千紫万紅とは?
千紫万紅は「せんしばんこう」と読みます。さまざまな花の色や、色とりどりに咲いている花を表す言葉です。「千」や「万」は数の多いことを表現し、「紫」や「紅」はさまざまな色があることを意味しています。
また、千紫万紅は、花とは関係なく色鮮やかな様子を表すときにも使われます。
【千紫万紅】
さまざまの色。また、色とりどりの花の咲き乱れていること。千紅万紫。
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
ここでは、千紫万紅の意味や言葉の由来についてご紹介します。
さまざまな色の花が咲いている様子
千紫万紅は、さまざまな色の花が咲き乱れているという意味です。「千」と「万」で数が非常に多いことを表します。
ほかにも、千差万別(せんさばんべつ)や千変万化(せんぺんばんか)など、「千」と「万」を使う四字熟語は豊富です。本当に千や万もの数があるのではなく、それほど数が多いことを表現しています。
「紫」と「紅」は、色鮮やかな様子を表しています。紫や紅以外にも、さまざまな色があるという意味です。
彩り豊かな様子を形容する
千紫万紅は花に限らず、彩り豊かな場面を表現したいときに広く使われます。一例として、次のような使い方です。
使用例
・彼の絵は千紫万紅の色使いをするのが特徴だ
・パーティー会場は千紫万紅のように美しい装いの人であふれている
「紫」や「紅」は、美しいものを例える四字熟語によく使われています。自然の景観が澄み切って美しいという意味の山紫水明(さんしすいめい)や、人が手を加えず自然のままの美しさという意味の花紅柳緑(かこうりゅうりょく)などがその例です。
言葉の由来
千紫万紅は中国の古い詩集である『中華若木詩抄(ちゅうかじゃくぼくししょう)』に出てくる言葉です。室町期の京都で著された書物で、中国や日本の僧侶の詩を収録しています。
ただし、千紫万紅の言葉が誕生した由来は不明です。そのため、さまざまな花の様子を表現する漢字を、意味を考えながらひとつひとつ組み合わせて作られたのではないかと推測されています。
千紫万紅の例文
千紫万紅の使い方を、例文で見てみましょう。
例文
・さまざまな種を植えたので、来年の今頃は千紫万紅の庭になるだろう
・着物の展示会ではさまざまな着物を着た人が来場し、まさに千紫万紅の眺めだった
・隣家はガーデニングが趣味で、庭は季節ごとにいろいろな花が咲き乱れてまさに千紫万紅である
・あのデザイナーが手がけるドレスは華やかな色使いで千紫万紅と言われている
・成人式は着飾った参加者が集まり、千紫万紅のような賑わいだった
・イベントには数多くの女性がドレスアップして参加したため、千紫万紅の光景となった
・ここは冬は寂しいところだが、春になると千紫万紅の景色になる
千紫万紅の類語
千紫万紅にはいくつもの類語があります。代表的なのは「百花繚乱」で、千紫万紅と同じく花が咲き乱れることを表した言葉です。ほかにも「百花斉放」や「百家争鳴」などがあり、どれもよく似た言葉ですが、それぞれ微妙に意味合いが異なります。
「千紅万紫」という言葉もありますが、こちらは文字の配列を変えただけの同義語です。
ここでは千紫万紅とよく似た言葉について、ご紹介します。
百花繚乱
百花繚乱は「ひゃっかりょうらん」と読みます。「百花」は多種多様という意味があり、「繚乱」は咲き乱れるという意味です。
これらを合わせ、百花繚乱は「さまざまな花が咲き乱れる」という意味があります。ほかにも「優秀な人物がたくさん輩出され、一時的に優れた業績や作品が多く残される」という意味がありますが、千紫万紅にはこのような意味はありません。
例文
・近年のファッション業界は才能のある若手デザイナーが数多く登場し、百花繚乱と言われている
・その植物園では珍しい花を数多く栽培しており、春になると百花繚乱の眺めが楽しめる
百花斉放
百花斉放は「ひゃっかせいほう」と読みます。百花は多種多様な花、斉放は一斉に開花するという意味です。
もともとは花が一斉に咲くことを表す言葉ですが、ほかにも学問や文化、芸術活動などが自由で活発に行われるという意味で使われます。
百花斉放は次に紹介する百家争鳴と合わせ、中国共産党が唱えたスローガンとして有名な言葉です。
例文
・連休には各地でイベントが行われ、さまざまな催しが百花斉放に行われた
・その学校は自由な校風で百花斉放が促され、生徒たちの自主性が育まれている
百家争鳴
百家争鳴は「ひゃっかそうめい」と読みます。「百家」はさまざまな分野の学者という意味で、「争鳴」は自由、活発に論争し合うという意味です。
この組み合わせにより、「多くの学者や専門家が立場の違いにかかわらず、気兼ねなく自由に議論や活動をすること」という意味があります。
「百家」を「百花」と間違えないようにしましょう。
例文
・先日の選挙戦では、各党が百家争鳴に意見を戦わせていた
・会議では百家争鳴でさまざまなアイデアが提案された
千紅万紫
千紅万紫は「せんこうばんし」と読みます。「千紫万紅」の「紫」と「紅」の位置を入れ替えただけであり、意味は「千紫万紅」と同じです。
ちなみに、「万紫千紅」という四字熟語もあります。「ばんしせんこう」と読みます。千紫万紅の「千」と「万」の位置を入れ替えただけで、こちらも意味は変わりません。
例文
・この地域では季節ごとに異なる千紅万紫の眺めが見られる
・庭にはさまざまな種類の花が植えられ、春になると部屋からは千紅万紫の風景が観賞できる
千紫万紅の意味を正しく理解しよう
千紫万紅はさまざまな花が咲き乱れている様子や、彩り豊かな様子を表現する言葉です。数が多いことを表す言葉と、さまざまな色があることを表す言葉を組み合わせています。
千紫万紅にはよく似た言葉も多いため、合わせて覚えておくと会話などで豊かな表現ができるでしょう。例文も参考にして、千紫万紅の意味を正しく理解してください。
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