揶揄の意味
揶揄とは、「やゆ」と読みます。送り仮名をつけて「揶揄う」と表記すると「からかう」に。「揶」「揄」どちらの漢字にも、もてあそぶ、からかうという意味があります。したがって揶揄とは、他人の欠点や失敗などを冗談や皮肉を言ってからかうこと、また、それをもじった言葉や行動を指します。
揶揄の使い方
それでは揶揄という言葉はどんな場面で使うのか、例文をあげながら紹介します。
1:上司に、同期を揶揄されて残念な気持ちになった。
2:彼の、女性を揶揄するような発言は問題となった。
3:会議では、部長を揶揄する発言が多数散見された。
このように、揶揄という言葉には「相手を困らせて面白がる」といったニュアンスが含まれます。近年では、性別・国籍・人種・宗教・容姿などへの不適切な発言に対して批判的な見方をされることも多く、世間も敏感に反応する傾向に。マイノリティに対して悪意をもって、または無神経にからかうような言動を「揶揄」と呼び非難することもあります。
間違いやすい表現
揶揄に漢字や読みが似ている言葉として、「比喩(ひゆ)」があります。比喩とは、ある物事を説明するのに、ほかの類似または関係した物事を借りて表現すること。比喩の「喩」の意味は「たとえ」です。このように揶揄と比喩は言葉の響きが似ていても、意味はまったく異なるため注意が必要です。
揶揄の類義語
揶揄の類義語・似た意味をもつ言葉にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。いずれも相手をバカにする、からかうという意味が含まれる言葉です。
嘲笑(ちょうしょう)
嘲笑とは文字通り、あざけり笑う、他人を見下して笑うという意味です。
〈例文〉
1:ある失敗が、SNS上で嘲笑された。
2:彼の新しいプロジェクトには、嘲笑の声も多かった。
3:負けてしまった選手には、嘲笑ではなく励ましの声を送りたい。
皮肉(ひにく)
皮肉とは、遠回しに批判や冷笑を込めた言葉のことです。相手の欠点や弱点などを、(逆にほめるなどして)遠回しに非難したりからかったりすることを指します。
〈例文〉
1:彼女は皮肉を込めて「また新しい彼氏?」と聞いてきた。
2:その映画の評価には、皮肉なコメントが多かった。
3:どんな皮肉を言われても、彼は動じない。
風刺(ふうし)
風刺とは、社会の矛盾や人々の欠点、時事の出来事などを独特の視点で皮肉っぽく、またはユーモアを交えて批判・指摘する手法やその内容を指します。文学、絵画、映画、音楽などのさまざまな芸術やメディアで用いられることが多いです。
〈例文〉
1:その漫画は現代社会の矛盾を風刺しているため、多くの読者に支持されている。
2:彼のコラムには政治への鋭い風刺が込められており、多くの人々がそれに共感している。
3:その映画は企業の経営者たちの欠点を風刺する内容で、話題となっている。
風刺は、時には社会の反省や自省のきっかけとなり、変化を促す力をもつことがあります。そのため、表現者の手段として、また受け手としての解釈の中で、重要な役割を果たしているのです。
揶揄の対義語
続いて、揶揄の対義語・対照的な意味をもつ言葉にはどんなものがあるのか、一緒に見ていきましょう。辞書的に「ズバリこれ!」という語はありませんが、揶揄がネガティブなイメージであるのに対して、ポジティブなイメージをもつ言葉が言い換えの際に使えるでしょう。
賞賛(しょうさん)
他人のよい点や成功を褒めることや、褒めたたえることです。称賛とも表記します。
〈例文〉
1:彼の勇気は賞賛に値する。
2:その新製品は多くの人々から賞賛を受けた。
3:彼女の歌声には、会場全体から賞賛の拍手が起こった。
応援(おうえん)
困っている人や頑張っている人を励まし、助けることです。他人の成功を願い、支えることを意味します。以下に例文をあげます。
〈例文〉
1:彼女は常に私を応援してくれる。
2:そのチームは、多くのファンからの熱烈な応援を受けている。
3:失敗しても、家族はいつも私を応援してくれる。
敬意(けいい)
読んで字のごとく、尊敬する気持ちのことです。他人の能力や成果を尊重することを意味します。
〈例文〉
1:教師には敬意をもって接するべきだ。
2:彼の業績には、深い敬意を感じる。
3:敬意のかけらも見られないその態度には、驚かされた。
揶揄の英語表現
揶揄の英語表現としてあげられる言葉にはどのようなものがあるのか、紹介します。
mockery
他人をからかう行為や態度を表します。以下、例文です。
1:The audience erupted in mockery when he forgot his lines.
彼が台詞を忘れたとき、観客は大笑いした。
2:Her dress became the subject of much mockery.
彼女のドレスは多くのからかいの対象となった。
3:He faced the mockery of his colleagues after the presentation.
プレゼンテーションの後、彼は同僚たちに揶揄された。
ridicule
他人を見下してからかうという意味です。以下に例文をあげます。
1:His ideas were often met with ridicule.
彼のアイデアはよく嘲笑の的となった。
2:She couldn’t bear the ridicule from her peers.
彼女は同世代からの嘲笑に耐えることができなかった。
3:The policy was widely held up to ridicule.
その方針は広く風刺の対象となった。
sarcasm
遠回しに批判や冷笑を込めた言葉や態度を意味します。以下に例文をあげます。
1:”Nice job on the presentation,” he said with heavy sarcasm.
「プレゼン、よくやったね」と彼は強い皮肉を込めて言った。
2:She responded to the criticism with pure sarcasm.
彼女は純粋な皮肉を込めて批判に応じた。
3:I detected a hint of sarcasm in her voice.
彼女の声には皮肉のニュアンスを感じた。
まとめ
揶揄とは、他人の欠点や失敗などをからかうというネガティブな要素を含んだ言葉です。近年、よく話題になる「いじり」も、揶揄のひとつです。言葉は日常生活の中で無意識に使われますが、ネガティブな言葉こそ、正しい意味を知って相手に不快な思いをさせないことを心がけましょう。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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