読書感想文とは
昔、自分が小学生だったときに夏休みの宿題で読書感想文が出て、何を書いたらいいのか悩んだ方もいるのではないでしょうか? かつての自分と同じように子供が読書感想文で悩んでいて、何か手助けできないかと思うこともあるかもしれません。
そもそも、読書感想文は学校教育においてやらなければいけないものではありません。この事実に、驚く方もいるでしょう。文部科学省文化審議会の「国語力を身に付けるための読書活動の在り方」の中に次のような記述があります。
読書感想文を書くこと自体は子供たちの国語力を向上させる有効な方策の一つであるが,一律に,読書感想文を強制するなど子供たちに過度の負担を感じさせてしまうような指導では,子供たちが物語の中に入り込めず,読書を楽しむことができない。常に子供たちの状況を的確に把握し,意欲を出させるための取組が必要である。
出典:第2 国語力を身に付けるための読書活動の在り方|文部科学省
このように読書感想文は強制されるものではなく、国語力向上のためのひとつの手段にすぎないのです。そのため、読書感想文ありきの読書にならないようにしたいもの。
そうは言っても、やらなければならない宿題。読書感想文の書き方を教わっていない小学校低学年のうちは、「本を読んで思ったことを書きなさい」と言ったところで書けるはずもなく、大人のアシストが不可欠です。子供がすすんで書けるようにするにはどうしたらよいのか、見ていきましょう。
読書感想文の書き方
インターネット上や本などで、書き方のテンプレートがいろいろ展開されていますが、書き方のわからないうちはそれらを使うのもひとつの方法です。しかし、今後、型にはまった文章しか書けなくなる恐れがありますので、あまり型にこだわる必要はありません。ここでは基本的な読書感想文の書き方を紹介します。
本を選ぶ
読書感想文というくらいですから、まずは本を選ぶことから。できれば本屋さんに行って実際に手に取ってみることをおすすめします。選択肢の幅が広がりますので、なるべく大型書店がよいでしょう。サポートする大人側は「青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書を選びがちですが、それでなくてもよいのです。
「こっちがいいと思うな」「この本が書きやすいと思うよ」などと言わずに、子供の好きな本を自由に選ばせてあげましょう。物語や伝記のようなものでなくても、図鑑でも写真集でも構いません。大切なのは子供の興味、関心のあるものを選ぶことです。
本を読む
本が決まったら読み始めます。自分なりの読み方で自由に読ませてあげましょう。感想文を書くことを念頭において、おもしろかったところ、びっくりしたところ、悲しいところなどに付箋を貼っていくというやり方もあります。高学年ならできるかもしれませんが、低学年のうちはそれに気をとられて内容が入ってこなくなるかもしれません。まずは、自由に読ませてあげましょう。
構成を考える
読書感想文の構成は、はじめ・まんなか・おわりの3つに分けて考えます。これは作文を書くときも同じです。各パートに分けてメモしていきます。低学年の場合は自分で考えて書くのは難しいので、大人が「どうしてそう思ったのかな」などと聞きながらメモするとスムーズです。
1:はじめ
はじめのパートに書くことは、本を選んだきっかけや、選んだときの気持ちなど、本を読む前のことを書きます。
2:まんなか
まんなかのパートは最も分量が多い部分になりますが、本のあらすじ、読んで心に残った場面、共感した場面などを書きだします。読みながら付箋を貼った場合は、付箋の中から選択。なぜそう思ったのか理由も書き添えておきます。
3:おわり
おわりのパートは、本を読んだ後、自分の気持ちがどう変わったか、またはこれからどうしていきたいのか、自分の体験も踏まえて書けるとよいでしょう。
メモを元に原稿用紙に下書き
各パートの順番に、メモを元に質問しながら深堀りしていきます。はじめのパートでは、「この本を選んだのはどうして?」「表紙を見たとき、どう思った?」など問いかけると書きやすくなるでしょう。高学年の場合は自問します。
まんなかのパートでは、あらすじが冗長になりやすいので、「簡単に言うとこういうこと?」などと端的にまとめるアシストが必要です。また、ただ「すごかった」「びっくりした」という感情表現で終わらせず、なぜそう思ったのかという理由にフォーカスします。
おわりのパートは文章のまとめになる部分です。本を読んで、どんなことに気づいたか、対話の中で思わぬ感情が引き出せるかもしれませんので、どんどん聞いてみましょう。
清書
下書きを元に文章をつなげて清書します。清書する際、問題になってくるのは書きだし。書きだしはどんなものでもよいのです。ほかの文章と一緒で、結論を先に持ってくると伝わりやすいですし、たとえば「ガーン」などの擬態語から入れば興味を引く文章になります。
原稿用紙の使い方
原稿用紙に清書する際、気をつけなければならないことを挙げます。他人に読んでもらうことを前提に、きれいな読みやすい字で書くことを心がけましょう。
1:右端から書くが題名は3マスあけて書く。
2:本の題名は二重かぎカッコで。例『ももたろう』
3:題名のすぐ左に氏名。姓と名の間は1マスあけ、名の下も1マスあける。
4:本文は1マスあけて書き始め、段落が変わるときも改行して1マスあける。
5:句読点が文頭にこないようにする。前の行の最終マスに同居させるか、欄外に書く。
推敲する
清書ができたら、読み直して誤字や脱字がないか、内容に矛盾はないかをチェックします。大人がチェックするのもよいですが、音読してみるのがおすすめ。音の情報の方が間違いにも気づきやすいです。
まとめ
子供も保護者も苦手意識のある人が多い読書感想文。今回は、作文にも応用できる基本的な読書感想文の書き方を紹介しました。型にはまった書き方をする必要もなく、自由な発想で書くことで個性あふれる感想文になるものです。子供たちが好きな本を好きなだけ読めるように、読書感想文のための読書にならないようにしたいですね。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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