タンパク質とは
タンパク質は3大栄養素の1種で、たくさんのアミノ酸からつくられています。体をつくる働きや体の調子を整える働きを持ち、生きていく上で欠かせない栄養素です。1日に必要とされるタンパク質量は成人で50〜65gですが、性別や年齢によって異なります。
ここではその具体的な働きや摂取量の目安について解説します。
■タンパク質の働き
タンパク質はアミノ酸がたくさん繋がった栄養素です。炭水化物、脂質と合わせて3大栄養素といわれ、生きる上で欠かせません。食物から摂取したタンパク質はアミノ酸に分解され、別のタンパク質につくり替えられます。
割合として多いのは筋肉や皮膚、髪、臓器など体そのものをつくる組織です。ほかにも、ホルモンや酵素、免疫細胞など体の機能を調節する成分もタンパク質からつくられます。また、アミノ酸のまま神経伝達やビタミンの活性化を助ける際にも使われます。
■1日に必要なタンパク質量の目安
1日に必要とされるタンパク質の推奨量は成人男性で65g(65歳以上では60g)、成人女性で50gです。これはタンパク質量が多いことで知られる鶏胸肉に換算するとそれぞれ約280g、210g分となります。この量を1種類の食品だけから摂取しようとすると大変です。さまざまな食品をうまく組み合わせるようにするとよいでしょう。
タンパク質が不足すると肌荒れや抜け毛など表面的な影響や、成長障害、体力・免疫力の低下などが起こるため、毎日必要量を補うことが大切です。
タンパク質の分類
タンパク質には動物性タンパク質と植物性タンパク質の2種類があります。動物性タンパク質は食品の重量に対して多く含まれ、効率よくアミノ酸を摂ることができます。植物性タンパク質は食品に含まれる量が少ない一方で、脂質も少なく、ほかの栄養素も摂取できるため、どちらのタンパク質も摂るのがおすすめです。
■動物性タンパク質
動物性タンパク質はタンパク質のうち、動物性の食品に含まれるもののことで、必須アミノ酸を効率的に摂取できるのが特徴です。
必須アミノ酸とは体の中で合成できないアミノ酸を指します。必須アミノ酸をバランスよく含むタンパク質は良質なタンパク質と呼ばれ、必要量に対してどの程度バランスよく含まれるかはアミノ酸スコアという数値で表されます。
動物性タンパク質は、アミノ酸スコアが100の良質なタンパク質がほとんどです。
■植物性タンパク質
植物性タンパク質は植物性の食品に含まれるタンパク質を指します。植物性タンパク質を含む食材は動物性食品よりも脂質が少なく、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富なものも多いのが特徴です。
その一方でアミノ酸スコアが低いものも多く見られます。中には大豆製品のようにアミノ酸スコアが100と高いものもありますが、野菜は少ない傾向にあるため、動物性タンパク質と上手に組み合わせましょう。
■タンパク質が豊富な食材
タンパク質が豊富な食材は肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品などです。これらはアミノ酸スコアが100のものが多く、重量あたりのタンパク質の量も多いです。
しかし、動物性食品は食べすぎると動脈硬化の原因となる飽和脂肪酸を摂りすぎることがあるため、植物性食品に含まれるタンパク質と合わせてバランスよく摂るとよいでしょう。
タンパク質を含む野菜
植物性のタンパク質の中で大豆・大豆製品にはタンパク質が豊富なことが知られています。ここでは野菜類と果物類に注目してそれぞれタンパク質を多く含んでいる食品をランキング形式でご紹介します。
■タンパク質を含む野菜ランキング
タンパク質を含む一般的な野菜のうち、その量が多いものをランキングにまとめました。それぞれのタンパク質量とエネルギー量を紹介するので、食事に取り入れる際の参考にしてみてください。
可食部100gあたり
出典:「文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
※図表は編集部にて作成
上位3位までの野菜はカロリーもある程度含んでいます。これは、枝豆は糖質や脂質、空豆とにんにくは糖質をある程度含んでいるためです。
また、にんにくに関しては1回に100g食べることはほとんどないため、1回分に換算するとタンパク質の摂取量はそこまで多くなりません。それ以外の野菜類をうまく食事に取り入れるとよいでしょう。
■ブロッコリーが筋トレにいいといわれる理由
ブロッコリーは筋トレをする方たちに好まれる食材のひとつといわれています。これはタンパク質を含む野菜の中で、糖質が1.5gと上位4種よりも低く、アミノ酸スコアが高いことがあげられます。
ほかにも、ブロッコリーには男性ホルモンを増強させる成分も含まれており、それによって筋肉がつきやすくなるといわれていることも理由のひとつと考えられます。ブロッコリーは手軽に手に入りやすい食材でもあるため、タンパク質を補うのに活用するとよいでしょう。
出典:「文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
■タンパク質を含む果物
果物にもタンパク質を含むものがあります。ただし、動物性の食品と比較するとかなり少なく、多く含まれる野菜と比べても少ないため、果物だけでタンパク質を摂取するのは難しいでしょう。
可食部100gあたり
出典:「文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
※図表は編集部にて作成
アボカドは野菜の1種に思われがちですが、実は分類は果物です。果物の中では最もタンパク質が多く含まれていますが、森のバターと呼ばれるほど脂質も多く、カロリーも高いため、食べすぎには注意しましょう。
タンパク質の働きを助ける栄養素
タンパク質を食品から摂ったあと、体の中で使う際にその分解や合成を助ける栄養素がビタミンB6とB12です。いずれも一般的な食事をしていれば不足しづらい栄養素ではありますが、場合によっては不足することもあります。
それぞれの具体的な働きと不足するとどうなるかについて解説します。
■ビタミンB6
ビタミンB6は水溶性のビタミンで、タンパク質を体の中で使う際に必要な栄養素です。具体的には免疫機能を正常に保つ、皮膚の抵抗力を高めるなどの働きを持ちます。ほかにも赤血球中に含まれ、酸素を全身に運ぶヘモグロビンや神経伝達物質を合成するのにも関わります。
タンパク質の摂取量に比例して必要量も増えることから、タンパク質を摂る際には一緒に摂るように意識しましょう。基本的にはあまり不足しませんが、不足すると皮膚炎や舌炎、口内炎、貧血などの症状が現れることがあります。
■ビタミンB12
ビタミンB12は同じく水溶性のビタミンで、タンパク質が分解されてできたアミノ酸から再度タンパク質を合成する反応に関わります。赤血球をつくる際にも必要となることから別名造血のビタミンとも呼ばれます。
腸内細菌によってもつくられる栄養素のため、一般的には不足しないといわれますが、消化器系の障害や、腸内環境が悪化している場合は注意が必要です。不足すると貧血や神経障害なども起こります。
タンパク質を含む野菜のおすすめの食べ方
タンパク質を含む野菜を食べる際におすすめの食べ方は、動物性タンパク質やビタミンB6、B12と組み合わせること、スープにして食べることです。ここでは具体的な理由や、組み合わせる食品、その方法についてご紹介します。
■動物性タンパク質と一緒に食べる
タンパク質を含む野菜は動物性タンパク質と組み合わせるのがおすすめです。アミノ酸スコアが高い動物性タンパク質と組み合わせることによって、野菜に含まれている分だけでは足りないアミノ酸を補うことができ、全体のアミノ酸バランスをよくすることができます。また、野菜だけで必要な量のタンパク質を補うのは食べる量が多く、大変です。
動物性食品と組み合わせることで、料理全体の脂質を抑えてボリューム感を持たせつつ、タンパク質もしっかり摂れるメニューにできます。
■スープにして食べる
野菜に含まれる栄養素には水分に溶け出しやすい水溶性のビタミン類やカリウムが含まれます。野菜から植物性のタンパク質を摂取する場合にはこれらの栄養素まで無駄なく摂ることがポイントです。
生でサラダとして食べても損失は少なくすみますが、加熱することによってかさが減り、食べる量を増やすことができます。スープにして溶け出した栄養素までおいしく食べるとタンパク質摂取の面からも、ほかの栄養素を摂る面からも効率的です。
■ビタミンB6、B12と組み合わせる
タンパク質を効率よく使うために必要なビタミンB6、B12と組み合わせて食べるのもおすすめです。ビタミンB6は赤身の魚や肉に多く含まれ、ビタミンB12は貝類やレバー、海藻類に多く含まれます。これらの食材をうまく組み合わせることで、摂取したタンパク質を効率よく使うことができます。
また、ブロッコリーはビタミンB6も野菜の中では多いため、タンパク質とあわせて摂取できる食材です。積極的に取り入れるとよいでしょう。
タンパク質を含む野菜を上手に食事に取り入れましょう
植物性のタンパク質を含む野菜は、それだけでタンパク質の摂取源とするのではなく、動物性のタンパク質や大豆・大豆製品と組み合わせて、上手に摂ると効率がよくなります。
タンパク質を動物性の食品からだけ摂ってしまうと、脂質やエネルギーを摂りすぎやすいため、今回紹介したTOP10の野菜をうまく組み合わせるのがおすすめです。バランスよくタンパク質を食べて、健康と美容に効果的な食生活にしましょう。
監修
川島 尚子
管理栄養士兼パティシエ。料理教室運営会社で講師やメニュー開発に従事後、パティシエへ転向。現在は企業様向けのレシピ開発やコラム執筆、オンラインショップやオーダーメイド菓子の制作を行う。ヘルシーなものから子供向けまで幅広く対応。
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