急な梅雨明け、猛暑日続き…体調不良に注意を
6月にして猛暑日続き、平年よりかなり早い梅雨明けなど、夏を迎える準備不足な今年。まだ体が暑さに慣れていないため、気温が高くなる日は屋外でも室内でも体調が心配なところ。
また、体調不良になっても、一体何が原因の症状なのか自分でわからない場合も多くあるのではないでしょうか。この季節特にわかりづらいのが、風邪と熱中症の判別。「風邪と熱中症の区別は難しいと思います。どちらも頭痛や微熱が出ることもあります」と語るのは、救急の最前線に日々立ち続ける新百合ヶ丘総合病院の伊藤敏孝先生。今回は伊藤先生に、注意したい熱中症と風邪のそれぞれの症状や、覚えておきたい対処方法について聞きました。
【医師に聞く】熱中症と風邪の症状と対処法
熱中症と風邪、間違いやすい症状は?
熱中症と風邪を混同しやすい一因は、頭痛・倦怠感・筋肉痛といった類似する症状が見られること。両者の主な症状について、以下の図にまとめました。
「熱中症と風邪の共通した症状は、頭痛と倦怠感と筋肉痛です。暑い日に、頭痛やだるさを感じ風邪だと思っていたら、瞬く間に昏睡状態に陥り、救急搬送される患者さんも少なくありません。特に熱中症による救急搬送が増えるのが、梅雨明け前後の夏日です。軽い風邪だと思って見過ごさず、熱中症も疑った方がいいでしょう。野外だけでなく、室内でも熱中症は起こります。水分補給などの予防をしていても、症状を感じたら注意してください」(伊藤先生)
また、昨今は新型コロナウイルスの心配も。熱中症と風邪のそれぞれに合わせた対処方法を取りつつ、新型コロナウイルスの可能性も考慮することが大切だと伊藤先生は言います。
「熱中症の場合は身体を冷やして水分を補給。風邪が疑われる場合は、市販の風邪薬を飲んで半日から1日様子をみましょう。そのまま症状が落ち着いたら治るまで安静に過ごします。ただし、軽い発熱でもコロナの疑いもあるかもしれないので、1日家族間の接触を減らして過ごしてください。1日様子をみて悪化する場合などは、医療機関をすぐに受診してください」(伊藤先生)
要注意!熱中症は急激に悪化する可能性が
熱中症の初期症状としては、主にめまい・立ちくらみ・生あくび・筋肉痛などが挙げられます。先ほども説明したように熱中症は急激に悪化することがあるので、症状が軽くても油断は禁物です。
「熱中症かなと思ったら、屋外の場合は木陰などの日陰へ移動し、水分とミネラルの補給を行って体を休めてください。保冷剤などがあれば、体を冷やしましょう。室内では、水分・ミネラルの補給とともに、エアコンや扇風機などの出力をあげる、水を含めたタオルや保冷剤で首・脇の下・大腿のつけ根などを冷やしましょう」(伊藤先生)
これで改善しない場合は、すみやかに医療機関へ。また、悪化したときのために周囲に助けを求めること、1人にならない・しないことも大切です。
「熱中症の初期症状は、めまい、立ちくらみ、生あくび、筋肉痛ですが、さらに倦怠感や頭痛もある場合は、周囲に助けを求めた方がいいでしょう。熱中症は急激に悪化することがあり、1人だけになるのは危険です。水も飲めないほどぐったりしていたり、昏睡状態であれば、周囲の人はすぐに救急車を呼んでください」(伊藤先生)
風邪は早めに風邪薬でケア
鼻やのどの上気道に症状がある場合、つまり、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・せき・たんなどの症状が出たら、まずは市販の風邪薬で対応します。
「風邪は頭痛や倦怠感を感じても、急激に昏睡状態になるようなことはありません。風邪は常備薬を手元において、早めのケアを心がけてください。また最近解熱鎮痛剤が話題になっていますが、風邪薬には解熱成分が入っています。アセトアミノフェンは穏やかな効き目でお子様やお年寄りにも処方されます。微熱や悪寒があるときには上手に使って様子をみてください」(伊藤先生)
また、風邪であっても必ずしも重症化しないとは限りません。子どもや高齢者、市販の風邪薬を飲んでも改善しない場合などは、医療機関に相談を。
「風邪は熱中症のように急激な悪化はほとんどみられませんが、重症化のリスクはあります。特に子どもや高齢者など、免疫力が低下している世代は注意が必要です。風邪のほとんどはウイルス感染です。風邪のウイルスだけでなく、別の細菌に二次感染し、気管支炎や肺炎、脳症など合併症を起こし重症化することがあります。重症化する前に、早めに風邪の症状を緩和し体力を回復することが大切です。市販の風邪薬を飲んで様子をみて改善しない場合は、すぐに医療機関にご相談ください」(伊藤先生)
とにかく見分けが難しいことを忘れずに。悪化しないか様子をみて
室内にいたり、風邪と似たような軽い症状だったりすると、熱中症とは思い至らない場合も。しかし熱中症は急激に悪化する可能性があるため、自力では簡単に見分けがつかないことを忘れず、しっかり様子を見ることが大切です。
「今年はコロナ禍で、消防庁の救急隊員も私たち医療関係者も混乱することが多々ありますが、症状が気になるときはすぐに医療機関に相談してください」 (伊藤先生)
教えてくれたのは
伊藤 敏孝先生
いとう としたか/新百合ヶ丘総合病院 救急センター センター長。救急医 外科医。防衛医科大学卒業後、横浜市みなと赤十字病院救急部 部長を経て現職。救急医療のスペシャリスト。日本救急医学会専門医・指導医・評議員、日本集中治療医学会専門医、日本外傷学会評議員・専門医。
風邪薬はいつでも服用できるように常備を
外出先やオフィス、学校などで風邪っぽさを感じたときにすぐ服用できるよう、風邪薬をバッグやポーチなどに忍ばせておくと安心。眠くなったり口や鼻が乾いたりする成分 (抗ヒスタミン剤など) が入っていない薬を選ぶと、眠くなりにくいのでおすすめです。
また、台風、地震、洪水など自然災害に備えて防災リュックを準備している方も多いはず。意外と忘れがちですが、避難場所で体調を崩すこともあるため常備薬も必要です。風邪薬などを防災リュックに入れておきましょう。小さな子どもから飲めるものを用意しておけば、自分の家族はもちろん、避難した周囲の人にも分けることができます。
体調の悪化を感じたとき、自分で原因がパッとわかることの方が珍しいかもしれません。暑さ厳しいこの季節は、軽い風邪のように感じたときでも油断せず、熱中症の可能性にも注意してみてください。
情報提供:カイゲンファーマ株式会社