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名前に使える漢字
人名に使える漢字は常用漢字2,136文字と人名用漢字863文字の計2,999字と決まっています。したがって、これら以外の漢字は子供の命名に使うことができません。
参考:法務省
常用漢字とは
平成22年内閣告示第2号では次のように記されています。
法令,公⽤⽂書,新聞,雑誌,放送など,⼀般の社会⽣活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すもの
参考:文化庁
漢字とかなの使い分けや、ふりがなの有無など、読み手への配慮として判断基準となるのが常用漢字といえます。
人名漢字とは
戸籍の人名に用いることができるとして、常用漢字以外に定められた863の漢字のことです。当用漢字以外で使用の認められた「人名用漢字別表」(昭和26年、92字)と「人名用漢字追加表」(昭和51年、28字)をもとに、世間の要望などを採り入れて順次追加・調整されています。
現行戸籍法では「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」とあります。いくら常用漢字や人名漢字にあるといっても、あまりにも難解な文字は子どもにも負担をかけますので気をつけましょう。
漢字の持つ意味
最近は名前の「響き」から考え、それに漢字を当てはめるという方法で名づける方も多いと思いでしょう。しかし、漢字にはそれぞれ、成り立ちなど意味があります。
名前として避けたい漢字
前述した「名前に使える漢字」の中にも印象の悪い字や、名前として違和感を覚える字があるので気をつけましょう。一例を紹介します。
1:悪(あく 悪い、憎む)
2:死(し 死ぬ)
3:辛(しん つらい、からい、苦しい)
4:妬(と ねたむ、そねむ)
5:忌(き いまわしい)
これらは誰が見ても、「さすがにこれは使わないな」と思うでしょう。ではこれらはどうでしょう。
1:篤(あつし 病気が重い)
2:冥(めい あの世)
3:未(み いまだ~ない)
意外と使っている方は多いのではないでしょうか。もちろん、これが必ずしも悪いというわけではありません。日本では名づけに画数を重んじるので、苗字とのバランスを見たり、先祖代々受け継がれている名前だったりする場合もあるでしょう。しかし、あえて、マイナスイメージの字を使うことはないかもしれません。名づける際には漢字の意味もよく考え、我が子への思いや願いをこめるようにしましょう。
名前ランキングに見る漢字
毎年発表されている名前ランキングにはどのような漢字がランクインしているのか見ていきます。
男の子の名前トップ3
1位:「蒼」(あおい・そう)
「蒼」という字には「草のような青い色」「深青色」という意味があります。青く草が茂る様子を表す字です。そこからは自然の中で青々と葉が茂り、延びていくさまを連想させます。のびのびと、すくすく育ってほしいという願いが感じられます。
しかし、一方で「年老いたさま」「白髪がまじっているさま」という意味も。また、現代表記では「倉」に書き換えることもあるので、「倉卒(そうそつ)」のように、「慌ただしいさま」「慌てるさま」を表す語としても使われます。
2位:「凪」(なぎ)
「凪」という字には「なぐ」「風や波が静まること」という意味があります。激動の時代を乗り越え、凪のような穏やかな、平和な世の中を生きてほしいという願いが感じられます。一方で、字の中に「止」という字が入っているので、「動きが止まること」「成長が止まる」と連想させてしまうかもしれません。
3位:「蓮」(れん)
「蓮」という字はまさに植物の「はす」という意味です。蓮は並んで実がつくので、周りの人たちと仲良く、共存できるようにという願いがこめられます。また、泥の中で根を張り、美しい花を咲かせる蓮の花のように、強く凛とした子に育ってほしい、といった思いも表現できます。
女の子の名前トップ3
1位:「陽葵」(ひまり)
「陽葵」に使われている「葵」は「あおい」という観賞用の植物の名前です。「あおい」は太陽の方向に向かって花がまわる植物で、太陽で方位を測る器具として使われていました。太陽を連想させる「陽」と組み合わせることで、どんなときにも柔軟に、向かうべきところへ進んでいってほしいという願いがこめられますね。
2位:「凛」(りん)
「凛」という字は、「心が引き締まるさま」という意味があります。「りん」という、かわいらしい響きも人気の一つでしょう。スッと背筋を伸ばして堂々としているイメージから自立した女性として活躍してほしいという願いがこめられます。一方で、「寒さが厳しい」「激しい」という意味もあるので冷たい印象を与えてしまうことも。
3位:「詩」(うた)
「詩」という字には文学的でどこか和風のイメージがあります。詩は、もともと漢詩のことを指しますが、歌うのに適するように一定の音律に基づいて作られたものです。心穏やかに、詩を詠むような感性豊かな子に育ってほしいという願いがこめられます。
まとめ
名前に使う漢字について紹介しました。漢字はもともと中国伝来のもの。成り立ちなどからそれぞれに意味があります。名前は親から子への最初の、一生もののギフトです。長く愛せる、意味のある名前を付けてあげたいものです。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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