謝罪する意味
あなたはいつも、どのように謝っていますか? 大体いつも同じ言葉で同じように謝っていますか、それとも、謝罪の言葉の引き出しは豊富でしょうか。相手や状況に応じて、とっさの場合にも気持ちのよい謝罪ができるようになりたいところですよね。
謝罪する意味や目的を改まって考えることは、あまりないかもしれません。しかし、しっかり心にとめておけば、気持ちのよい謝罪から大きくはずれる心配はないはずです。
1:相手の怒りやショックを和らげる
自分が怒られないためや、責められないために謝るのではありません。相手がどんな気持ちか、どれくらい困っているのか、に寄り添いましょう。あなたにとってたいしたことがないように思えても、相手にとっては相当ショックなこともあり得ます。自分のものさしで決めてかからないことが大切です。
2:誠意を伝える
申し訳ないと思っている気持ち、相手の立場や状況を理解して今後の対応を一生懸命考える姿勢を分かってもらいましょう。思っているだけでなく、言葉や態度に表してこそ伝わります。
3: 信頼関係を崩さない
なによりの目的は、互いの信頼関係を崩さないことでしょう。雨降って地固まる、という言葉があるように、信頼関係が深まることもよくあります。
悪気はないのに嫌な思いをさせてしまった、自分の責任ではないが迷惑をかけてしまった、そんなことも起こります。自分が悪いときに謝るだけではなく、相手の気持ちに寄り添って適切に謝罪ができると、人間関係が円滑になるでしょう。
NGな謝り方
ビジネスなのかプライベートなのか、相手が親や家族か、恋人か、友達か、によっても謝り方は変わります。それでも共通していえるNGな謝り方とは、どんなものなのか見ていきましょう。ここでは、ビジネス場面での例を挙げますが、他の場面にも置きかえて考えてみてください。
1:人のせいにする、自分の責任を認めない
例:「あ、それは○○部署の担当なので…」「すみません。私は言われたことをしただけなので、○○さんに言ってもらえますか?」
自分に責任がないと感じている場合、それを相手に分かってもらいたくて自分は悪くないことを伝えたり、謝罪の言葉が表面的になりがちです。仮に自分に直接責任がなくても、関係者として、まずは相手が嫌な思いをしていることを受け止めましょう。責任がないときは謝罪しない方がよいと思っている方もいるようですが、「嫌な思いをさせていること」に対して関係者として謝罪することをおすすめします。これは、二次クレーム防止にもなります。
2: 言い訳ばかりする
例:「だけど、それは○○○だから」「でも、○○さんが△△をしたので」「実はそのとき○○になって」
状況を説明するために、伝えなくてはならない事実ももちろんあります。しかし、いきなり相手の話をさえぎるように反論するのは避けましょう。まずは、相手の話を最後までしっかり聞いて、言い訳ではなく状況説明・状況確認として伝わるように言葉に気をつけながら話しましょう。
3:事務的で、気持ちが通う言葉がない
例:「分かりました。では、ご希望通り○月○日までに新しい物を届けますので、ご心配いりません。不良品はそのとき回収しますので置いておいてください」
言っている本人は、「申し訳ないと思って相手の希望通りに対応しているのだから、これでいいだろう」と思っているかもしれません。しかし、お詫びや反省の言葉がないまま事務的に済ませようとすることに、相手が更に苛立つことは多いものです。
心象を悪くしない謝り方とは
正しい謝罪の仕方が決まっているわけではありませんが、次のポイントを意識しておきましょう。
すぐに謝る
まず、すぐに謝ることが大切です。相手の気持ちも少し穏やかになり、善後策の話し合いもしやすくなります。言葉としては、プライベートでは「ごめんなさい」「すみません」がよく使われますが、ビジネスの場では「申し訳ございません」「失礼致しました」などが適切です。
状況の確認と相手への気遣い
相手がこの状況をどう捉えているのか、を確認しましょう。自分の推測だけでことの重大さを決めつけたり対応策を提案すると、相手にとっては「状況を理解せず、都合のいいように一方的」となりかねません。相手の話をしっかり聴くことが大切です。
「私の不手際で、ご迷惑をおかけしました」「私の配慮が足らず、申し訳ございません」など、責任逃れをせず誠意を持って対応することが分かる言葉が自然と出れば、相手も少しずつ落ち着きを取り戻すでしょう。
声のトーンや語調
口調や態度も重要な要素です。言葉は丁寧でも、表情や口調が横柄だったり事務的だったりすると、却って相手の怒りや失望を増してしまいます。気持ちがこもっていれば、自然とふさわしいトーンや語調になるでしょう。
また、できればメールで済ませるよりも電話で、電話で済ませるよりも直接会って謝罪する方が、気持ちが伝わります。
今後の対応について話す
言葉で謝るだけではなく、どう対応するか、どのように善後策を講じるか、についても誠意を持って話し合いや提案をし、積極的に動きましょう。
ビジネスシーンでの謝罪の言葉
よく使われる言葉を例文で確認しておきましょう。
1:申し訳ございません
ビジネスシーンでよく使われる謝罪の言葉です。
2:心よりお詫び申し上げます
「お詫びいたします」より謝罪の気持ちが強いことが、「心より」や「申し上げます」に表れています。
3:謝罪の言葉もございません
とても重い謝罪の言葉です。謝罪の最上級、という人もいます。どんなにお詫びをしてもし尽くせない、という気持ちを表したいときに使われます。だからといって「謝罪の言葉もございません」のひと言で謝罪が済むわけではありません。充分に問題点やかけた迷惑についてお詫びをした上で、添えましょう。
事の重大さを痛感して出てくる言葉ですので、その気持ちがこもっていてこそ相手に伝わります。軽々しく言ったり、連発したりしないようにしましょう。
最後に
謝る場面は、お互いの立場が随分違う場面でもあります。あなたの「常識」「あたりまえ」が、相手にとって「非常識」「あたりまえじゃない」ということも、珍しいことではありません。
立場の違いを理解して、相手の気持ちに想像力をはたらかせて、心を込めて謝りましょう。ピンチはチャンス。信頼関係を深めたり、今後のミスを防ぐ対策を練る機会でもあるので、くよくよせずに成長の糧と思って進みましょう。
監修
米山万由美(よねやま・まゆみ)
キャリアコンサルタント
アンガーマネジメントファシリテーター(R)
組織の1on1面談や人財活用コンサルタント、研修講師として活動。楽しくはたらき楽しく暮らすを応援。趣味はチェロ演奏。
ライター所属:京都メディアライン
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