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2023.04.19

【カータンの“介護の本音” Vol.2】老いた自分のために今から準備すべきこと

 

「40代になると、親の介護は遠い未来ではないと実感することが増えます」というのは、主婦ブロガー・カータンさん。カータンさんは40代後半から全盲の父、認知症の母の介護生活に入ります。その悲喜こもごもをつづったコミックエッセイが『お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中!親のトリセツ』(KADOKAWA)。サイン会は2時間で完売、発売直後に重版になるほど人気を博しています。そこで、本誌はカータンさんに特別インタビュー。Domani世代に向けて、「親が介護になったらまず何をすべきか」「具体的にどうすればいいか」を詳しくお話しいただきました。

Text:
前川亜紀

インタビュー前編
▶︎【カータンの“介護の本音” Vol.1】「親の老いを認めることは、とても切なく辛い」

ケアマネージャー(ケアマネ)さんに相談すれば、なんでも教えてくれる

────1回目で親が認知症や体が動かなくなったなど、自立しにくくなった気配を感じたら「地域包括支援センターに行く!」というアドバイスをいただきました。他に「これだけは押さえておいた方がいい」という要点はありますか?

老人ホームのことはざっくりと知っておいた方がいいかもしれません。緑内障が悪化し、視力を失った83歳の父は、公的な施設の特別養護老人ホーム(特養)※に入りました。いわゆる「老人ホーム」にもさまざまなランクがありますが、一番費用がかからないのはこの特養です。

入居時に気をつけるのは、「終末医療と看取り」の有無です。父が入った特養は、容体が悪化し亡くなるまでを施設で診てくれる施設ですが、終末医療と看取りに対応していない施設だと、引き取り先の病院を探さなくてはならないようです。

費用についても、予算と相談しつつ、実際にかかる費用(施設使用料、面会の交通費など)を詳細に検討しつつ、決めるといいと思います。親の介護のために、現役世代が可能性を手放すのは、悲しみが多く残ると思いますので。そんな費用面も含め、ケアマネージャー(ケアマネ)さんに相談すれば、なんでも教えてくれます。

我が家の担当のケアマネさんは、すばらしいプロフェッショナルで母のデイサービス(※)選びのときに、父が入った特養の施設に入れてくれたのです。ここのショートステイ(宿泊)サービスを利用し、夫婦は久しぶりに会うことができました。これもケアマネさんの豊富な知識があってこそ。ケアマネさんとの人柄や性格も介護生活を大きく左右すると感じています。

※特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、介護が必要な方に入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などする入居型施設。

※デイサービス……要介護の人が食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスを日帰りで受ける通所介護サービスのこと。

────カータンさんの作品に登場するケアマネさんは、本当に頼りになり、器も大きい方だと感じます。

そうなんです。頭の中に膨大な高齢者のデータが入っているので、何かを質問すると、すぐに的確な答えをいただけるので、心から頼りにしています。介護は家族、ケアマネさん、ヘルパーさん、訪問医、訪問歯科医のワンチームで取り組みます。実際に介護生活に入ると、介護スタッフの方々が、親のいいところを見つけてくれることに驚きつつもありがたく思うことが増えました。

親が元気なころを知っている家族はどうしても「親ができないこと」を探して嘆いてしまいます。「昨日まではできたのに、今日はこれができなくなった」という子育てとは真逆のことが続くのは、メンタルにもこたえます。でも、介護チームの皆さんは、親のできることを見つけてほめてくれるんです。母が書類に名前を書くと「イクコさん(母)、お名前書けましたね!」とみんながほめる。母がお昼にカップラーメンを食べたというと、「ポットのお湯を注いでカップラーメンを自分で作るなんて、すごい!」と言ってくださる。「シャワーじゃなくて湯船に浸かるなんてすごい!」「ペットボトルの蓋が開けられるなんて、いいですね」など、なんでもほめてくれる。私には、当たり前なことなのに、できるところを見つけて、ほめてくれるから「母、すごいじゃん」と思うようになりました。

そうなると母も私も変わってきます。「ほめて育てる」とはよく言いますが、「ほめられて満たされながら衰えていく」というのも大切なのだと気付きました。母の日常の動作を褒められるうちに、「母はもう大人ではなく、自立するのが難しい人なのだ」と思えるようになりました。ためらいはありますが、あえて言うと「母が子どもになった」ということです。小さな子どもに「ひとりでお風呂に入りなさい」とか「ゴミを分別しなさい」などとは言わず、大人が行います。まさにそれなんです。ヘルパーさんや訪問医先生など「身内以外の人の目線」を通じて、母の老いが腑に落ちていったと思います。

────特養に入ったお父さん、認知症になったお母さんの介護を通じ、カータンさん自身が老いた自分のために準備することはありましたか?

これは一にも二にも、「延命措置に対する自らの意思を書くこと」に尽きます。延命措置とは、文字通り延命を目的とした治療で、人工呼吸、人工栄養、人工透析などを指します。施設に入るとき、入院をするときには、この希望を書かなくてはなりません。生死にかかわることなので、親の延命措置を決めるのはとても負担が大きかったです。実際に延命をするか・しないかという局面に立たされると、人は可能性がある方を選んでしまうと思うんです。でも、それには痛みを伴う可能性もあります。心臓マッサージの有無も含め、姉と2人で悩みながら「延命措置を希望しない」にマルをつけました。

この経験も踏まえ、私も自分で決断し、自らの意思を書き残しています。これだけでも娘たちの負担が減ると思うんです。あとはささいなことですが、トイレでウォシュレットを使うこと。体が衰えると、自分のお尻を拭くのが難しくなるので、今から習慣化しています。というのも、認知症になるとそれまでの「生活習慣」が如実に表れるから。母は今でも、玄関の靴をキレイに並べ、服を脱いだら一度しわをきれいに伸ばしてから洗濯機に入れます。父も母も、老いて来ると、それまでの威厳を脱ぎ捨てて、本当に人間臭いというか、本能のままに生きるというか(笑)。そうなっても、習慣は変わらないのです。

そうそう、先日、私が実家のソファでうたた寝をしていたら、母が私にタオルケットをかけてくれたんです。私が心地よく眠れるよう、風邪をひかないようにいつも思いやってくれていたお母さん。もう、いろんなことができなくなっていても、お母さんは私のお母さんなんだな……って。

▲『お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中!親のトリセツ』より

────認知症になっても、「母の習性」は消えないのですね。

そうなんです。そして冷静に考えると、母の姿はもしかすると将来の私の姿かもしれない。今、自分が親のことで困ってることは、いずれ娘たちが困ることだと肝に銘じ、今からエンディングノートを書いたり、老後の計画を立てたりしています。やはり、延命措置も含めて、正しい判断ができるのは 50 代のうちだと思っています。それに、子供たちが本格的に巣立っていく時期に、親の老いを通じて自分の人生を再構築するのもいいと思うのです。子育ての渦中の先に、また違った世界が広がっています。親の介護は辛くて大変なことばかりではありません。そこから見えることもあるんですよ。


 

「親は老いて衰える」それはわかっているけれど、考えたくない…そんな世界をユーモアとともに見せてくれたカータンさん。お話を伺った後では、親の介護は悪いことばかりでないと気付くことも。カータンさんのお話は、そう遠くない未来の予行練習につながっていくはずです。

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『お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中!親のトリセツ』( KADOKAWA )

父は老人ホーム、母は認知症で在宅介護…月間800万アクセスがある人気主婦ブロガー・カータンが送る、笑って泣いて、ためになる介護コミックエッセイ。

撮影/五十嵐美弥(小学館) 取材・文/前川亜紀

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インタビュー

カータン

外資系航空会社に客室乗務員として勤務後、長女、次女を出産し専業主婦に。2007年3月に主婦の日常や過去のCA経験を描いたブログ「あたし・主婦の頭の中」を開設。多くの人に支持され「Japan Blog Award」ほか、ブログアワードを席巻。著書に『いろいろあるのよ、主婦だって! 』(幻冬舎単行本)、『健康以下、介護未満 親のトリセツ』(KADOKAWA)ほか多数。
▶︎カータンBLOG

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