こんにちは、editor_kaoです。
私、今の時代にそぐわないテレビっ子なんですけど、ずっと楽しみで、予約録画までしていたライフスタイルの番組を観るのが、最近なんだか辛くて……。いわゆる「ていねいな暮らし」をされている人のお家を拝見する内容で、インテリアや器、日々の料理、身につけているものなど、どれもが素敵。セカンドライフとして地方移住された人も多く、「年齢を重ねて見つけた、この先の人生」は、個人的にも参考にしたい内容だったのですが、とにかく最近はそれが、観ていて息苦しい……。
こだわりをもつことの、憧れと息苦しさと
理由はわかっているんです。番組に登場しているのは、もともとがセンスに溢れかえっている人ばかり。若いときに、東京のど真ん中で大活躍して、でもその生活はもう十分と、次のライフステージへ。たくさんのものを見てきた中で、必要なものと不必要なものを見極め、現在はシンプルな心地よい空間で、ゆったりと自分らしく日々を過ごしている……。それは本当に素敵なことだけど、いざ自分に置き換えてみると、そんなの絶対に無理だって!!!という気持ちに、かられてしまうんです。
偏見満載ですが、たぶんこういう人って、無農薬の野菜食べてそうで、コーヒーを豆から挽いてそうで、テレビもっていなさそうで、ミニマルなワードローブで着こなし考えてそう。そういった物事のひとつひとつにこだわりがあることに、憧れや尊敬があるのも事実ですが、実際に自分がこの環境に入ったら、息が詰まるだろうなー、と、想像するのです。たぶん、一緒には暮らせない……。
要所要所で顔をのぞかせる「つめあまちゃん」
たとえば今、この原稿を書いている自宅のダイニングテーブルから、キッチンの冷蔵庫が見えるのですが、扉には、旅先で買ったマグネットがいくつか貼ってあります。かわいくて気に入っているのですが、ここからが私のダメなところで、その横にはマンションの清掃のお知らせや、パン屋さんのポイントカードもあるわけです。あと、先日いただいたブドウの品種をメモした付箋も。美意識の高い人だったら、そういった景観を損ねるものは、しまうか、目立たないところに移動させると思うのですが、難しいことに、そうしちゃうと今度は、大事なお知らせを忘れてしまうという(何かいい方法があったら教えてください!)。冷蔵庫だけでなく、あらゆる場面で、こういった詰めの甘さが出る「つめあまちゃん」なんですよね。
美意識やこだわりに、とらわれがちな時代
やっぱり、美意識が高い人のライフスタイルを、そのまま真似するのは無理があるのだと思います。何より私が生活していて、心地よくなさそう。こだわりをもって生きることが、大事な人はそうすればいいですし、もうちょっと緩く生きていたい人は、しなければいい。ファッションエディターという職業上の環境もあるのですが、自分の詰めの甘さにコンプレックスがあるのと同時に、美意識やこだわりをもつことに対して、強迫観念にかられやすい時代だなとも感じています。もちろん仕事で「ここぞ」というときは、こだわりをもって頑張らなくてはならないけれど、あとは自分のペースが守れる「つめあまちゃん」で、開き直ろうかとも思っています。
【今日のひと手間】
とはいうものの、それなりにお気に入りの器なんかもあるわけで。最近手に入れたのは、マリメッコの変形ストライプのプレート「ウイマリ」(写真右)。優雅なスイマーのストロークから着想を得たパターンなのですが、それを夏の終わりに購入するというところに、やはり私の「つめあま」が出ています。同じような色の染付のお皿と組み合わせたら、なじみが良くなって、これからの季節も使いやすいかもしれません。
エディター
editor_kao
大人の実用ファッションを中心に、人物インタビューや日本の伝統文化など、ジャンルレスで雑誌やブランドサイト、ウエブマガジンで活動中。また、インスタグラム@editor_kaoでは、私服コーディネートを紹介するかたわら、さまざまなブランドや百貨店とのコラボレーションも手がけている。ライフスタイルWEBメディアkufura(クフラ)でも「4ケタアイテムで叶えるオシャレ」を連載中。
イラスト/柿崎こうこ
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