褒めることの効果
人を褒めると、自分も相手も気持ちがよいもの。職場のコミュニケーションでも、「褒める」を意識する人が増えています。プライベートでも、「子供やパートナーを上手に褒めたい」、「褒めることで気持ちを伝えたり、やる気を出してもらいたい」と思っている人は多いでしょう。
褒めることは、褒める側にも褒められる側にもプラスの効果があります。どのような効果があるのか、みていきましょう。
1:人間関係がよくなる
人から認められたいという承認欲求は、誰もが持つ願望です。アメリカの心理学者マズローの「欲求5段階説」では、人間の欲求は5段のピラミッドのように構成されています。衣食住、安全、所属する集団や仲間があれば、その次に集団の中で認められたいと思うようになると考えられています。
褒められることは、認められている証。承認欲求が満たされることで、相互の信頼関係が構築しやすくなります。
2:相手の自己肯定感や、やる気がUPする
自分の存在が認められていると感じると自己肯定感が上がり、やる気も増します。モチベーションの向上は、脳科学でも証明されています。褒められると脳内でドーパミンが放出されるのです。ドーパミンは、幸せを感じたり、意欲を作ったり感じたりする、などの働きがあります。
3:自分の気持ちが明るくなる
「人を褒めると、自分もすっきりと気持ちがいい」と感じませんか? 脳内の変化は、褒める側にも起きます。褒める人の脳内では愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが放出され、ストレスが緩和するといわれているのです。
4:人のいいところに気付きやすくなる
褒めることを意識していると、人の長所に目が行くように。そして、短所に思える特徴も強みとして生かせることにも気付きます。例えば、「理屈ばかり言ってすぐに取りかからない」は「まず論理的に考え検証できる」ともいえます。短所を非難するのではなく、強みとして使うようアドバイスができると、お互いのためにもよいですね。
褒め方のヒント ~何を編~
いざ褒めようと思っても、「何を褒めればいいのか分からない!」という声も聞きます。褒めるところは、誰しも必ずあるもの。あなた自身ができていること、がんばっていることを当たり前だと思って見過ごしていないでしょうか? 普段当たり前になってしまっていることにも意識を向けてみましょう。
ヒント1:成果
誰もがよく褒める対象です。しかし結果は、自分でコントロールできない要素も含んでいます。ヒント2、3にも着目してみてください。
ヒント2:行動やプロセス
成果に結びつく、行動やプロセスを褒めましょう。その人の努力や素晴らしさは、行動やプロセスに表れていることが多いもの。次のような例はつい当たり前だと思ってしまうことかもしれませんが、褒めるべきポイントです。
・いつも報連相を早めにタイムリーにしている
・会議で決まったことを必ず実行している
・お礼やお詫びの挨拶をすぐにしている
・いつも気持ちのいい挨拶をしている
・毎日30分勉強をしている
・毎朝自分で起きて遅刻せず通っている
ヒント3:気持ち、考え方、姿勢
目の付けどころ、面白いアイデア、周りへの配慮、進んで行動したこと、なども褒めましょう。抽象的になりがちなので、行動に結びつけて褒めると相手によく伝わります。
例)
「優しいですね」⇒「困っている人の立場もよく考えていますね」
「がんばっていたね」⇒「積極的に手を上げていたね」
4:変化したこと
叱ったり注意したことに関して、行動が変わったら褒めていますか? 変えて当たり前と思わず、そこを是非褒めてください。そのためには、叱るときも「ちゃんとやって」「きちんと考えて」ではなく、どう変えたらよいのかが分かる叱り方を工夫してみましょう。
褒め方のヒント ~どのように編~
日本人は以心伝心や謙遜を美徳としてきた文化もあり、褒めることも褒められることもあまり得意ではないとも言われています。褒めるのを、気恥ずかしく感じる人もいるかもしれません。できることから実践してみましょう。
ヒント1: 観察する
相手をよく観察していると、褒めるポイントも自然と見つかります。何をしているのか、以前との変化、などをよく見ましょう。
ヒント2:事実を具体的に
お世辞や想像で褒めるのではなく、事実を具体的に褒めましょう。よいと思ったことを素直にシンプルに伝えるのがおすすめです。
ヒント3:明るくさらっと
特別な話としてかしこまったり、場所を改める必要はありません。何気なくさらっと言葉にしてみましょう。
ヒント4:小さなことでもタイミングよく
小さなことを見逃さず、タイミングよく褒めるのもポイントです。
例) 「ありがとうございます。いつも資料が整理されていますね」
5:本人がいない場所でも
直接褒めるのが照れくさい場合は、本人がいない所で褒めるのもアリです。直接聞くよりも第三者から聞く情報の方が信頼されやすいという心理効果(ウィンザー効果)もあります。褒められたことを他の人から聞き、喜びが大きくなることを期待して、敢えてこうする人も。ただ、本人に伝わらない可能性もあることは、頭に置いておきましょう。
褒め言葉のさしすせそ
褒めるボキャブラリーとして便利な、さしすせそで始まる言葉を紹介します。但し、これらを連発するのは避けましょう。
さすがですね
知りませんでした
素晴らしいです、すごいですね
センスがありますね
そうなんですね
避けたい褒め方
最後に、褒めるに当たって気をつけたいことを確認しておきましょう。せっかく褒めているのに、伝わらないどころか、逆効果にもなりかねません。
1:他の人と比較して褒める
褒められた人は、素直に喜べなかったり、どうしてその人と比べるんだろうと不審に思ったりするものです。
2:大げさに褒める
大げさに褒めすぎると、褒められた方は、戸惑ったりからかわれているような気持ちになったりしがち。下心があるのでは、と警戒感を持つこともあります。
3:やたら褒める
褒められないと見放された気分になったり、褒められることを目的に何かをするようになっては本末転倒です。良いさじ加減を見つけましょう。
最後に
褒めるといろいろな効果がありますが、人を操作するための行為ではないことをしっかり心に留めておきましょう。もっと頑張らせよう、自分をよく思ってもらおうという意図で褒めると、それは相手に透けて見えるものです。褒めるときは、素直に相手のよいところを「認める・感謝する」ことに集中しましょう。信頼関係や相手のやる気はその結果として、ついてきます。
監修
米山万由美(よねやま・まゆみ)
キャリアコンサルタント
アンガーマネジメントファシリテーター(R)
組織の1on1面談や人財活用コンサルタント、研修講師として活動。楽しくはたらき楽しく暮らすを応援。趣味はチェロ演奏。
ライター所属:京都メディアライン
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