お茶目の正しい意味・由来は?
お茶目という言葉は知っていても、意味や使い方が合っているか自信がない人もいるのではないでしょうか。言葉の正しい意味と、由来を解説します。
無邪気で憎めない様子を指す
「茶目」は無邪気で愛らしく、天真爛漫で憎めない様子を表す言葉です。子どものような純真さや、人を和ませる軽やかな雰囲気を持つ人物・または行動を指します。
ちゃ‐め【茶目】
[名・形動]無邪気な子供っぽいいたずらをすること。また、そのような人や、そのさま。おちゃめ。「—な娘」
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
お茶目は茶目に丁寧語の「お」をつけたもので、意味は同じです。「あの人は意外にお茶目だよ」「お茶目な性格ですね」など、日常会話にも登場しますよね。
またお茶目には、相手に対する好意的な印象が含まれています。いたずらやふざけた振る舞いをしていても、それが子どものように無邪気で、周囲を楽しませていることを表現する際に適した言葉です。ただ、「子供っぽい」・「いたずら」というニュアンスがあるため、オフィシャルな場や目上の人に対して使用するのは避けたほうが無難でしょう。
「茶」におどけるという意味がある
お茶目の「茶」は、飲むお茶のことではありません。お茶目の由来には諸説ありますが、おどける、ふざけるなどを意味する「茶る(ちゃる)」という動詞が関係しているといわれています。
「茶」という漢字を含む言葉には、この「茶る」を由来とし、おどける・ふざけるといったニュアンスを持つものがいくつかあります。お茶目も、そのひとつなのです。
「目」は「め」の当て字で、「め」はそれらしく見せかけたり、振る舞うことなどの意味がある「めかす」の略とされています。おどける意味の「茶る」と「めかす」が合わさって、茶目となったと考えられています。
ちゃ・る【茶る】
[動ラ四]《「茶」の動詞化》こっけいな言動をする。ふざける。おどける。
「与八様とした事が、余り―・って下さんすな」〈浄・難波丸金鶏〉
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
「茶」を使ったほかの言葉
お茶目のほかにも、茶を使った言葉はたくさんあります。本記事では「茶化す」「茶々を入れる」「茶番」の3つについて、意味や使い方を紹介します。
茶化す
「茶化す(ちゃかす)」は、真面目な話題や状況を、冗談めかして軽くする行為を指します。たとえば、友人が真剣な相談をしているときに、「まあまあ、そんなに深刻に考えなくても」と軽い調子で返すような場面で使われます。
茶化すの由来は、飲むお茶です。かつてお茶は高級品で、特別なもてなしの象徴でした。お茶を出された人は、出してくれた人に対して「自分を大切に扱ってくれている」と感じ、安心できたのです。
一方もてなす側は、特に大切な客でなくてもお茶さえ出しておけば、相手を満足させられます。こうして相手を軽んじる心をごまかす様子や、真面目に対応しない様子を〝茶化す〟と表現するようになったとされています。
ちゃ‐か・す【茶化す】
[動サ五(四)]《「ちゃ」は「ちゃらつく」などの「ちゃ」と同じか。「茶化す」は当て字》
1 まじめな話を冗談めかしてしまう。茶にする。「―・さないでまじめに聞きなさい」
2 一杯くわせる。だます。
「人魚は人を―・すなり」〈風来六部集・放屁論後編〉
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
茶々を入れる
「茶々を入れる(ちゃちゃをいれる)」は、他人の会話や行動に横から口を挟み、邪魔をする行為のことです。たとえば、真剣な商談中に場違いな冗談を言って雰囲気を壊したり、勉強に集中している人に話しかけたりする場面で使われます。
由来は「茶化す」と同様、飲むお茶といわれています。お茶は仕事の合間に飲むことから、連続する物事に割り込む意味があり、人の行動や会話を妨害する様子を表す言葉につながったと考えられているそうです。
茶々を入れるの類似表現には「横槍を入れる」「水を差す」などがあります。
茶茶ちゃちゃを入い・れる
じゃまをする。水をさす。「まとまりかけた話に―・れる」
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
茶番
「茶番(ちゃばん)」は「見え透いたばかばかしい行為」や「お粗末な芝居」という意味で、皮肉を込めて使われる言葉です。一例ですが、最初から結果が決まっていることを、多数決で正当な決定に見せかけるといった組織の行為に対し「茶番だ」と批判することがあります。
茶番の由来は、歌舞伎にあります。茶番とは本来、客に茶を出す係のことでした。江戸時代の歌舞伎役者の楽屋では、下積み中の役者たちが芝居と同時に茶の給仕も行っており、彼らもまた「茶番」と呼ばれていました。この茶番たちが、茶を出す際に行っていた滑稽な芝居や寸劇が評判となり、「茶番狂言」と言われるようになったのだそう。
そこから、下手で取るに足らない芝居を「茶番劇」と表すようになり、略して「茶番」になったとされています。
ちゃ‐ばん【茶番】
1 客のために茶の用意や給仕をする者。
2 こっけいな即興寸劇。江戸歌舞伎の楽屋内で発生し、18世紀中ごろ一般に広まった。口上茶番と立ち茶番とがある。茶番狂言。
3 底の見えすいた、下手な芝居。ばかげた振る舞い。茶番劇。「当人は真剣でも傍はたから見ればとんだ茶番だ」
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
お茶目の類語もチェック
お茶目には、似たような意味の言葉がいくつかあります。代表的な類語「ユニーク」と「ひょうきん」について、お茶目との共通点や違いを解説します。
ユニーク
「ユニーク」は、ほかにはない特徴や独特な様子を指す言葉です。誰も思いつかないようなアイデアを出す人を「ユニークな発想の持ち主」と表現することがあります。
ユニークには、お茶目のようにおどける・ふざけるといった意味はありません。しかし独特な発言や態度が、周囲の人にとっては面白かったり場を和ませるケースもあるため、お茶目の類語とされています。
また、お茶目はおおむね好意的な意味で使われますが、ユニークには「変わっている人」という、やや否定的なニュアンスもあります。褒め言葉のつもりでも、相手によってはそのように伝わらない可能性もあるため、注意が必要です。
ユニーク(unique)
[形動]他に類を見ないさま。独特なさま。「ユニークな発想」「ユニークな友人」「重複のないユニークな項目ID」
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
ひょうきん
「ひょうきん」は、気軽におどけたりして周囲を明るくする様子を指します。クラスの中で冗談を言って、いつも皆を笑わせるような生徒は「ひょうきん者」の代表例です。
周囲を和ませる点において、お茶目とひょうきんはよく似た言葉といえます。ひょうきんの由来は、中国語の「剽軽(ひょうけい)」です。剽軽は「身軽で素早い」の意で、転じて日本では気軽にふざける様子を表すようになったとされています。
ひょうきんには軽率・軽薄なイメージもあり、無邪気でかわいらしい様子を表すお茶目とは、ややニュアンスが異なります。
ひょう‐きん〔ヘウ‐〕【×剽▽軽】
[名・形動]《「きん(軽)」は唐音》気軽でおどけた感じのすること。また、そのさま。「剽軽なしぐさ」「剽軽者」
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
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