私たちの日常は、予期せぬ出来事や変化であふれています。そんな時こそ求められるのが、「融通無碍」という柔軟な心の持ち方。固定観念に縛られず、自由に状況に対応する力があれば、人生はもっと軽やかに進んでいくはずです。この記事では、「融通無碍」の意味や使い方、類語・対義語について解説していきます。
「融通無碍」の意味
「融通無碍」とは、考えや行動にしがらみとなるものがなく、自由な様子を表します。読み方は……「ゆうずうむげ」でした!
辞書の意味も併せて確認しておきましょう。
[名・形動]考え方や行動にとらわれるところがなく、自由であること。また、そのさま。「―な(の)考え」「―に対処する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「融通」は普段もよく耳にする言葉ですが、「無碍」はあまり聞き慣れない表現かもしれませんね。「融通」と「無碍」それぞれの意味を解説していきましょう。
「融通(ゆうずう)」は滞りがないこと
「融通」の元々の意味は、滞りがなく通じることです。そこから意味が転じて、現在では「必要に応じて自由自在に処理をすること」「必要なお金や物をやりくりすること」という意味でより頻繁に用いられています。
「融通」という言葉のルーツは、実は仏教に由来します。仏語としての「融通」は、別々のものがとけあって一体になることを意味しますよ。
「無碍(むげ)」はとらわれないこと
「無碍」とは、妨げるものがないこと、何にもとらわれないことを意味します。こちらも仏教に由来する言葉です。言葉の成り立ちに注目すると「碍(がい、げ)」という語は、進行を邪魔して止めることを表します。
そこに打消しの「無」が組み合わさることで、「邪魔や束縛といった障害がなく、とらわれない」ことという意味に。よりしがらみのなさを強調した、「融通無碍」の形で使われることも多いですが、「無碍」単独でも使われますよ。
例えば「無碍な発想が新しいアイデアを生み出す源となる。」というように使えるでしょう。
「融通無碍」の語源は?
『例文 仏教語大辞典』によると、「融通無碍」の意味は、「異なる別のものが相互にとけ合い、間をさまたげられないこと。」と説明されています。この意味が転じて、「考え方や行動が何物にもとらわれず、自由でのびのびしていること」となったようです。
「融通無碍」の使い方と例文
「融通無碍」を用いた例文と、それぞれの説明を紹介します。これらの例文を参考に、「融通無碍」の使い方を理解し、適切に活用してみてください。
彼は融通無碍な考え方を持っており、どんな状況でも適切に対応できる。
この例文では、「融通無碍」が「考え方や行動にとらわれるところがなく、自由であること」という意味で使われています。彼の考え方がしなやかであるため、様々な問題や変化にも適切に対処できていることがわかりますね。
リーダーは融通無碍な姿勢でチームをまとめ、困難を乗り越えた。
ここでの「融通無碍」は、「柔軟で自由な態度」を表現しています。リーダーが柔軟な姿勢でチームをまとめた結果、困難な状況を克服できたことを示しています。
融通無碍な発想が新しいビジネスモデルの創出につながった。
この例文では、「融通無碍」が「制約のない自由な発想」を表しています。制約に縛られず自由に考えるからこそ、新しいビジネスモデルを生み出すことができますね。
「融通無碍」の類義語
「融通無碍」の類語として、次の3つの言葉を紹介します。どの表現も自由な考えや行動を描写する表現であり、「融通無碍」の言い換えには「自由」というキーワードが多くみられるのが特徴です。
自由闊達
「自由闊達(じゆうかったつ)」とは、度量が大きく、物事にこだわらずに心のままに行動する様子を表します。自分の思うままにふるまう、自由な姿がイメージできますね。
【例文】
・自由闊達な意見交換は、プロジェクトの成功に欠かせない要素となった。
臨機応変
「臨機応変(りんきおうへん)」の意味は、以下のとおりです。
[名・形動]その時その場に応じて、適切な手段をとること。また、そのさま。「―な(の)処置」「―に行動する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「臨機応変」とは固定された方法にとらわれず、状況に応じて最適な対応をすることを意味します。就職活動や転職活動の際には、臨機応変な対応力をアピールすることは有効です。例えば「トラブルが起きた場合でも、臨機応変に行動できます」などというような自己PRが考えられるでしょう。
【例文】
・急なスケジュール変更にも臨機応変に対応できる能力は、ビジネスパーソンにとって重要です。
自由自在
「自由自在(じゆうじざい)」の意味は、以下のとおりです。
[形動][文][ナリ]思いのままにするさま。思いのままにできるさま。「―にスキーを操る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「自由自在」は物事を自在に操作したり、思い通りに進める能力を意味します。ビジネスシーンや日常生活で柔軟性を強調する際に使いやすい言葉ですね。
【例文】
・そのアーティストは色彩を自由自在に操り、独創的な作品を生み出している。
「融通無碍」の対義語
「融通無碍」の対義語には、頑固さや堅苦しさを強調する表現が挙げられます。ここでは、「融通無碍」の対義語として「杓子定規」、「四角四面」、そして「頑固一徹」の3つの言葉について解説します。
杓子定規(しゃくしじょうぎ)
「杓子定規」の意味は以下のとおりです。
[名・形動]《曲がっている杓子を定規代わりにすること、正しくない定規ではかることの意から》すべてのことを一つの標準や規則に当てはめて処置しようとする、融通のきかないやり方や態度。また、そのさま。「―な考え方」「―に扱う」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「杓子定規」とは、物事を一律の基準や規則に厳格に当てはめて処理しようとする姿勢を指します。このため、状況に応じた柔軟な対応ができず、融通が利かない様子を表現する際に用いられることが多いでしょう。頑固で他人の意見や状況に配慮せず、固定観念にとらわれる人や態度を揶揄する際にも使われます。
【例文】
・兄は杓子定規なところがあるので、職場の人から煙たがられているようだ。
四角四面(しかくしめん)
「四角四面」の意味は、以下のとおりです。
[名・形動]1. 真四角であること。「―のやぐら」
2. ひどくまじめで堅苦しいこと。非常にかしこまっていること。また、そのさま。「―な応答」「―にあいさつをする」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「四角四面」とは、非常に真面目で堅苦しい態度や行動を指します。真面目すぎて柔軟性に欠け、周囲からとっつきにくいと感じられる場合にも使われるでしょう。
【例文】
・四角四面の挨拶は抜きにしようよ。
頑固一徹(がんこいってつ)
「頑固一徹」の意味は、以下のとおりです。
[名・形動]自分の考えや態度を絶対に変えようとしないで最後まで押し通すこと。また、そのさま。「―な生き方」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「頑固一徹」とは、非常に頑固で、一貫した態度を貫き通す様子を表します。この表現は、特定の目的や信念に対して揺るがない強い意志を持つ人を指す場合に使われることが多いでしょう。
【例文】
・彼は頑固一徹な性格で、意見が合わないときは決して譲らない。
最後に
日常生活を送る中で、「こうあるべき」という考えに縛られ、身動きが取れなくなることもあるでしょう。心が晴れない時や、何となく物事が停滞していると感じる時には、「融通無碍」という言葉を思い出してみてください。
ほんの少しの心掛けで、心を穏やかに保ち、より柔軟な環境を手に入れることができるかもしれませんよ。
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