「工程表」と「行程表」のニュアンスの違い
「行程」には、「工程」と同様に「行程表」という熟語があります。
辞書では、「行程表」は「ロードマップ」と同じ意味の言葉だと記されています。「ロードマップ」の具体的な意味は、以下の通りです。
【行程表】こうてい-ひょう
→ロードマップ2【ロード・マップ(road map)】
1.自動車を運転する者のための道路地図。ドライブマップ。
2.ある作業をするときの手順表。行程表。「紛争解決の—を示す」
3.企業が将来発表する予定の製品を時間順に並べた図表。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「ロードマップ」には、「ある作業をするときの手順表」という意味があります。物事の手順を表す点では、「行程表」は「工程表」と似た意味を持つ言葉です。
ニュアンスの違いがあるとすれば、「工程表」は主に明確なゴールを持つ「作業」を対象にする点にあります。
例えば、復興庁が発表している復興施策のスケジュールの表記は「工程表」です。これは、いつまでにどのような形に街を復興するのか、明確なゴールが定まっているからだと考えられます。
ただし、両者の使い分けの線引きは難しく、場合によっては「行程表」が適したシーンもあります。ビジネスなどで用いるときはニュアンスの違いを確認し、不安な場合は周囲に相談しながら表を作成していきましょう。
「工程」を使った例文
「工程」の意味や「行程」とのニュアンスの違いをふまえ、ここからは具体的な例文について確認していきましょう。仕事や作業を対象とした「工程」は、ビジネスシーンで用いられる機会が多い言葉です。
「仕事を進めていく順序を示す」という点では、ものづくりの分野だけでなく、さまざまな業界に適しています。例文を参考に、日々の会話やメールなどで活用してみてください。
・新製品完成までの工程について、ご説明いたします。
・すべての工程を1人で担当するなんて、無理な話だよ。
・工場見学では、製品ができるまでの一連の工程を見学できた。
・近年は、工程の大半が機械化されているらしい。
・完成までにこれほどの工程を必要とするとは、想像できなかった。
・多くの工程を経てプロジェクトが成り立つことを実感した。
・各工程を担う専門家たちの力があるからこそ、イベントが成功したと思っている。
「工程」の類語や言い換え表現
「工程」には、以下のような類語や言い換え表現があります。
ビジネスシーンや日常生活では、場面に応じた言葉の選択が必要です。なるべく多くの語句や使い方を知っておけば、表現の幅が広がります。ここでは、それぞれの正しい意味とともに、例文などをご紹介します。
日程
「日程」とは、行事や仕事などの予定のことです。プライベートでの1日、または毎日の予定なども意味します。それらの予定を決めることは「日程をたてる」のように言い表します。具体的な使用例は、以下の通りです。
・申し訳ないのですがその日は日程が立て込んでおりまして、別の日でお願いできますでしょうか。
・参加者それぞれの都合がつかず、ようやく会議の日程が決定した。
・友人と旅行の日程について相談した。
・希望者多数の場合は、日程調整を行います。
・イベントの日程に関しましては、添付資料の2ページ目をご確認ください。
・お誘いいただきありがとうございます。日程を確認し、後日また連絡いたします。
スケジュール
スケジュール(schedule)とは、英語で予定のことです。時間割や予定表、日程表なども意味します。また、予定や日程を組むことは「スケジューリング(scheduling)」と言い表します。日常生活では、シーンに応じて以下のように活用しましょう。
・当日になって慌てないように、イベントのスケジュールをもう一度確認した。
・交通機関のタイムテーブルを確認したうえでスケジュールを組むと、旅行中も効率的に移動できる。
・あいにく該当期間はスケジュールに空きがなく、業務を担当することができません。
・ミーティングの日程が以下のように決定しましたので、スケジュールの調整をお願いいたします。
・先方にスケジュール調整の連絡を入れておいてください。
・ネットで注文していた新しいスケジュール帳が届いた。
プログラム
「プログラム」は、物事の進行状態についての予定や計画を意味する言葉です。「工程」と異なり、演劇や音楽界などの演目や曲名なども意味します。
また、コンピューターへ指示する言語や形式も「プログラム」のひとつです。複数の意味を持つ「プログラム」という言葉は、以下のようにさまざまなシーンで用いられます。
・新人教育のプログラムには、実践的な取り組みが含まれている。
・事業拡大に向け新たなプログラムを立ち上げた。
・研修プログラムの管理を担当することになった。
・事前に告知されたプログラムによると、好きな曲が演奏されるのは後半のようだ。
・発表会のプログラムを確認したところ、彼の出番は8番目らしい。
・彼はコンピュータープログラムの作成を担当している。
・新しく開発されたプログラムを試してみた。
段取り
「段取り」も、「工程」のように順序や手順を意味します。「工程」との違いは、仕事に関わらず、さまざまな物事を対象にしている点です。
また「段取り」には、「芝居の展開や話の組み立てのしかた」という意味もあります。意味合いが広いぶん、「工程」に比べ多様なシーンに適した語句といえるでしょう。
・交渉を重ねた結果、ようやく担当者と会う段取りがついた。
・至急、出荷の段取りを開始します。
・パーティー当日まで、いろいろな段取りが必要だ。
・参加者の都合にあわせて会議を延期できるよう、なんとか段取りをつけた。
・その日の段取りはすべて頭に入っているから、心配しなくても大丈夫。
・その日は会議の司会を担当するのですが、当日の段取りについて確認してもいいですか。
「工程」の正しい意味を知り「行程」と上手に使い分けよう
仕事や作業を進めていく順序や段階は、「工程」と言い表されます。「工程管理」や「工程表」などの熟語があるように、「工程」はビジネスシーンでの使用機会が多い言葉です。
同じ読み方の語句に「行程」がありますが、こちらには道のりや過程といった意味が含まれます。「工程」とは言葉のニュアンスが若干異なるため、ビジネスで使用する際はどちらが適しているのか確認するのがおすすめです。
また「工程」には、さまざまな類語や言い換え表現があります。それらの意味や例文も参考にしながら、日常生活やビジネスシーンで上手に使い分けていきましょう。
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