ブームにもなったパクチーとは
パクチーはセリの仲間で野菜やハーブとして使われる植物です。香菜、コリアンダーなどとも呼ばれます。生のままだけでなく種や乾燥させたものも流通しています。生のパクチーとはまた違った風味が楽しめる食材です。
■産地や旬、呼び名の違い
パクチーは地中海地方が原産の野菜です。日本では主に静岡や岡山で生産されます。旬は春から初夏にかけてですが、各地で時期をずらして栽培されていることから最近では通年出回るようになりました。
呼び名は主に3種あります。中国語では香菜(シャンサイまたはシャンツァイ)、英語ではコリアンダー、タイ語ではパクチーと呼ばれます。いずれも同じ植物を指していますが、日本では使われる料理によってその呼び方が変わるようです。
■種やドライも使われる
パクチーは生で食べられる以外にその種や乾燥させたものも使われます。種はコリアンダーシードと呼ばれ、スパイスとして用いられます。少し甘味のある爽やかな香りが特徴です。カレーなどの料理以外にもクッキーなどのお菓子に使われます。
ドライとして売られている葉はスパイス感覚で料理に足すと、エスニック風味が楽しめます。手軽に使いやすく日持ちもすることから、生のパクチーが余ったときに手づくりするのもおすすめです。
■含まれている栄養成分とほかの野菜との比較
パクチーと同じくハーブであるバジルとパセリ、そして同じ地中海原産で葉物の野菜であるルッコラに含まれる代表的な栄養素を比較しました。
可食部100gあたり
出典:「文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
※図表は編集部にて作成
いずれもビタミンやミネラルが豊富に含まれます。100gあたりで見るとバジルやパセリはかなり栄養素が多いように見えますが、1度に食べる量が少ないため、1食あたりに換算するとそこまで多くはありません。
一方サラダとして食べられるルッコラやパクチーは、ほかの2種よりも1食当たりに量を食べることができるため、これらの栄養素をたっぷり摂れておすすめです。
パクチーに含まれている栄養素とその効能
パクチーに含まれている代表的な栄養素はβ-カロテン、ビタミンC、食物繊維、カルシウム、鉄、香り成分です。健康を維持する効能だけでなく、美容に効果のあるものやリラックス効果のあるものもあります。ここではそれぞれの栄養素とその働きについて詳しく解説します。
■「β-カロテン」で抗酸化作用と風邪予防
β-カロテンは体内でビタミンAに変えられる栄養素です。抗酸化作用が強く、老化を防ぐ成分として注目されています。
抗酸化作用は活性酸素を取り除く働きのことです。活性酸素は呼吸をする際につくられますが、増えすぎると自分の体を攻撃します。それにより、動脈硬化やガン、肌の老化が起こるリスクが高まります。β-カロテンの摂取でこの活性酸素を減らすことができ、生活習慣病の予防や美肌に効果的です。
また、ビタミンAは目や肌、粘膜の健康を保つ働きを持ちます。粘膜が弱ると菌やウイルスが体に侵入しやすく風邪をひきやすくなります。β-カロテンを摂取することが風邪予防につながるのはこのためです。
■「ビタミンC」で美肌効果
ビタミンCも抗酸化作用を持ち、肌の老化を防ぎます。同時にコラーゲンをつくるために必要な栄養素でもあるため、肌のハリを保つのに欠かせません。また、紫外線によってシミやそばかすができるのを防ぐことも期待できます。美肌を目指す方は積極的に摂取するとよいでしょう。
喫煙や飲酒、紫外線によって活性酸素は増えやすく、ビタミンCの消費量が多くなると言われます。喫煙・飲酒習慣がある方や外に滞在する時間が長い方は、意識して多めに摂るのがおすすめです。
■「食物繊維」で腸内環境改善
食物繊維は不足しがちな栄養素と言われます。不足すると生活習慣病のリスクが高まるほか、腸内環境が悪くなり便秘になりやすいです。
腸には善玉菌と悪玉菌と日和見菌の3種の菌がいます。日和見菌は多く存在する菌の影響を受けやすいため、善玉菌が多い状態を維持することが大切です。
また、食物繊維は腸の中の有害物質を外に出し、悪玉菌を減らして腸内環境を整えるのに役立ちます。1日あたり今より3〜4gほど多く摂れるようにすることを目標にしましょう。
■「カルシウム」で健康な骨づくり
カルシウムは骨や歯の材料となります。骨は毎日生まれ変わっており、不足しないよう注意が必要です。20歳をピークにカルシウムの骨への吸着は難しくなるため、子供のうちからカルシウムを補って丈夫な骨を若いうちにつくることが大切です。
また、カルシウムは神経伝達物質としての働きも持ち、必要量が摂取できないと、足りない分は骨を溶かして補われる仕組みです。20歳以降はカルシウム不足になると骨がどんどんもろくなってしまうため、注意しましょう。
■「鉄」で貧血の予防
鉄は貧血との関わりが知られる栄養素です。パクチーのように植物性の食品に含まれている鉄は非ヘム鉄と呼ばれ、動物性の食品に含まれるヘム鉄と比べると吸収が悪い特徴があります。そのため、吸収をよくするビタミンCと一緒に食べるのがおすすめです。
また、穀類に含まれるフィチン酸、お茶に含まれるタンニンなどは鉄と結びついて吸収するのを妨げるため、食べ合わせにも注意しましょう。特に胃の働きが悪く、胃酸の分泌が少ない方はより吸収しづらくなってしまうため、注意が必要です。
■「香り成分」で鎮静作用やリラックス効果
パクチーには独特な香りがあります。この香りが原因で苦手な方も多いようです。
しかし、この香りの中にはラベンダーにも含まれている成分もあり、気持ちを落ち着けリラックス効果があるとされます。ほかにも体の中に溜まった毒素を排出する作用、消化器系に働きかける作用も持っています。消化を促し、腸内の余分なガスを出すだけでなく、食欲のないときにも効果的です。
パクチーの効果的な食べ方
生でそのまま食べる場合は下処理に気をつけて、油やビタミンCと組み合わせると効果的です。加熱して食べる場合には加熱の時間によって食感や栄養素、香りの出方が変わるため、食べる方に合わせて調整するとよいでしょう。
■“生”で食べるポイント
パクチーはそのまま切って生で食べると栄養素の損失が一番少なく済みます。切ったあとは水にさらしたりせず、そのまま使うとよいでしょう。茎と葉を一緒に使うことでシャキシャキとした食感と風味をより楽しむことができます。
含まれる栄養素のうちβ-カロテンは油と一緒に、鉄はビタミンCと一緒に食べることで吸収がよくなるため、サラダの場合は油や柑橘類の絞り汁を使ったドレッシングをかけるのもおすすめです。
■“加熱”して食べるポイント
加熱する場合はできるだけ短時間にしましょう。葉や茎の部分は食感が残るよう最後の仕上げに加えます。カリウムを効率よく摂りたい場合はスープにすると無駄がありません。汁に溶け出したものまで無駄なく摂れます。
また、パクチーは捨てるところがないと言われ、根はソースや煮込み料理に使えます。風味を楽しめる部位なので、無駄なく使ってみましょう。 逆に香りが苦手な場合は、葉や茎の部分を少し長めに加熱すると風味が薄くなるため、パクチーが苦手な方は最初は長めに加熱してみてもいいかもしれません。
パクチーをおいしく楽しむ方法
パクチーは新鮮なものを選んで上手に保存することで長くおいしく楽しめます。色鮮やかでみずみずしいものを探してみましょう。
保存する場合は根がついているかどうかで保存方法が変わります。乾燥しないように野菜室でまっすぐ立てるのがポイントです。長めに保存したい場合は冷凍や乾燥させましょう。
ここではそれぞれの具体的な方法についてご紹介します。
■新鮮なパクチーを見分ける方法
新鮮なパクチーは緑色が鮮やかで、葉が先の方までシャキッとしています。鮮度が落ちると葉先から色が変わってくるためよく見るようにしてください。
また、茎は太すぎると筋が気になり、香りも落ちるようです。太すぎず、しっかりハリのあるものを選びましょう。根がついているものの方が日持ちするため、手に入るようならそちらを選ぶのがおすすめです。
■パクチーの保存方法
丸ごと保存する場合は濡らしたキッチンペーパーで包み、袋で密閉して野菜室で保存します。可能であれば葉が上になるように立てましょう。根つきのものは水を入れたグラスに差すと室内で長持ちさせられます。
刻んで保存する場合は密閉容器に入れて冷蔵庫で保存します。長持ちさせたい場合は冷凍保存も可能です。根はラップで包み、葉や茎は刻むかそのままそれぞれ保存袋に入れて冷凍し、使うときは凍ったまま加熱しましょう。
また、葉や茎を細かくして天日干しやオーブン、レンジで乾燥させるとドライハーブのように料理のアクセントとして使えて便利です。パクチーが余ったらつくってみましょう。
パクチーをおいしく料理に取り入れて栄養補給しましょう
パクチーはハーブとして料理をおいしくするだけでなく、栄養素が豊富に含まれています。特にビタミン、ミネラル類が多いため、好きな方は生のままたっぷり食べるのがおすすめです。苦手な方も最初は加熱したものから挑戦してみると、香りに慣れて食べやすくなります。パクチーを上手に料理に取り入れて、豊富な栄養素をたっぷり摂りましょう。
監修
川島 尚子
管理栄養士兼パティシエ。料理教室運営会社で講師やメニュー開発に従事後、パティシエへ転向。現在は企業様向けのレシピ開発やコラム執筆、オンラインショップやオーダーメイド菓子の制作を行う。ヘルシーなものから子供向けまで幅広く対応。
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