パイロット版とは、ドラマの第0話
海外ドラマの予算は、日本の20倍とされています。制作陣が熱い思いを込め、視聴者に魅力を伝えるための第一歩が「パイロット版」です。しかし、実際に放送されるのは1/10本程度ですが、その1本が成功すれば長期的なシリーズ化や高い評価を勝ち取ることも可能です。
パイロット版は、ドラマの舞台となる世界やキャラクターを紹介し、視聴者の興味を引く重要な役割を果たします。ここでは、パイロット版に関する詳細な意味を解説します。
パイロット(pilot)
5 試験的に行うもの。先行するもの。「パイロットフィルム」「パイロット版」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
海外ドラマの予算は、日本の20倍!
日本のドラマにおける1話あたりの予算は、約3,000~5,000万円とされています。一方で、海外ドラマのパイロット版の平均予算は約10億円で、日本のドラマの約20倍にのぼります。映画並みに高額な予算をかけているため、視聴率が低い作品を制作する失敗はできません。そのためドラマヒットの指標として「パイロット版」が存在します。
ハリウッドでは日本のテレビ局とは異なり、ドラマの制作が決まったら、基本的に最後まで放送するという考え方はありません。代わりに「パイロット版」と呼ばれる仮の第1話を制作し、企画が通ったらテレビ放送します。その後、視聴者や批評家の反応を受けて、続編の制作を決定します。
実際に放送されるのは1/10本
アメリカでは主に、ABCやFOX、NBC、CBSといった4つの地上波テレビ局があります。これらの4局だけで、年間に約80~100本のパイロット版が制作されます。そのなかで、続編が実際に制作されるのはほんのわずかであり、およそ10本に満たないそうです。多くの作品が、2話を観ることなく終了してしまいます。
視聴者が「あの作品面白かった」や「続きが気になる」と望んでも、パイロット版が成功しなければ続編は見られません。
「パイロット版」と似た意味の言葉
新しいアイデアやプロジェクトを試す際、一般的に使われる「パイロット版」には、同様の意味を持つ、いくつかの単語があります。例えば、「β版」や「試運転」といった言葉です。また「アンテナショップ」も、新しい商品やサービスをテストする場として機能しています。
新しいアイデアやプロジェクトを検証し、改善するための重要な段階を示すため、本章で詳しく解説します。
β版
「ベータ版」は、ソフトウェアやサービスの開発段階の一つです。ソフトウェアの完成に向けて、最終テストをおこなう前の段階を指します。テスト運用として一般ユーザーに提供され、実際の使用状況やフィードバックを元に不具合の発見や改善をおこないます。
ベータ版は、まだ完全な製品ではありません。そのため不安定な部分やバグが残っている可能性がありますが、開発者やテスターによるフィードバックを受けて改善されます。
ベータ‐ばん【ベータ版/β版】
《beta version/β-version》発売前や正式公開前で開発途中にあるソフトウエアなどの製品のこと。関係者や希望するユーザーに配布し、試用してもらう(ベータテスト)ために作る。ベータリリース。ベータバージョン。評価版。最終評価版。→アルファ版
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
試運転
「試運転」は、製品やシステムなどの機能や性能を、実際に試してみる作業を指す言葉です。主に、車両や機械装置に関して使われます。試運転は、製品が正しく動作し、予定通りの機能を果たすかどうかを確認するためにおこなわれる作業です。
試運転によって製品の欠陥や問題点が発見され、修正や改善されます。ユーザーの使い勝手や満足度を向上させるためにも、重要なプロセスです。
し‐うんてん【試運転】
[名](スル)乗り物・機械などが完成したり修理が完了したりしたとき、試験的に運転すること。「機械を試運転する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
アンテナショップ
「アンテナショップ」とは1つの会社や団体が、新しい商品やサービスを試すために提供される店舗や施設のことです。新しい商品やサービスだけでなく、実証実験や市場調査、顧客とのコミュニケーションの場として活用されます。一般的な店舗とは異なり、直接売り上げを追求するよりも、顧客の反応や意見を集めることが目的です。
アンテナ‐ショップ(antenna shop)
1 製造・流通業者などが、新製品などを試験的に販売する店。消費者の反応を調査して商品開発に役立てる。パイロットショップ。
2 地方自治体が東京・大阪などの繁華街で地元の特産品などを販売する店。祭りなどの情報も流し、大消費地の傾向を調査するねらいがある。サテライトショップ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
映画に関連した用語5つ
映画やドラマには、パイロット版の他にもさまざまな専門用語があります。本章では、そのなかから5つの用語をピックアップして解説します。例えば、「カチンコ」「興行収入」「サイレント映画」「リメイク」「ロードムービー」です。これらの単語は、映画制作や業界における用語として知られています。それぞれの用語について、詳しく掘り下げていきましょう。
カチンコ
「カチンコ」は、映画制作時に使われる器具です。2つの棒の下に小さな黒板が取り付けられ、シーンやカットの番号が書かれています。撮影が始まる際に、これをカメラの前で鳴らすことで、後で映像と音声を編集する際のタイミングを合わせる目安となります。
「はい、カーット!」という掛け声で鳴らされるアイテムといえば、イメージしやすいでしょう。
かちん‐こ
映画で、撮影の始まりを合図するのに用いる拍子木。下につけた黒板にシーン・カット番号などを書いて撮影し、編集時の目印とする。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
興行収入
「興行収入」とは、観客が劇場に支払う入場料の合計金額のことです。興行収入から必要経費と劇場の利益を差し引いた金額が配給会社に支払われ、これを「配給収入」と呼びます。興行収入よりも制作費用が多ければ、その映画は「赤字」ということになります。
こう‐しゅう〔‐シウ〕【興収】
《「興行収入」の略》入場料に有料入場者数を掛けた金額。特に映画界で使う。ボックスオフィス。→配収はい‐しゅう〔‐シウ〕【配収】
《「配給収入」の略》興行収入のうち、映画配給会社の純粋な取り分。特に映画界で使う。→興収
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
サイレント映画
「サイレント映画」とは、音声トラックを欠いた映画のことを指します。つまり、映像だけで展開させる映画ということです。
音はないものの字幕や補足はつけられるため、活字と現代映画の間と考えると、わかりやすいでしょう。
むせい‐えいが〔‐エイグワ〕【無声映画】
音声・音響を伴わない、画像だけの映画。サイレント映画。⇔発声映画。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
リメイク
「リメイク」とは、元の作品を新たな形で再構築することを指します。通常、映画やゲーム、音楽などのメディア作品において使われる単語です。古い作品を現代の視点や技術で再解釈し改変することで、また新しい印象を与えます。リメイクさせる作品には、高評価な海外作品を日本版にする、監督など制作スタッフの強い思い入れによって復活するなどのケースがあります。
リメーク(remake)
[名](スル)《「リメイク」とも》
1 つくりなおすこと。もう一度つくること。「リメーク商品」
2 再び映画化すること。また、その作品。「往年の名作を現代版にリメークする」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ロードムービー
「ロードムービー」は、主人公たちが旅をしながら、成長する姿を表現した映画です。友情や冒険、自己探求がテーマとなり、道中での出会いや経験が彼らの人生や価値観に影響を与えます。典型的なロードムービーは、旅の途中でさまざまな試練に直面しながらも、主人公たちが自らの内面を見つめ直し、成長していく様子を描いた作品です。
ロード‐ムービー(road movie)
主人公が旅を続けるなかで変貌し、自分を発見するという筋立ての映画。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「パイロット版」を正しく使おう!
映画・ドラマの関連用語やドラマや映画制作の舞台裏に光を当て、その制作プロセスや業界の特徴、海外ドラマと日本のドラマの予算や放送本数の違いについて解説しました。
パイロット版とは、映像作品を制作する前に作られる作品のことです。この機会に、パイロット版がなぜ存在するのか、どのような役割があるのか、じっくり考えてみましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(C)Adobe Stock
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