20〜30代で増えている子宮頸がん。ワクチンの正しい情報、何を見たらいい?
子宮頸がんは年間約1万人の女性が罹患し、近年増加傾向のがんです。20〜30代で増えており、治療で子宮を失い妊娠できなくなることもあります。その原因の多くがHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によるもので、感染経路は性行為です。HPVに感染しても必ず子宮頸がんになるわけではなく、多くの場合は自然に消えますが、一部の人では子宮頸がんを発症します。またHPVにはたくさんの種類があり、そのなかでも子宮頸がんを起こしやすいタイプはHPV-16型、18型です。子宮頸がん予防ワクチン、いわゆるHPVワクチンはこのHPV-16型、18型の感染を予防し、それにより子宮頸がんの原因の50〜70%を防ぐことができます。世界保健機関(WHO)でもHPVワクチンの接種が推奨されており、2022年現在、日本では小学校6年生から高校1年相当の女の子を対象にHPVワクチンの接種を推奨しています。また、この対象年齢以外でも接種の機会を逃した平成9年から平成17年生まれの女性に対しての“キャッチアップ接種”も行われています。
私は13歳になる娘の母ですが、母、そして医師の立場から娘が対象年齢になったらHPVワクチンを接種してほしい、とずっと考えていました。ですが、13歳の娘に「ワクチンの接種をして」とただ言って接種するのは意味がなく、娘に子宮頸がんについて知ってほしい、その上でワクチン接種も受けるかどうかを自分で選択してほしい、とも思っていました。私は医師ですが婦人科は専門外。中学生にわかりやすく解説できる自信がなかったため、娘にも子宮頸がんについて理解でき、ワクチン接種の選択の手助けになるような資料を探しました。そこで選んだのは、厚生労働省の「小学校6年生から高校1年相当の女の子と保護者の方への大切なお知らせ」という資料でした。
▲厚生労働省「小学校6年~高校1年の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ」(左)概要版 (右)詳細版
これは行政から送られてくる冊子ですが、厚生労働省のホームページから誰でも見ることができます。概要版と詳細版の2種類があり、どちらも子宮頸がんとHPVワクチンの正しい知識が詳細に、とてもわかりやすく記載されています。医師の立場からみても読み手のことをよく考えている本当に完成度の高い資料だと感じました。
▲厚生労働省「小学校6年~高校1年の女の子と保護者の方へ大切なお知らせ」(詳細版)より
この資料を娘に読んでもらい、HPVワクチンについてどう思うか、どうしたいかを聞いてみました。娘は静かにじっくり読んだあと「私、これを打つ」と一言。親子ともに納得でき、我が家の方針が決まりました。
HPVワクチンの副作用について一時期センセーショナルに報道がされていた時期もあり、多くの方がそのことを気にされていると思います。副作用についてもこちらの資料ではきちんとした見解が述べられていますし、子宮頸がんの知識・ワクチンの種類・投与間隔などについても丁寧な解説が書かれています。そして、ワクチンを打ったら終わりではなく、ワクチンで予防できない子宮頸がんもあるため20歳になったら子宮頸がん検診を受ける必要性があるところも必読。ぜひ母娘で読んで考えて頂きたい資料です。
ネットでただ単に調べたいワードだけ検索にかけても知りたいことや正しい情報につながるとは限らず、どの情報を参考にするかは非常に重要です。私は乳がんを専門にする乳腺専門医ですが、「乳がん治療」でネット検索をかけても正しい情報だけがでてくるとは限らず、混乱される患者さまを数多く見てきました。
HPVワクチンを打つ・打たない、それは個人の判断ですが、大切なのは正しい情報・知識をもとに選択しているかどうか、ということだと思います。自分自身そして大切な家族のことも守っていくためにも、正しい情報や知識を得て後悔しない選択をしていただきたいです。紹介した資料は、その選択の手助けになると医師の立場からも、13歳の娘を持つ母の立場からも推薦できます。接種の対象年齢の母娘はもちろん、女の子ママにはぜひ一度読んで子宮頸がん、そしてHPVワクチンについて考えてもらえればと思います。
Domanist
杉山迪子
乳腺専門クリニック マンマリアツキジに勤務する乳腺外科医。
乳がん・乳腺の知識をわかりやすく発信すること、乳がん患者さんが役立つ楽しい情報を発信することをライフワークにしている。ファッション、美容、料理、娘との旅行が大好き。
Instagram:https://www.instagram.com/michiko_612/
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