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2023.05.24

推敲とは? 言葉の意味や由来、使い方、英語表現までわかりやすく解説【教員監修】

「推敲」とは、詩や文章をつくるときに最適な字句や表現を何度も考え、一層よいものにすることを指します。当記事では推敲の意味や由来、使い方について紹介。

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推敲とは

何度も文章を考え直して、納得がいくまでのものに仕上げたという経験は誰しもあるのではないでしょうか? このような行為はまさに「推敲(すいこう)」に該当します。当記事では、推敲の意味や類義語などについて解説します。

まず「推敲」の意味ですが、文章をよりよくするために十分に言葉を吟味して練り直すという意味です。元々は詩をつくるときに用いられていました。ビジネスシーンでも、契約書や報告書などを作成するときに、一度完成した文章を読み直してよりよいものにする作業をしますよね。これがまさに「推敲」です。

机に向かってノートに書き込んでいる人の手元の写真

 推敲の由来

中国、宋の計有功(けいゆうこう)が編んだ、唐代の詩人の詩や評論などを収めた『唐詩紀事(とうしきじ)』という書物に以下の内容の漢文があります。

賈島(かとう)という詩人は科挙(かきょ:高級官吏登用試験)を受けるために都である長安に行きました。ロバに乗りながら詩をつくっていると「僧は推す月下の門(そうはおすげっかのもん)」という句ができました。しかし、この「推す(おす)」を「敲く(たたく)」にしたらどうだろう? と、なかなか決まらず悩んでいました。

そうしているうちに思わず都の長官である韓愈(かんゆ:当時著名な詩人であった)の列に突っ込んでしまいます。賈島は理由を詳しく説明します。すると韓愈は「敲という字がよい」とアドバイスし、ふたりで並んで進みながら詩についてしばらく論じていました。

このように、推敲は、賈島が詩をつくる際、「推す」か「敲く」か悩んでいたとき、韓愈の助言を得て「敲」に決めたという故事に基づいて生まれた言葉です。

 推敲を使った例文

推敲はどのような場面で使うのか見ていきましょう。

データベースを分析している人のイメージイラスト 大きな虫眼鏡を資料にかざしている

1:卒業論文はとっくにでき上がっていたが、推敲に1週間もかかったので提出が遅れてしまった

名詞として、推敲という表現を用いています。

2:作文の推敲を重ねることで、読みやすく相手に伝わりやすい文章になる

「推敲を重ねる」には、何度も見直した、というニュアンスが含まれます。

 3:先輩から「プレゼン資料のたたき台だけつくったので、明日までに推敲しておくように」と言われた

推敲は名詞でもありますが、「推敲する」というように動詞として使う場合もあります。

 4:昨日提出した報告書は、まだまだ推敲の余地があるとして返されてしまった

「推敲の余地がある」は、まだまだ手直しが必要だ、という意味で用いられます。

 推敲の類義語

次に、類義語にはどのようなものがあるか見ていきます。似ているようでも意味合いが異なりますので、使い方には気をつけましょう。

文章の添削をノートパソコンで行っている人のイメージイラスト

 校正(こうせい)

文字の誤りを比べて正すことです。そもそも、「校」の字には比べる、という意味があり、常用漢字表にはありませんが「校べる(くらべる)」という読み方もあります。読んで字のごとく「校(くら)べて正す」ということです。出版社などで、印刷物の誤字・脱字などの不備を元の原稿と比べて正すときに用いられます。詩や文章を書くときに字句を吟味してよりよいものにしよう、とする推敲とは意味が異なるので注意しましょう。

例文:
「丁寧な校正をしていただいて、印刷前に誤字が見つけられました」
「新聞社勤務の経験から校正の職に就いた」

 校閲(こうえつ)

原稿や印刷物の誤りや不備を調べて正すことです。「閲」の字には確かめる、調べるという意味があります。前述した校正と似ていますが、校正は表記の誤りや不備を正すこと、校閲は内容の誤りや不備を正すことです。両者は誤りを正すことに使われますが、よりよいものにするために練り直す、という推敲とは目的が異なる点に気をつけてください。

例文:
「今回の記事は医療に関するものなので、医学部の教授に校閲を依頼した」
「カタログを発注する前に製品スペックに誤りはないか校閲しなければならない」

 訂正(ていせい)

言葉や文字、文章などの誤りを直すことです。「訂」の字には「正」と同じように「正す」という意味があり、常用漢字表にはありませんが「訂す(ただす)」という読み方もあります。訂正という語は誤りを正すという意味が大きく、「推敲」の創作的な意味合いは少ないです。

例文:
「うっかり古い資料を根拠とした記事を書いてしまったので訂正した」
「カタログができ上がってきたが誤植を訂正した」

 改訂(かいてい)

書物、文書などの不備を改めて正すことです。「改」の字は「改める(あらためる)」と読み、「訂」は前述したように「正す」という意味ですから「改めて正す」ことを指します。書物の内容を前回のものに手を加え、改めて直すという意味が大きく、「推敲」の創作時に言葉を吟味してよいものにする、という意味はありません。教科書などで「改訂版」を目にすることもあるでしょう。

例文:
「新しい表現や言葉がどんどん生まれてきているので、辞書を改訂した」
「最近の調査で幕府成立の年が変わったこともあり教科書を改訂した」

添削(てんさく)

他人の詩文や文章を語句を加えたり削ったりして直すことです。これは他人のというところがポイントで、自分のつくったものを添削するとは言いません。「推敲」は自分のつくったものを吟味するという部分で、意味が異なってきます。

例文:
「提出したレポートが真っ赤に添削されて返ってきた」
「宿題の作文を添削してもらえるように先生に頼んだ」

推敲の英語表現

推敲の英語表現にはどのようなものがあるのか、見ていきます。英語では「polish」という単語が推敲に該当する表現です。

赤ペンで添削する人のイメージイラスト

1:「This passage needs to polished (improved) further.」

訳:この文章はさらに推敲を要する。

2:「He worked hard to polish his thesis.」

訳:彼は自分の論文に推敲を重ねた。

3:「He worked hard to polish (improve) his writing and eliminated unnecessary words.」

訳:彼は自分の文章を推敲し、無駄な語を省いた。

まとめ

推敲とは、詩や文章の表現などを見直したり修正を加えたりしてよりよいものにする、という意味を持つ言葉です。出版社などでよく使われる言葉ですが、それ以外のビジネスシーンにおいても文章を書く機会は多いもの。推敲の習慣を身につけておくと、きめ細かい丁寧な作業をするという印象を与えることができます。

武田さゆりさんのプロフィール写真

執筆

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

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