クロス取引(つなぎ売り)のやり方は?
林先生:まず、権利確定日の寄り付きまでに、現物買いと、信用新規売り(空売り)を同値で注文を入れます。
とめちゃん:同値で注文とは?
林先生:クロス取引の条件として、不正取引とみなされないために、同数、同値で注文しないといけません。難しく考えず、寄り成りで注文すれば大丈夫ですよ。
とめちゃん:はい!
林先生:そして、権利落ち日、つまり、権利日の翌日に、“現渡(げんわたし)”をして信用売りの返済をすればOKです。
とめちゃん:現渡って?
林先生:新規売りで証券会社に借りている株を、自分が保有している現物株で、返済することです。
とめちゃん:なるほど。
林先生:そうすれば、株主優待の権利を得られて、かつ、権利落ち日に株価が急落しても、自分の現物保有株は利益が出ているので、相殺できます。
とめちゃん:めちゃくちゃいいですね。でも、なにか落とし穴があるんじゃないですか?
林先生:気をつける点として、信用売りをするときに、制度信用ではなく一般信用を使うことがポイントです。
とめちゃん:制度信用と一般信用は何が違うのでしたっけ?
林先生:一般信用は、各証券会社が抱えている株ですが、制度信用の場合、株不足になったときに逆日歩(ぎゃくひぶ)が生じます。逆日歩がかかるか否かが大きな違いです。
とめちゃん:逆日歩ってどういうデメリットがありますか?
林先生:信用取引は、現物取引と違って、証券会社にお金や株を借りるので、金利がかかりますよね。逆日歩がつくと、そこに品貸料もかかってきます。
とめちゃん:そういえば、空売り記事のときに教えていただきましたね。
林先生:みなさまおなじみのすかいらーくホールディングス(3197)の株主優待がすごく人気なのですが、2019年6月の権利日に逆日歩がなんと37.2円もついたことがあるんですよ。
とめちゃん:37.2円?
林先生:1株あたり37.2円なので、100株で3720円ですね。当時3,000円分の株主優待券だったそうで、つまり、3,000円分の株主優待券を得るために、3,720円以上のコストがかかってしまったということです。
とめちゃん:それは、つらい。あまり意味がないですね。
林先生:そして逆日歩は、当日にならないと、いくらつくかわからないのです。ですから、一般信用で新規売りをしたほうが安心です。
とめちゃん:そういう落とし穴があったのですね。
林先生:ただ、みなさんご存じなので、一般信用を利用するため、権利日当日に一般信用分の株が売り切れになっていることも。
とめちゃん:そんなことが起きるのですか? では、早めに一般信用で売り建てておく必要があるのですね。
林先生:人気な銘柄はそうですね。しかし、株を借りている期間が長いと、金利が毎日かかってくるので、その損益分岐点も計算しないとです。
とめちゃん:やっぱり、楽していい思いばかりはできないのですね(笑)。