「暗中模索」とは手がかりがないまま探し求めること
「暗中模索」は「あんちゅうもさく」と読み、一つも手がかりのない状態で探し求めるという意味の四字熟語です。
【暗中模索:あんちゅうもさく】
暗やみの中で、手さぐりしてあれこれ探し求めること。
手掛かりのないまま、いろいろなことを試みること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「暗中模索」の「暗中」は比喩として使われている言葉ですが、実際に真っ暗闇の中で探し物をしても、見つけるのは簡単ではありません。感覚的にもわかりやすい言葉といえるでしょう。
なんの見通しも立っていない中で解決策を探すというシチュエーションは、ビジネスはもちろんのこと、政治や経済、人生全般でもよくあることです。さまざまな場面で使われる言葉といえます。
「模」は常用外漢字「摸」の代用字
「暗中模索」の「模」の正しい表記は「摸」です。しかし「摸」は常用外漢字であるため、代用字にあたる「模」を使ってもよいことになり、現在では通常は「暗中模索」と表記されています。
常用外漢字の「摸」が使われていたのは、もともと中国の唐の歴史書『隋唐嘉話』の中に出てくる語句であったためです。由来については続いての文章でくわしく説明しましょう。
「暗中模索」の由来は唐の歴史書『隋唐嘉話』
「暗中模索」の由来は中国の唐の時代に書かれた歴史書です。この中に唐の時代の政治家・文学者であった許敬宗(きょけいそう)をいさめる言葉が記載されていて、その故事がもとになったとされています。
許敬宗は優れた才能により出世して権力を握った人物ですが、傲慢な性格の持ち主で、周囲にいる人間の名前を一切覚えようとしなかったとされています。
許敬宗をいさめようとした人が「もしも相手が身分の高い人であったら、あなたも暗中を模索するように必死になって思い出そうとするでしょう」という内容の発言をしました。
それが「暗中摸索著亦可識之」という言葉です。この故事から「暗中模索」という言葉が誕生したとされています。
「暗中模索」の使い方と例文
「暗中模索」はさまざまな場面で使われる言葉です。例文をご紹介しましょう。
【例文】
・なんの見通しもないまま【暗中模索】ばかりしていても、時間の無駄です。外部から専門のアドバイザーを招き入れましょう。
・もしもあなたが適切な助言をしてくれなかったならば、私はずっと【暗中模索】の状態のままだったでしょう。
・連続殺人事件の手がかりは何一つ見つかっておらず【暗中模索】が続いているが、現場付近の聞き込みを徹底するなど捜査の見直しを行って、なんとしても犯人を見つけ出さなければならない。
「暗中模索」の3つの類義語
「暗中模索」にはいくつかの類義語があります。「試行錯誤」「五里霧中」「悪戦苦闘」などです。「試行錯誤」は新たな試みをするときに使われる言葉、「五里霧中」は先が見通せないときに使われる言葉、「悪戦苦闘」は困難な状況の中で努力するときに使われる言葉です。
この3つの類義語の意味を解説して、さらに使い方と例文をご紹介しましょう。
試行錯誤
「試行錯誤」とは新しいことに挑むときに、さまざまな方法を繰り返し試みることによって、失敗を重ねながら解決方法を模索していくという意味です。「試行錯誤」という言葉はビジネス、学問や研究、スポーツなど、さまざまな場面で使われています。
【例文】
・【試行錯誤】した結果、スマホで入金・出金・送金が完結する金融サービスを完成させることができました。
・スポーツの練習で【試行錯誤】を大切にしているのは、その過程で実力を磨けるからです。
五里霧中
「五里霧中」は物事の判断がつかず、どうしていいか迷うことという意味の四字熟語です。「霧」ではなく、「夢」という漢字を使った「五里夢中」は誤りのため注意してください。
【例文】
・部署内の合理化を進めるようにとの指示があったが、どこから手をつけていいのかわからず、【五里霧中】の状態です。
・なんのために研究しているのか目的を見失ってしまい、【五里霧中】をさまよっているような気がします。