契印
「契印」は「けいいん」と読みます。複数枚で成り立っている契約書が、連続していることをあらわすために押す印のこと。文書が抜き取られたり、差し替えられたりするのを防ぐためのものです。ページの見開き部分に、両ページにまたがるようにして押します。
割印
「割印」は、「契印」と混同しがちな言葉です。読み方は、「わりいん」。原本と写しなど、2部以上の書類が同じであることや、関連していることをあらわすためのものです。書類同士を少しずらして重ね、両書類にまたがるようにして押します。
捨印
「捨印」の読みは、「すていん」。訂正される場合を考えて、あらかじめ書類の欄外に印鑑を押しておくことです。書類に間違いがあった場合に、この「捨印」が訂正印としての役割を持ちます。
押印を求める手続きが見直されている?
日本に深く根付いてきた「押印」文化。これまで、「押印」がないと書類の効力がないことが多く、さまざまな場面で「押印」を求められてきました。しかし近年、その「押印」文化が見直されているのです。
なぜ見直されているのか?
内閣府によれば、「押印」の必要性を見直すことになったのは、テレワーク推進や、デジタル時代に向けた規制度の見直しという背景があるようです。
令和2年7月に閣議決定された「規制改革実施計画」。これは、デジタル化が進むに伴い、規制や制度について改革をするもの。その中で内閣は、各府省に対し、国民や事業者等に対して、「押印」を求めているものや、紙の書面の作成・提出等を求めているもの、対面での手続きを求めているものについて、順次見直しを行っていくこと、と明記しています。
こうした内閣の取り決めにより、行政手続きのみならず、民間手続きにおいても、「押印」の廃止が進むことになったのです。
押印廃止、押印省略とは?
「押印」文化の見直しに伴い、耳にするようになったのが「押印廃止」や「押印省略」という言葉。「押印廃止」は、「押印」を不要とすることで、「押印省略」は、「押印」を省略することです。「押印省略」の場合は、「押印」を省略する代わりに、自署のみで申請が可能になる場合が多いようです。
すでに説明したように、内閣による取り決めに伴い、各府省は「押印」の制度を見直しすることになりました。例えば、厚生労働省は、年金や保険の申請書類においても、一部を除き、「押印」を廃止とすることに。また、国税庁は、令和3年度より、年末調整関係や確定申告関係の書類についても、「押印」を不要にすることとしました。
ただし、重要な契約書などに関しては、引き続き「押印」を求められる場合もあります。また、手続きによってさまざまなパターンがあるということも注意したいところ。詳細については行政のホームページなどで確認するようにしてくださいね。
押印をするときの注意点
押印箇所をよく確認する
押印の際、まず気を付けたいのは、間違った場所に押印しないようにすること。名前の横に押印するのが一般的です。押印が必要な場所には、「印」という文字が書いてあることも多いので、確認してみてくださいね。また、よくあるミスが、契約書などで、相手方が押印する場所に間違えて押印してしまうこと。双方が押印をする書類などは、特に気をつけましょう。
印影がはっきり分かるようにする
押印する際は、必ず印影がはっきりわかるように押すようにしましょう。金融機関や公的機関では、かすみやにじみなどで印影が分からないと、受け付けてもらえないこともありますので、注意が必要です。心配な時は、一度他の紙でテストしてみるのも良いでしょう。また、裏移りすることもあるので、書類の下に何か敷いてから押すと安心ですよ。
押印漏れに気を付ける
押印が必要な書類が複数枚あることも。この場合、押印漏れが発生しやすいので、気を付けたいところ。押印漏れがあると、書類のやり取りが何度も発生して、相手方に手間をかけてしまうので、印象もあまりよくないでしょう。最後に、押印を忘れているところはないか、書類全体を確認する習慣をつけると、漏れが防ぎやすくなりますよ。
押印の英語表現は?
「押印」の英語は「seal」です。「押印する」という動詞になると、「put one’s seal」、もしくは「affix one’s seal」という英語表現に。「署名」を意味する「sign」と合わせて、「sign and seal」という表現になります。なお、印鑑にあまりなじみがない文化の国もあるため、英語で押印を求める場合は、理由も説明した方が親切かもしれません。
最後に
社会全体で一気に進んだ脱ハンコの流れ。それに伴い、ニュースや普段のビジネスシーンでも、ハンコに関する言葉をよく聞くようになりました。「押印」や「捺印」という言葉に出会った時に、しっかりとその違いを理解しておいて、正確に対応できるようにしておきたいですね。
執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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