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眉唾とは
「眉唾」は「まゆつば」と読みます。何かが信じがたく疑わしいと感じられることを指し、だまされないように用心しなくてはならないことです。
眉唾の語源
「眉唾」は、正しくは「眉唾物」といいます。省略して「眉唾」と言われるようになりました。言葉の語源は諸説ありますが、『日本国語大辞典』(小学館)には以下のように書かれています。
眉に唾をつけると狐などに化かされないという俗信から
昔、キツネやタヌキは、人を化かすときに「眉毛の毛の数を数える」といわれていたそうです。眉に唾をつけて数を数えられないようにすれば、キツネやタヌキに化かされることがないという考えが伝えられています。この迷信・俗信から、できすぎた話や疑わしい話などを「眉唾物(まゆつばもの)」というようになったそうです。
眉唾の使い方
眉唾はどのようなシーンで使うのか、例をあげて使い方を見ていきましょう。
1:彼の話はちょっと眉唾物だから、信じる前に確認しようと思っている。
2:その広告の謳い文句はちょっと眉唾を感じて、製品の実力を詳しく調べるつもりだ。
3:彼女から聞いたダイエット方法はちょっと眉唾だったけど、信じられる気もする。
4:彼の自慢話はいつも眉唾っぽいけど、それが彼の性格なんだろうと思って聞いている。
このように、他人の話や情報に対して信じがたいと感じる要素がある場合や、確かさを疑っている場合に、「眉唾」を使います。そのため、確認やほかの情報の収集をする必要性を示唆しています。
眉唾の類語、言い換え表現
眉唾の類語や、言い換え表現にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
胡散
「うさん」と読みます。胡散臭い(うさんくさい)という形容詞としても使われる言葉で、信用できない、疑わしいという意味です。
〈例文〉
1:彼の説明はどこか胡散臭い要素があって信用できない。
2:その新しい投資案件はどう考えても胡散臭くて、注意が必要だと感じた。
3:その商品の効果についての広告は胡散臭い。
このように、はっきりとは断定できないものの、ある人や物事が信用できない、怪しいと感じられる状況を表す言葉です。背後に何か隠された意図や欺瞞があるように思われる場合などに使用されます。
荒唐無稽
「こうとうむけい」と読みます。「無稽荒唐(むけいこうとう)」「荒唐不稽(こうとうふけい)」ともいいます。「荒」も「唐」もむなしくとりとめがないこと、「稽」はここでは考えという意味ですので、考えがない・根拠がないということで言動に根拠がなくでたらめなこと、現実味がないこと、という意味です。
〈例文〉
1:彼の話は完全に荒唐無稽で、まるでファンタジーのようだった。
2:彼女はネットへの荒唐無稽な書き込みが増え、頭を悩ませている。
3:あの雑誌の記事は荒唐無稽な噂を広めるだけで信用できない。
このように、話や情報が非現実的で信じがたいと感じられる状況を表し、信頼性や現実性に欠けるものに対して用いられます。
信憑性に欠ける
「しんぴょうせいにかける」と読みます。「信」は本当のこと、「憑」はよりかかる、頼みにするという意味で、「信憑」は信頼すること。それが「欠ける」のですから、信頼できない、という意味です。
〈例文〉
1:そのウェブサイトの情報は信憑性に欠けるので、ほかの信頼できる情報源を探すべきだ。
2:彼の主張には十分な証拠がなく、信憑性に欠けると言わざるを得ない。
3:その報道は匿名の情報源に基づいており、信憑性に欠けると考えられる。
このように、情報や主張が信頼できる根拠や証拠がなく、疑わしい状況を表します。
眉唾の対義語
眉唾は、辞書的にこれといった対義語はありませんが、反対の意味を示す「確かに、信頼できる」といった意味の言葉を紹介します。
折り紙付き
「折り紙付き」の折り紙とは、江戸時代に刀や書画などの美術品につけていた鑑定保証書のこと。その鑑定保証書は折られていたために、「折り紙」と呼ばれたそうです。保証付きのものにつけるのですから、確かなものだと言えますよね。そのため、折り紙付きと言ったら、「絶対に保証できるもの」「確かなもの」を指します。この言葉は、よい意味のときにのみ使われます。悪い意味のときは「札付き」と言います。
〈例文〉
1:彼は折り紙付きの交渉力を持ち、難しい問題もスムーズに解決することができる。
2:この案件は、彼女の折り紙付きのスキルによって成功することが確実だ。
3:彼の魅力的なデザインは折り紙付きなので、商談は成功するだろう。
お墨付き
「おすみつき」と読みます。権力ある人や権限のある人の承諾や保証などのこと、またはそれを記した文書のことです。元々は、室町時代・江戸時代、将軍や大名から臣下に与えた領地を保証・確認する文書のことを指しました。署名や署名を図案化した「花押」が、墨で記されていたことから生まれた言葉とされています。現在では保証されているという意味で用いることが多いです。
〈例文〉
1:その作品は才能とクオリティが充分であり、業界の専門家からお墨付きをいただいた。
2:その商品は品質の高さが評価され、消費者からお墨付きをいただいている。
3:彼女の提案は独創的で具体的な内容を含んでおり、上司からお墨付きをもらった。
まとめ
「眉唾」とは、何かが信じがたく疑わしいと感じられることを指し、その話や情報の信憑性に疑いを持つことです。「眉に唾をつける」などの表現で、日常会話や感情的な表現において使われることがあります。正しい意味を覚えて使ってみてください。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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