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EDUCATION 教育現場より

2022.09.20

小学校受験、「合格」「不合格」に関係なく 〝子供を伸ばす早期教育〟とは?【お受験ママの相談室 vol.3】

 

親が子供に○×をつける試験官になってはいけない

——文字や数字以外に、なんでもいいので子供の興味のあることを深掘りする経験ができると、その後の「主体的な学び」に繋がるということもありますよね。

江藤:男の子は特定の事柄に興味を強く示す子が比較的多いので、博物館に行くなど一緒に深掘りするのはとても良いと思います。一方で、女の子など、そういった傾向の少ないお子様の場合は、逆に全体観を捉えることが得意だったりするので、ミニお母さん・ミニお父さんになってもらったりして、家のいろんなことを手伝ってもらうのも良い方法だと思います。生活全般に対しての好奇心を伸ばし、全体を見渡す力を伸ばすことにもつながります。

藤田:どんな場合にも、一番大切なのは、「親子の情緒的な結びつき」、これに尽きると思います。お子様の情緒や感情に寄り添うことが大事です。親が子のことを一番大事だと思っていることが伝わることですね。

お受験に取り組んでいますと、父母が、よもや試験官のようになってしまい、子供への◯×をつける存在になってしまうことがあります。これは良くありませんよね。

何より「子供が自分でできるようになっていく力があることを信じてあげること」が大切です。良くも悪くも、親の言葉は子供に影響します。「あなたはこういうところがあって、素晴らしいね」「こんな力があるね」と言って育てるとその通りになったりします。

逆に、他人の子と比較してできないことがあっても、焦らず長い目で見て、必ず良くなっていくことを、根拠なく信じてあげましょう。勘違いでもいいので、子供が「できる」と思って進んでいかせてあげることが大事だな、と感じます

親の“教育にリターンを求める姿勢”が逆効果

——自己肯定感ですね。お伺いしていて、まさにおっしゃる通りだと思うのですが、現実的に母親が働きながら、家では家事に追われつつ、そのような教育的意識を持って日々子供に接することは、容易ではないかもしれません。

良くないと分かっていても、限られた短い時間の中で、「子供に何をしたら一番効果的?」のように考え、子育てに効率とリターンを求めてしまうような、つい「下心ありあり」思考パターンに陥ってしまうこともあるのではないかと。

江藤:そうですね。教育・子育ての基本は、「今の積み重ね」であり、効率とはかけ離れています。ですが、現代の教育で最大の問題は、子育ての孤立化です。お母様が、効率的には進められない子育ての全てを、一人で請け負うのには時間的にも精神的にも限界があります。

幼児教室は、そんな中の一つの手助けと捉えてもよいのではないでしょうか。受験のため、子供のためのお教室でありつつ、幼少期という大切な時期にある子育て中の母親のサポーターとしての利用もあると思います。また、お金をかけなくても、オンラインなどを利用すれば教育サポートのチャンスはありますので、家庭外にも頼れる先を見つけておくのはよいことかなと思います。

もし教室に通うのならば、親目線とは違う、「子育ての一つの行動見本を見せてもらえる」のが、親にとっての最大のメリットだと思います。また、子供にとっては「家ではできない経験が広がる」メリットがあります。

また、今は子供のおもちゃも豊富で、家におもちゃがたくさんありすぎるという弊害もあるかもしれない、と藤田先生のお話を伺っていて思いました。家庭ではない教室という空間で、1つの題材に集中する時間をもてるのも、教室のメリットかもしれませんね。

注意点すべき点としては、間違った早期教育とは、「3歳だけど5歳と同等のことができる」のような年齢以上のことをやらせようとすることや、「他の子よりも◯◯ができる」のような他児との比較をすることです。この2つについては早期教育で陥りがちなことですので、気をつけていきたいですね。

——早期教育の2大注意点ですね。単なる“詰め込み型教育の限界”については、早期教育だけではなく、今や教育界全般で言われていることです。一方、今文科省で提唱されている“主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)“のサポートは、時間と手間がかかるイメージがあります。

江藤:時間の問題よりも、むしろ「心のゆとり」の方が大事かもしれませんね。教育者にも保護者にも、心のゆとりが必要と感じます。ルソーの言う「子ども」の概念※ を知ることの大切さ、です。子供には子供の時間があり、そこに大人が合わせてあげることです。もっとも、現代において心のゆとりをもつことが、一番難しいことなのかもしれませんが、できるだけ心がけたいものですね。

※ジャン・ジャック・ルソーの教育を論じた小説風著書「エミール」で、当時子供は小さな大人と見られていた概念を覆し、「子どもは大人ではない。子どもは子どもである」と述べ、「子どもの発見」とされている。

子どもの「苦手」に対しての対応と、「不合格」の捉え方

——そのほか、受験に取り組んでおられる親が、心掛けておきたいことがあれば教えてください。

藤田:年齢に関係なく、親が「どんなことやっているの?」と子供の教育に積極的に関わる姿勢は有効です。「そんなことを学んでいるの?すごいね」「すごいことを知っているんだね」などと、夕飯の食卓を囲みながら話せると良いのではないでしょうか。ご家庭で是非やっていただきたいことです。

また、お子様が学習によって劣っている点がある場合にも、「そこ苦手だね」「算数苦手だね」と言うようなネガティブなコメントをしないことも大事です。「苦手」という言葉を使って、本人に「自分はこれが苦手なんだ」と自己イメージをつけてしまうのはマイナスです。どんな時も、「ここがまだ伸ばしていけるね」のように、変化・成長していくイメージをさせていく言葉かけをしていきましょう。

目先のテストの結果や成績、偏差値を見て、喜んだり悲しんだり慌てたりするのではなく、常に今後どうなっていくかの興味関心を持ち続けていきたいものです。そして、子供の「なぜ」は受け止めましょう。子供の疑問を大切に、「なぜ?」と聞かれて、「なぜだと思う?」と問いで返してみることも良い心がけだと思います。

——最後に“ご縁をいただけなかった”際の心がけについてはいかがでしょうか?

藤田:小学校受験では実は第一希望にご縁をいただけるご家庭の方が圧倒的に少ないのです。ですから、受験のゴールを結果である合格だけに設定してしまうのではなく、その子の将来に繋がっていく宝となるような「学習姿勢」に置くことをおすすめしています。 また、「受験の合否は、ご家庭や子供の優劣ではない」と言うことを、はっきりとお伝えしたいと思います。

私学には、その学校独特のカラーや教育方針がありますので、合否は学校とお子様との“相性”の問題です。各学校の方向性にご家庭やお子様が合致しているかどうかを見られているのであって、学校の方向性には、正解も不正解もありません。たとえ名門と言われる学校であっても、それは同じことです。そこを誤解しないでいただきたいと思います。

ですから、学校に合わせて、ご家庭で何かを取り繕う必要もありません。たとえご縁をいただけなかったとして、「私の子育て間違っていた」「うちの教育が失敗だった」「負けた、敗れた」などとは思っていただきたくありません。「ご縁がないなら、見る目がないのね」くらいに思っていただいても構わないと思います。

そんなことを言われても、と思われるかもしれません。ですが、私は実際に合否に関係なく素敵なお子様たくさん見てきていますし、その後に大きく伸びていくお子様にも日々接しています。ぜひご自身にもお子様にも、自信を持っていただきたいと思います。

——ありがとうございました。小学校受験は「親の受験」とも言われることもあり、ご縁をいただけなかった時に、親の方が必要以上にダメージを受けてしまうこともあるかもしれません。ですが、藤田先生のお言葉の通りだと身に染みます。

「早期教育」という言葉を聞くと、個人的には正直「忙しさにかまけ、十分にしてあげられないまま過ぎてしまった…」と後悔の念で気が重くなる私です(笑) が、今回、親が子供の学んでいることに関心を持ち、共に学ぶ楽しさを味わう時間をもつことの有用性を再確認いたしました。 

今まさに直中にいらっしゃる方には、このような知識を頭の片隅に入れ、無理のない範囲でほんの少し意識して過ごせたら、きっと親子の時間が大きく変わっていくと思います。ぜひ受験をする方も、されない方も、ご参考にしてくださればと思います。

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教えてくれたのは…

一般社団法人小学校受験協会 代表理事 藤田和彦さん

岐阜県出身。学生時代は塾に通わず、東大文一に現役合格。東大法学部を卒業後、プロの家庭教師として幼児から大学受験生まで幅広く指導。一般社団法人小学校受験協会 代表理事として、四ツ谷にて「国立小受験 専門 定期教室」を開講。自身も主任講師として指導にあたっている。幼児・小学生の特性をよく理解し、かつ将来的に必要な学習の内容を熟知したうえでの指導は高く評価されている。
▶︎小学校受験協会公式HP
▶︎藤田和彦twitter

教えてくれたのは…

教育学博士 江藤真規さん

お茶の水大学卒業。娘2人は中学受験を経て東大に現役合格。その後、自身も東京大学大学院教育学研究科修士課程に入学、2019年に博士課程修了。現在は㈱サイタコーディネーション代表取締役として、子育て・家庭教育に関する講演や執筆活動を行う。「子どもの主体性」をテーマとしたコーチングスクール、学びの土台作りを目指したクロワール幼児教室を主宰。家庭環境づくり、親子対話の工夫等を発信する。著書「子どもを育てる魔法の言い換え辞典」「母親が知らないとツライ女の子の育て方」他。
▶︎子育てコーチング:サイタ・コーディネーション

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Interview& Writing

田口まさ美

<教育エディター>
小学館で教育・ファッション・ビューティ関連の編集に20年以上携わり独立。現在Creative director、Brand producerとして活躍する傍ら教育編集者として本連載を担う。私立中学校に通う一人娘の母。Starflower inc.代表。▶︎Instagram: @masami_taguchi_edu


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