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【目次】
水草水槽の魅力とは?どうやって作るの?
水槽で熱帯魚などを飼育するときに欠かせないアイテムでもある水草ですが、眺めていると気持ちが癒やされる人も多いことから、水草だけを使った「水草水槽」も近年人気になりつつあります。まずは、水草水槽の魅力や作り方を解説します。
水草だけでアクアリウムが作れる
水草水槽とは、水槽の中にさまざまな水草を植えつけて楽しむアクアリウムのこと。熱帯魚などの魚を入れなくても、インテリア感覚で美しい水槽を作れるのが魅力です。
水中に酸素を供給するエアレーションやフィルターなど、魚を飼育するために必要な道具は多岐にわたります。一方で、水草の飼育では、これらのアイテムを使わなくても育てられる場合もあるため、気軽にチャレンジできるのもメリットです。
なお、水草水槽は主に水草で作るアクアリウムを表す言葉ではあるものの、水草をメインに、魚などの生き物も育てることも可能です。
さまざまな水草を混ぜてレイアウトを作る
美しい水草水槽を作り上げるには、「全体の高さを意識する」というレイアウトの基本を覚えておくことが大切です。見た目のバランスを考えて、背の低い水草は前に、背の高いものは後ろに配置するのがセオリーとされています。
また、レイアウトを考える際は、水槽の手前から順に前景・中景・後景と空間を三つに区切るのが一般的です。前景に適した背丈の低めな水草のことを前景草、中景に合う背丈のものは中景草、後景に適した背丈の高いものは後景草と呼ばれます。
水槽の中が緑一色にならないよう、アクセントとして色の異なる品種を植えてみるのもおしゃれです。その他にも、水槽の底に砂利やソイルを敷いたり、流木を置いたりする方法や傾斜をつけてバランスを取る方法もあります。
水草の選び方をチェックしよう
水草にはさまざまな種類があり、育てる難易度も異なります。水草のみで作るケースを中心に、生き物を水槽に入れるケースも併せて、水草を選ぶポイントを解説します。
種類や状態で選ぶ
水草には主に四つの種類があり、「抽水植物」「浮葉植物」「浮遊植物」「沈水植物」に分けられます。植物全体が水中にあるか水面に浮いた状態か、茎や葉が水面上に出ているかなどで区別するのが一般的です。
また、水中で育つ葉を「水中葉」、水面の上で育つ葉を「水上葉」といい、それぞれ見た目や性質が異なります。店などで売られている時点では、水上葉の状態が多いのが特徴です。
水上葉を水中で育てる場合、新芽を出すまでには、ある程度の時間がかかります。すぐに水草水槽を楽しみたいなら、最初から水中葉の状態になった水草を購入するのがおすすめです。
育てやすさで選ぶ
水草を育てる際には、通常の植物と同じように二酸化炭素(CO2)と光が必要です。販売されている水草には、説明書が付属しており、品種ごとに好む環境について書かれているのが一般的です。
品種によってはトリミングを要するものや、装置を使って二酸化炭素を添加したり水温を管理したりと、こまめな手入れが必要なものがあります。初めて水草水槽に挑戦する人には、二酸化炭素の量を調節しなくてもよい種類や、成長がゆっくりでこまめなトリミングが不要な水草が適しています。
少なめの光量を好む陰生植物の水草なら、別途照明を用意しなくても、部屋の明かりだけで育てられるのがメリットです。ただし、コケが発生しやすいため、コケを食べてくれる生き物を一緒に育てるのがおすすめです。
生き物との相性で選ぶ
大きな水槽で水草を育てるのはもちろん、美しい熱帯魚やかわいい生き物を飼育したいと考える人も多いのではないでしょうか。
生き物と一緒に水草を育てるなら、相性を考えて水草を選ぶのが賢明です。水草の中には、魚が食べられるものや、卵を産みつけるのに適した品種も数多く存在します。
また、水草を植える前に水洗いをしても、農薬が残っていると生き物によっては害となる可能性もあります。特にエビなどの生き物がいる水槽に入れるなら、無農薬または、残留農薬処理済みで育てられた水草を選ぶのがおすすめです。
水槽で水草を育てるために必要な3つのこと
植物を育てる際には、二酸化炭素や光量などの条件が必要です。水草水槽を成長させるために押さえておきたいポイントを紹介します。
二酸化炭素を補給する
水草などの植物は、基本的に二酸化炭素がなければ成長しません。水道水の中にも二酸化炭素は含まれているものの、きれいに育てるためには二酸化炭素を添加するのがおすすめです。
二酸化炭素添加装置を利用する際は、水槽の内外に装置を取りつける必要があります。値段や大きさにも差はありますが、二酸化炭素添加装置の主な種類は以下の通りです。
・ボンベ式:ボンベ内の二酸化炭素を微細な泡にして水中に拡散させる方法
・発酵式:酵母などで二酸化炭素を発生させる方法
・自然溶解式:二酸化炭素を入れた筒状の容器から水中へ添加させる方法
・タブレット式:二酸化炭素を含むタブレットを水中に入れるだけの手軽な方法
見た目もよく量を調整しやすいボンベ式や、手軽なタブレット式はやや高価です。発酵式・自然溶解式は比較的安価な半面、見た目が少し劣ります。自身の目的や予算に合った方式を選びましょう。
専用照明を使って光を当てる
植物が光合成をする際には、二酸化炭素と光が必要です。たとえ明るい部屋であっても、光量が足りないと水草がうまく成長しない恐れがあります。
水草の種類にもよりますが、元気に育てるためには専用の照明を用意するのが基本です。照明の明るさには、ルーメン(lm)という光量を表す単位が用いられており、二酸化炭素添加装置の有無や、水槽の大きさなどによって推奨される数値が異なります。
一方で、光を長く当てすぎるとコケが発生する原因にもなり得るため、照明をつける時間は1日あたり6~12時間程度が目安とされています。タイマーつきの照明を選ぶと、うっかり消し忘れてしまうことも防止できて便利です。
肥料を追加して栄養を与える
水草の育成に特に必要とされる栄養素は、カリウム・窒素・リンの3つといわれています。掃除のために水槽の水を入れ替えることで、カリウムや鉄分が不足するケースもあるようです。
水槽に生き物を入れず水草のみで育てている場合、窒素やリンが不足することも珍しくありません。特にカリウムが不足すると、光合成がうまくできなくなる可能性があるため、必要に応じて肥料を利用します。
水草用の肥料には、液体や固形などいくつかのタイプがあります。水草をよく観察し、バランスを見ながら、不足しがちな栄養素を追加することが大切です。
参考:カリウムが根の生育を促進するメカニズムについて | みんなのひろば | 日本植物生理学会
初心者でも育てやすい水草【陰生植物】
光が少ない場所でも育つ陰生植物の水草は、専用の照明がなくても育てられるのがメリットです。初心者でもチャレンジしやすい、おすすめの水草を紹介します。
アヌビアス・ナナ
アヌビアス・ナナは、サトイモ科の水草で、濃いグリーンの丸みを帯びた葉が印象的な見た目です。葉や茎が分厚くしっかりとしていて、丈夫な品種なので初心者でも気軽に育てられます。
二酸化炭素を添加した方が成長は早くなりますが、添加しなくても問題なく育つといわれます。成長するスピードが比較的ゆるやかなので、こまめにトリミングをする必要もありません。
ソイルに植えたり、流木などに活着させたりと、植える場所を選ばないのも特徴です。葉の色味が明るいアヌビアス・ナナゴールデンという改良品種もあり、こちらも育てやすい水草といわれています。
ミクロソリウム
ミクロソリウムはシダ類の仲間で、水の中に生える細長い葉が目を引きます。葉の形状が微妙に異なるさまざまな品種があるため、好みに合わせて選べるのも魅力です。
水槽の底床ではなく、流木や石などに根を張るのが特徴で、砂利の底床にも植えられます。弱酸性の環境を好んでおり、こまめに水を換えてあげるのがうまく育てるポイントです。
二酸化炭素を添加したり、強い光を加えたりすることで大きく成長しますが、必ずしも必要ではありません。始めから流木つきで販売されている苗を選ぶと、植える手間もかからず水草水槽に挑戦できます。
アナカリス
アナカリスは、オオカナダモとも呼ばれており、ライトグリーンの美しい色味が特徴です。メダカや金魚などの生き物と相性もよいことから「金魚藻」ともいわれています。
幅広い水質や水温に対応でき、二酸化炭素添加も必須ではなく、光量の少ない環境でも問題なく育つという非常に丈夫な水草です。カットした脇芽を植えることで簡単に増やせるため、水槽をにぎやかな印象に飾ることもできます。
成長するスピードが早いため、トリミングやコケ取りなどのメンテナンスが必要です。メダカなどの魚にとってはエサにもなるため、生き物を飼育している水槽に入れる場合にも適しています。
前景草におすすめの水草
前述の通り、前景草は水槽の前面にレイアウトされる水草のことです。初心者におすすめな水草を、背の低い水草やじゅうたんのように広がるものなど、品種ごとに特徴を解説します。
ウォーターローン
ウォーターローンは、食虫植物の仲間で、捕虫嚢(ほちゅうのう)という消化器官があります。小さな粒なので、魚が産みつけた卵のようにも見えますが、コケなどが付着する恐れがあるため、こまめなトリミングが必要です。
じゅうたんのようにソイルに根づいて、びっしりと広がるように成長するのが特徴です。照明をつけ、二酸化炭素の添加を行うことで成長スピードが早くなるといわれています。そのため、水槽をびっしりと埋め尽くしたい人におすすめです。
成長すると、やがてつぼみをつけ、きれいな白い花を咲かせます。水の中でも花は咲きますが、水の上でも花を咲かせる場合もあります。
グロッソスティグマ
丸い小さな葉をつけるグロッソスティグマは、前景草の定番として知られる品種です。オーストラリアに分布しているゴマノハグサ科の水草で、地面を覆うように成長します。
非常に早く成長するため、栄養素が不足しないよう肥料を追加することも大切です。栄養が足りていないと葉の色が黄色っぽくなる可能性があるので、注意深く観察し、バランスよく肥料を追加します。
比較的強めの光量を好むのが特徴で、じゅうたん状に育てるためには水草用の照明が必要です。また、二酸化炭素も添加が推奨されています。成長してもあまり高さが出ないため、レイアウト全体に圧迫感が出ないのがうれしいポイントです。
中景草におすすめの水草
水槽の中央に植える中景草は、成長が早すぎないものを選ぶのがポイントです。周りの水草とも合わせやすい、おすすめの品種を紹介します。
ウェンティーグリーン(クリプトコリネ)
クリプトコリネは種類が豊富ですが、ウェンティーグリーンはその中でも比較的大型の品種です。しっかり成長すると、ある程度の高さが出るので、水槽の中・後景に適しています。
育てやすい品種ですが、光量が強すぎるなど育成環境によっては、葉の色が茶色がかってしまうこともあるので少し注意が必要です。底床の素材には、ソイルや砂などが適しています。
ウェンティーグリーンの中でも種類があるため、自分好みの葉の色や形を選べます。水質が急に変わると、葉が溶けるように落ちてしまう恐れがあるので、水替えの際は注意して行いましょう。
アマゾンソード
アマゾンソードは名前の通り南米に自生する水草で、エキノドルスの仲間です。丈夫で育てやすいだけでなく、大きく育つので、中・後景草として人気があります。
二酸化炭素を添加する必要はありませんが、明るい環境を好むため、照明を用意するのがおすすめです。二酸化炭素添加装置なしで育てる場合、過剰に成長しにくいので、小型の水槽でも楽しめるでしょう。
癖のないライトグリーンの葉は、他の水草と組み合わせやすいのもうれしいポイント。底床にしっかりと根を張って成長するので、底に敷いて使う固形肥料が適しています。
ブリクサショートリーフ
ブリクサショートリーフは、細く長い葉をつける品種です。葉の数が多いものの、レイアウトのアクセントとして水槽全体に上品かつ柔らかな印象を与えます。
中景草としてはもちろん、サイズによっては前景草としても楽しめる水草です。育成難易度はやや上がりますが、一度環境になじんだ後は、枯れにくいといわれています。
弱酸性の水質を好む傾向があり、ソイルに植えるのが一般的ですが、肥料を追加すれば砂利でも育てることが可能です。二酸化炭素を添加し、十分な明るさを確保して育ててみましょう。
後景草におすすめの水草
比較的背丈が高い後景草は、水槽全体の印象を左右する重要な部分です。スケールが大きく育てやすい、おすすめの後景草を紹介します。
グリーンロタラ
グリーンロタラには水中葉と水上葉の2種類があり、種類も豊富なので好きな見た目のものが選べます。リーズナブルな価格で購入できるのも、魅力の一つです。
強めの光量を好む性質があり、光が足りていないと葉の色が白っぽくなってしまうことがあります。成長スピードが早く、栄養分が不足しがちなので、様子を見ながら肥料の追加を行うのがポイントです。
照明と二酸化炭素に気をつけて育てると、美しいイエローグリーンの葉が広がっていきます。また、トリミングした部分を再び植えると脇芽が生えてくるため、簡単に増やせるのが特徴です。
パールグラス
茂みのように生えるパールグラスは、北米原産のヘミアントゥス属の水草です。星状の小さな葉をたくさんつけるのが印象的な品種で、水槽全体が華やかな印象になります。
最初は横へと広がり、その後一気に上に伸びていくのが特徴です。二酸化炭素を添加し、照明できちんと光を当てるようにすれば、初心者でも比較的簡単に育てられる品種といえます。
底床は、ソイルよりも砂利を好む性質があります。硬度が高めの水を入れることでしっかりと成長するため、一緒に植える水草との相性に注意する必要があります。
ハイグロフィラ・ポリスペルマ
ハイグロフィラ・ポリスペルマは、水草水槽によく利用されるキツネノマゴ科の水草です。とても丈夫で、二酸化炭素を添加しなくても育てられるため、初心者でもチャレンジしやすいといえます。
強い光を当てることで、葉の色がオレンジに変化するのが個性的な品種。もともとの明るいグリーンの葉も美しいですが、色の変化を見てみたい人は、強い光を好む水草と一緒に植えるのもおすすめです。
柔らかな葉は、エビなどのエサにもなるため、生き物を飼育する水槽でも育てやすいといえます。底床は、ソイル以外でも育成可能です。
水草水槽は下準備とメンテナンスも重要
水槽で水草を育てる前には、環境を整えておく必要があります。水草を植える前の下準備や、成長した後のメンテナンスについて紹介します。
下準備のポイントは「底床」選び
水草を植えつける際に、土台となるものを底床(ていしょう)といいます。底床には水草専用の土であるソイルを利用するのが一般的ですが、砂や砂利といった素材を敷くのも一つの方法です。
一口にソイルといっても、粒の大きさなど豊富なバリエーションがあります。一般的に、ソイルには栄養系と吸着系の2種類があり、初心者には栄養分が少ない吸着系のソイルがぴったりです。
また、市販されている水草には、魚の卵やコケなどが付着している可能性があります。洗面器などの容器に水道水をためて、植える前には必ず水洗いをして取り除くことが大切です。
メンテナンスでは掃除・トリミングを行う
水草と一緒に生き物を飼育していなくても、水槽の内壁にコケなどが付着するため定期的な手入れが必要です。
内壁の汚れをスポンジでこすって落としたら、枯れた水草があれば取り除いたり、細かいゴミを網ですくったりして、水槽内の環境を整えていきます。掃除の際に水が減ったら、水道水を入れて補充します。
また、専用のハサミを用いた水草のトリミングも大切です。成長しすぎた水草を放置していると、光が遮られるだけでなく、見た目も悪くなってしまいます。長さを調節するだけでなく、カットした部分を植えて増やす方法もあります。
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