「月」とは?
「月」とは、地球の一番近くにある天体のことで、地球の唯一の衛星です。約29.5日かけて自転しながら地球の周りを公転し、新月・上弦・満月・下弦と満ち欠けを繰り返します。そのため、月の満ち欠けに基づいて暦が作られ、この暦によって人々は生活を営んでいたのです。
ギリシャ神話に登場する月の女神「アルテミス」や、ローマ神話の「ルナ」、日本神話の「月読尊(つくよみのみこと)」などに見られるように、月は古来より世界中で特別で神聖なものとして考えられていました。
月齢を数えるという意味の名前である「月読尊」については『古事記』や『日本書紀』に記載があり、「月読命」や「月弓尊」と書かれることも。特に『日本書紀』には、口から多くの食べ物を出して月読尊をもてなそうとした「保食神(うけもちのかみ)」と呼ばれる神を、月読尊が不浄だとして切り殺したという伝承が見られます。
これに激怒した月読尊の姉にあたる「天照大神(あまてらすおおみかみ)」が、弟には二度と会わないと言ったことがもとで、「天照大神」と「月読尊」、つまり「太陽」と「月」が同時に空に昇ることはなくなったという、日月の起源とも言える話が記載されているのです。
暦で見る「月」
先述の通り、古来より人々は「月」の公転速度に基づいた「太陰暦」と呼ばれる暦を作り、日々の生活を送っていました。ここでは、太陰暦や和風月名について紹介します。
1:太陰暦とは?
「太陰暦(たいいんれき)」とは、太陰太陽暦のことで、一か月を月が満ち欠けする周期に合わせて作成した暦のこと。月が地球を一周する周期は約29.5日であるため、30日と29日の日数の月を作成して調節し、30日の月を「大の月」、29日の月を「小の月」と呼んでいました。
しかし、地球が太陽を一周する周期は約365.25日で、季節はその周期によって移り変わるため、月の公転速度に合わせた暦では次第にずれが生じます。そのため、2、3年に一度は「閏月(うるうづき)」を設定して13か月ある年を作成したり、大小の月の配列を変えたりして、調節していたそうです。
暦は中国から朝鮮半島を通じて日本に伝来したと考えられており、日本最古の歴史書である『日本書紀』には、聖徳太子の祖父にあたる欽明天皇が、現在の朝鮮半島に位置する百済(くだら)から「暦博士」を招いて、「暦本」を入手しようとしたという記載が見られます。
月の配列が変わることなく、12か月で固定されている太陽暦とは違って、その年によって月が増えたり配列が変わったりする太陰暦では、暦の制定が非常に重要な意味を持っていました。太陰暦は明治時代に暦が改められるまで続きますが、その制定は朝廷や江戸幕府に置かれた専門職による監修のもとで、決定されていたのだとか。
2:和風月名
旧暦とも呼ばれる太陰暦では、和風月名(わふうげつめい)という、月の和風の呼び名が使用されていました。和風月名は旧暦の季節などに基づいて作成されたもので、現在でもカレンダーなどに記載されていることが多いのではないでしょうか。ただし、旧暦に使用されていたものであるため、現在の季節感とは1、2か月ほどのずれがあります。
1月から12月まである和風月名ですが、皆さんは全て覚えていますか? 1月から順に、睦月(むつき)・如月(きさらぎ)・弥生(やよい)・卯月(うづき)・皐月(さつき)・水無月(みなづき)・文月(ふみづき)・葉月(はづき)・長月(ながつき)・神無月(かんなづき)・霜月(しもつき)・師走(しわす)となっています。
全国の神々が島根県の出雲大社に集まり、その間は留守になるという話が由来とされる10月の「神無月」や、師(僧)も慌ただしく走り回るほど忙しいということから異称として親しまれた12月の「師走」などは広く知られています。
ほかにも、正月に家族や親戚同士で集まって親睦を深める月という意味を持つ1月の「睦月」や、寒さが厳しく、衣を重ね着するという意味の「衣更着」に由来する2月の「如月」、田に水を引く季節という意味を持つ6月の「水無月」など、季節や行事によって名前が決められているということが分かります。
「月」の呼び名とは?
「月」というと、うさぎが餅つきをしている様子を思い浮かべるという方も多いのではないでしょうか。まるでうさぎが餅をついているように見えるという月の模様。ほかにも、本を読む老婦人やカニ、吠えるライオンなど、世界中で見え方は様々です。
月を鑑賞するという風習は古くから世界中で見られ、日本でも名月の日に月見をするという文化が現在に至るまで受け継がれています。そして、月には様々な呼び名があり、俳句の季語になっているものも多いのです。
例えば、『朧月夜』という童謡にも登場する「朧月(おぼろづき)」。春の夜に浮かぶ、かすみがかった月のことで、春の季語となっています。また、旧暦8月15日の夜に見られる「中秋の名月」。「名月」は秋の季語で、名月の後に見える「立待月(たちまちづき)」や「居待月(いまちづき)」も同じく秋の季語となっています。
名月の後に見える月は、出てくるのが遅く感じられたことから、「立って待つ月」「座って待つ月」という意味を持つ名前が付けられたそうです。さらに、『百人一首』の和歌にも登場する「有明の月」は、夜明けになってもまだ空に浮かんでいる月のことで、こちらも秋の季語となっています。
「花鳥風月」や「雪月花」という言葉にもあるように、古来より月は自然美の象徴とされていますが、その中でも秋の月は特別な存在だったということが分かります。
「月」という漢字は名前にもおすすめ?
「月」を使った名前は男女共に人気があり、「たまひよ赤ちゃんの名前ランキング」でも複数回ランクインしています。優しい光を放ち、人々を魅了してきた「月」。この漢字を使った名前の多くには、月の光のように穏やかで優しい人に育ってほしいという願いが込められています。
また、月には満ち欠けがあるため、波乱万丈な人生を送ることになるのではないかと言われることがありますが、不吉な意味を持つと言われるものの多くはこじつけであるため、裏付けられた情報とはいえません。
「月」を使った名前2選
では、「月」という漢字を使った名前にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「月」を使った名前について紹介します。
1:美月(みつき)
美しいという意味の「美」と、「月」を合わせることで、夜空に輝く美しい月のような人になってほしいという願いが込められた名前です。
2:悠月(ゆづき)
心が落ち着いている様子を表す「悠」という漢字を組み合わせることで、優しい光を放つ月のように穏やかでゆとりのある人になってほしいという願いが込められた名前となっています。
最後に
今回は、「月」の呼び名や「月」を使った名前について紹介しました。古来より世界中で親しまれてきた「月」。皆さんも、夜空に輝く月を見上げて、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい