと感じた場合の対処法
もし自分が強いニオイを感じる側になった場合は、どう対処すればよいのでしょうか?不快な臭いを我慢し続ける必要はありませんが、ニオイ問題は相手にとってもデリケートなことなので、慎重に対応する必要があります。
まず自分で環境を整えてみる
自分でできる対処法は、オフィス内の換気です。窓がある場合はさりげなく空気を入れ替えたり、エアコンの空調の向きを変えたりと、まず自分でできる工夫をしてみましょう。卓上空気清浄機や扇風機などを使って、空気の流れを変えるのもおすすめです。
近くの席の人がニオイの強い料理を前日に食べたり、汗をかいて体臭がきつくなったりと、一時的に臭うケースも。長く続かないようなら、マスクを着用してしのぐのも一案です。
相手への伝え方を工夫する
ニオイを発している側は、自分で気づいていない場合がほとんど。特に体臭や口臭はデリケートな問題なので、慎重に伝える必要があります。不快な思いをしているからといって、感じるままきつい言い方をしないように注意しましょう。
しかし、気を使いすぎて曖昧な言い方をしては相手に伝わらない可能性も。客観的な事実として、現在周りにもたらしている影響や状況を伝えます。その後に具体的な対策方法を提示しましょう。
職場で本人に直接言いづらい・言ってよいか迷う場合は、上長や総務・人事など、管理者に相談するのも一つの方法。基本的には、スメハラをしている人と近すぎない立場の人がよいでしょう。
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