猜疑心(さいぎしん)
「猜疑心(さいぎしん)」とは、人の言動や行動を疑う気持ちのことです。「猜疑心」の「猜」は「ねたむ」「疑う」という意味があります。
「猜疑心が強い」という使い方をするのが一般的です。特に疑う気持ちが強い人のことを、「猜疑心の塊」と表現することもあります。
【例文】
・課長は【猜疑心】が強く、いつも部下の行動を監視している
・彼の振る舞いは周囲に【猜疑心】を抱かせている
・彼は誰に対しても心を開かず、【猜疑心】の塊のようだ
警戒心(けいかいしん)
「警戒心(けいかいしん)」とは、危険や外からの攻撃に対し、自分の身を守ろうとする気持ちのことです。
疑う気持ちが強いという点で「疑心暗鬼」と似ており、「警戒心」はさらに自分を守ろうとする意味合いが加わった言葉です。慎重で用心深いというニュアンスもあります。
【例文】
・彼女は【警戒心】が強く、誰からの誘いにも応じようとしない
・危険な場所に行くときは、十分な【警戒心】を持たなければならない
・彼は【警戒心】が強いため、怪しい話に乗ることはない
不信感(ふしんかん)
「不信感(ふしんかん)」とは、相手を信用していない気持ちのことです。「不信感が強い」「不信感がつのる」といった使い方をします。「疑心暗鬼」はすべてのことに疑いを持つ気持ちを表す言葉ですが、「不信感」は特定の人や事柄に対して使う場合が多いでしょう。
【例文】
・彼は今の政治に【不信感】を持っているため、選挙ではいつも野党に投票している
・彼女は彼のいい加減な言動に対し、【不信感】をつのらせている
・相手の説明が矛盾していたため、彼は【不信感】を抱いてしまった
【目次】
「疑心暗鬼」の対義語
「疑心暗鬼」にはいくつかの対義語があります。いかなることも信頼しているという意味の「安心立命」や、穏やかな心という意味の「明鏡止水」などです。先入観やとらわれの心を持たないという意味の「虚心坦懐(きょしんたんかい)」も対義語にあたります。
ここでは、「疑心暗鬼」の対義語として「安心立命」と「明鏡止水」を見ていきましょう。
安心立命(あんしんりつめい)
「安心立命(あんしんりつめい)」とは、心を安らかにしてどのようなことにも動揺しないという意味です。「安心」は仏教用語で、仏に帰依して心を乱さないことを表し、「立命」は儒教に由来する言葉で、天命に任せるという意味があります。
「いかなるときにもすべてを信頼する」という意味合いで、すべてに疑いの気持ちがある「疑心暗鬼」とは真逆の言葉です。
【例文】
・【安心立命】の境地になるには、知識や教養を身につけることも必要である
明鏡止水(めいきょうしすい)
「明鏡止水(めいきょうしすい)」とは、邪念がなく落ち着いて静かな心境という意味です。「明鏡」は一点の曇りもない鏡のことで、「止水」は静止している水を表します。
疑いの気持ちから心が乱れている様子を示す「疑心暗鬼」とは、正反対の状態を表している言葉です。
【例文】
・試合に勝つには、【明鏡止水】の状態にならなければならない
まとめ
「疑心暗鬼」は一度疑い始めると、ほかのなんでもないことでも怪しいと感じる心理状態のことです。中国の故事が由来とされています。「疑心暗鬼になる」、「疑心暗鬼に陥る」といった使い方が一般的です。「猜疑心」や「不信感」など類語も多いため、状況により使い分けるとよいでしょう。
「明鏡止水」など対義語となる四字熟語も覚えておけば、表現の幅が広がります。
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