「この前」がはばかられるとき
少し前のことを「この前」と表現しますが、口語的な表現のため、書き言葉としてはふさわしくないと感じるかもしれません。そのようなときは、少し前を改まったニュアンスで使える「先般」を使ってみてはいかがでしょうか。
・先般のお気遣い、本当にありがとうございました。
・先般はご体調が優れないように拝見いたしましたが、お加減はいかがでしょうか。
・先般から何度かお問い合わせいただき、ありがとうございました。
先般と類似する言葉
先般と同じように現在に近い過去を示す言葉としては、次のものが挙げられます。
いずれも先般と類似した言葉ですが、使い方やニュアンスが異なることもあります。例文を通して、違いについて見ていきましょう。
以前
以前(いぜん)とは、その時点よりも前を意味する言葉です。
・10時以前に到着する予定です。
・午前8時以前には、この電話番号はつながりません。
・16日以前に大学側に到着するように、願書を送付してください。
また、特定の時点ではなく、今より前の時点や現在から見て近い過去を指すときにも使うことがあります。
・彼とは以前、会ったことがある。
・以前と比べると、大きく改善されたようだ。
・以前の情熱的な彼女とは異なり、ほとんどのことに興味を示さなくなってしまった。
ある状態に達する前の段階の意味で「以前」を用いることもあります。この場合での「以前」は、時間の概念とは無関係です。
・結婚以前、わたしは神奈川県に住んでいた。
・彼は採用されないと思う。面接をすっぽかすなんて、能力以前の問題です。
・最近は学校に行っているらしいけど、先生からの評価は上がらないと思うよ。あんなに勉強をしないのでは、それ以前の問題でしょ?
過日
過日(かじつ)とは、過ぎ去ったある日や先日、先だっての意味で使われる言葉です。先般と同じ意味で使われます。
・過日お目にかかりました折お伝えした転居の件ですが、本格的に決まりましたので、ご連絡差し上げます。
・過日のことを思い出していた。
・過日、大変お世話になりました。
先日
先日(せんじつ)とは、近い過去のある日やこの間、過日の意味で使われる言葉です。
・先日はありがとうございました。
・先日、思いがけないところでお目にかかりましたね。
・先日のお話ですが、本当のことですか?
時間の経過を的確な表現で伝えよう
時間を指す言葉を使うときは、過去・現在・未来のいつの時点の言葉か、過去であればどの程度の過去なのか、時点か期間かのすべてに注目して的確な表現を選ぶようにしましょう。
たとえば、先般や先日は遠すぎない過去の一時点を指す言葉ですが、昨今は期間、今般は現在や近い将来を指します。とりわけ先般はビジネスシーンで使われることも多いため、誤解を招かない表現を選ぶことが大切です。
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