普段はそんなにネガティブ思考でなくても、仕事や人間関係でヘコんでしまうことは誰でもよくあること。ヘコむことがあると、そればかりを考えてしまい、なかなか抜け出せなかたりすることも。そんなとき、ヘコみにくい強いメンタルを作りたいと思いますよね。
いいこともあれば、悪いこともある。人生は喜怒哀楽であるのなら、気持ちが「ヘコんでしまう」出来事が起こるのも、生きていることのあかしです。
また、大きな問題が起きて悩み込むほどではなくても、仕事で少しうまくいかなかったり、友人とちょっと気まずい状態になったりなど、現実が自分の思いにそぐわなかったり、他人と意見にへだたりを感じたりすることはごくごく日常茶飯事。
そうした日常のあり方を理解したうえで、どのようにすれば、求めるべき自己肯定感にたどり着くことができるのか? ヘコまされるような出来事に囲まれる毎日の中で、いかに前向きな自分を持ち続けていくことができるのか?
こうした疑問に1つの答えを出してくれるのが、その名も「自己肯定理論」(self-affirmation theory)です。
私の在籍するスタンフォード大学でも屈指の業績を誇る社会心理学者、クロード・スティール教授が提唱してから、さまざまな研究が積み重ねられてきました。
中心となる考えは、「ヘコみの外で自己肯定」することです。どういうことだと思いますか?
ディフェンス型の心の適応力にご用心
まずは、これまでの心理学で解き明かされてきた人間心理の基本的なメカニズムをいくつか見ていきましょう。1つ目は、人間の「心の適応力」です。
私たちの日々の生活は、多かれ少なかれ、大なり小なり、自分をヘコましてしまうような出来事であふれかえっています。
勉強や仕事で思うような成果が出ない。自分の目標に邪魔が入る。病気になる。自分の考えを覆すようなニュースを目にする。反対意見に出くわす。学校や仕事場で怒られる。友人や恋愛関係が思うようにいかない。家族関係がこじれる。
そうした自分の心に対する「脅威」に、なんとかうまく「適応」していくことで私たちは自分自身の心を保っているのです。
私たちの心の適応には代表的な2つのパターンがあります。1つは、心への脅威をそのまま受け入れ自分の態度や行動を改めるやり方。
例えば、健康診断の結果が思いのほか悪かったとき、自分の生活習慣を改善する。これは、「予測より悪い健康診断」という心の脅威をそのままに受け入れて、自分の生活態度や行動のほうを変える適応の仕方です。