ハレーションってどんな言葉?
ビジネスシーンなどで使われるハレーションという言葉は、もともと異なる意味で使用されていました。ハレーションの言葉の由来などを紹介します。
本来は写真用語
ハレーションとは、もともとは写真用語として使われていた言葉です。逆光の太陽光など強い光がレンズに入り込むことで、光源を中心に明るく白いぼやけが発生する現象のことを指します。
写真などで発生するハレーションは、フィルムを使って撮影する場合にのみ起こる現象で、デジタルカメラでの撮影では発生しません。
他にも、ハレーションと似たような現象にフレアというものがあります。フレアとは、太陽やスポットライトなどの強い光が直接または直接に近い形でレンズに当たった場合に、レンズやカメラのボディ内で光が反射され光源の周りや画面全体を白っぽくしてしまう現象です。
「業界別」ハレーションの意味
ハレーションは、使用される業界によってニュアンスが異なります。業界別の言葉の意味について紹介します。
ビジネスシーンの場合
ビジネスシーンで使われるハレーションには、「好ましくない影響を他人に与えること」「周りに悪影響を及ぼすこと」といった意味があります。ミスや失敗などが発生した場合に、周りを巻き込んで大きな影響を与えることを表しており、よくない意味での副作用や二次被害といったニュアンスでも使用されます。
例えば、製品の納期が遅れるというミスが発生した場合、納期の遅れがその後の製造工程の遅れにつながりかねません。さらなる納期遅れが発生する可能性や、取引先への謝罪や納品までの工程の見直しなどを行う必要があります。
このように、一つのトラブルが周りに影響を及ぼし、人や仕事に良くない影響を与えることを表現するのがハレーションです。
IT業界の場合
IT業界で使用されるハレーションは、一つの操作や失敗などによって重大な悪影響が発生することを意味します。
ITシステムは、コードが少しでも欠けていたり、誤って記載すると動かなくなったりと、誤作動が発生するケースがあります。実際にミスが発覚した場合、どこでミスが発生しているのかを探したり、正常なコードに書き換えたりするために、膨大な時間的・人為的コストがかかり、影響は重大です。
そのため、IT業界で使われるハレーションには、他の業界と比較して厳しいニュアンスが含まれています。
医療業界の場合
医療業界ではCTやMRIでの撮影時に起きる現象に対して、ハレーションという言葉が使われます。
エックス線を用いたCTスキャンや、電磁波と磁石を用いたMRIでの撮影の際、金属が電磁波などに反射して放射状の光が発生し、撮影した映像に映りかねません。そのため、体内に金属製のボルトや歯の被せもの・インプラントなどが装着されている場合、使用している金属などによってはうまく撮影できないケースがあるといわれています。
この、撮影した映像に映る放射状の光のことをハレーションと呼びます。一般的なビジネスシーンでの使われ方と比較して、写真用語としての使われ方に近いのが特徴です。
その他の業界での場合
ITや医療業界以外でもハレーションという言葉は使われており、業界によってニュアンスが異なります。
デザイン業界では、特定の色を組み合わせることで生じる見た目の違和感をハレーションといいます。例えば「緑と赤」「赤・青・黄色」など、コントラストが強い色同士の組み合わせを見たとき、目がチカチカする感覚を覚える人も少なくありません。この現象のことをハレーションといいます。
また、美容業界におけるハレーションとは、パーマや縮毛矯正などを施した後に、髪の毛がチリチリと傷む現象のことを指します。一方、アート業界では強い光によって写真に写ったぼやけや濁りをアートと捉え、ポジティブな意味合いでハレーションを使うようです。
ビジネスシーンでのハレーションの使い方・例文
業界ごとにハレーションのニュアンスが違うことを理解すると、実際どのように使われているのか気になる人もいるかもしれません。ここではビジネスシーンにおけるハレーションの使い方を例文で紹介します。
「ハレーションを起こす」
ハレーションは周りへ悪影響を及ぼすという意味で使われますが、状況によってはこちらが当事者となり得る恐れがあります。その場合は「自分のミスが原因でハレーションを起こしてしまった」と使います。
また、同じ部署の同僚にクセの強い人物や自己主張が強い人物がおり、その人の言動によって業務に支障をきたしてしまうケースでは、「中途採用で入社した同僚の言動が、会社だけではなく取引先にまでハレーションを起こしている」のように使いましょう。
他にも、ハレーションの原因となるミスやトラブルが発生しないようにするために、上司が「私たちが担当する案件に対して、調査や確認を確実に行い、ハレーションを起こさないように気を付けよう」と声をかけるときもあります。
「ハレーションが生まれる」
自分以外の何らかの原因によって、意図せずともハレーションが起きてしまう場合も少なくありません。
例えば、会社の代表や役員として新しい人物が参画した場合、会社にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。これまでの業務が会社の方針転換によってなくなったり、自分が希望していない部署へ異動させられたりするケースがあるかもしれません。
この場合は「社長が変わってから、わが社には大きなハレーションが生まれています」と表現できます。しかし、必ずしも「ハレーションが生まれる」と表現するわけではありません。「ハレーションが起きる」「ハレーションが生じる」なども使えます。
「ハレーションが大きい」
ハレーションを使えば、悪影響の大きさを表すことも可能です。
案件や業務に対して方向性が急遽変更されたり、不慮の事態が発生したりして大きな影響を及ぼすケースでは、「ハレーションが大きい」と表現します。例えば「クライアントからの修正範囲があまりに広くて、業務へのハレーションが大きすぎる」などと使います。
一方、トラブルが発生したものの、それほど影響がない場合は「ハレーションが小さい」といったように使われ「納品トラブルがあったけれど、ハレーションが小さくて済んだ」と表現しましょう。
ハレーションの英語表現・類義語
ハレーションは英語でも使用されますが、使い方が日本語と異なる点があります。ハレーションの英語表現や類義語についても紹介します。
英語では「halation」
ハレーションの英語表記は「halation」で、日本語ではそのままカタカナとして表記しています。英語での本来の意味は、写真用語として使用されています。
和製英語でのハレーションは悪影響を表現する言葉として使用されていますが、英語の「halation」は悪影響を意味する言葉としては使用されません。
そのため、英語圏の国で「悪影響」のニュアンスとしてハレーションを使っても、意味が通じません。英語で悪影響を表現したい場合は「bad influence」「ill effects」といった言葉を使用するのが一般的です。
類義語は「光暈(こううん)」など
写真用語で使われるハレーションは、日本語で「光暈(こううん)」といいます。光暈には、ハレーションと同じ意味に加えて、太陽や雲にかかった状態で出現する輪状の光という意味もあります。
他にも、近い言葉に「光滲(こうしん)」があります。フィルムに強い光が当たることで、画像の周囲が不鮮明になる状態を指す言葉です。なお、光暈・光滲は写真用語であり、ビジネスシーンで使われる悪影響といった意味にはなりません。
ビジネスシーンで使われるハレーションの類義語には「悪影響」「マイナス作用」などがあります。「悪影響を与える」「マイナス作用が働く」などのように使用されるのが一般的です。
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