「引き合い」はさまざまな意味を持つ言葉
営業などで、よく使われる「引き合い」という言葉。正しい意味を把握している人は、それほどいないかもしれません。「引き合い」はさまざまな意味を持つ言葉で、いろいろなシーンで使われます。それぞれのシーンの意味や使い方を把握し、言葉を活用したいですね。
まずは「引き合い」の意味を見ていきましょう。辞書に載っている意味を紹介します。
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▷引き合い
【読み方】ひきあい
1:互いに引っ張り合うこと。「綱の—をする」
2:証拠・参考として例に引くこと。「もうけ話の—に出す」
3:売買・貸借条件の照会。また、その注文・取引。「海外から新製品の—がくる」
4:訴訟・事件などの証人・参考人になること。
5:仲を取りもつこと。紹介。「先生からの御—で無ければ」〈鉄腸・花間鶯〉
6:まきぞえ。かかわりあい。「然し—は喰ひはしませぬかな」〈伎・敵討噂古市〉
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ビジネスシーンでよく使われるのは、「2」や「3」が多いでしょう。営業などで取引や契約をする場面では、特によく登場するかもしれません。また、人を紹介してもらう際にも「引き合い」を使うことがあります。
それぞれの意味の使い方
ここからは、「引き合い」という言葉の使い方を紹介します。ビジネスシーンで使われる意味を中心に、例文とあわせて見ていきましょう。
意味1:互いに引っ張り合うこと
《例文》
・地球と月、太陽と惑星の間には、互いに引き合う「引力」が働いているらしい
・保護者競技の綱引きで力いっぱい綱を引き合い、体が筋肉痛だ
この意味での「引き合い」は、物理学や地学などで使うことが多いかもしれませんね。学術や研究の分野でもよく登場する言葉です。また「綱を引き合う」のように、運動や日常でも用いられることが多いでしょう。
意味2:証拠や参考として例に引くこと
《例文》
・過去の事例や案件を引き合いにして、新しい提案をするよう指示された
・ライバル企業の事例を引き合いに出して商談を進めたところ、興味を持ってもらえた
商品やサービスのアピール、何かしらの提案や判断などをする場合に事例を挙げることを意味します。営業職だと、競合他社や取引先の事例や案件を、「引き合い」に出すことが多いかもしれません。
意味3:注文や取引
《例文》
・情報番組で取り上げられてから引き合いが強くなり、一気に忙しくなった
・海外からお引き合いがあり、部長に指示を仰いだ
注文や問い合わせで「引き合い」を使う際は、その数が多いと「引き合いが強い」、少ない場合は「引き合いが弱い」のように表現します。
また、ビジネスシーンにおける取引では、「商談」や「相談」を表す際に「引き合い」を用いることがあります。商談と相談をまとめて「引き合い」と表現することもありますので、把握しておくといいですね。
意味4:証人や参考人
《例文》
・ある事件の引き合いを依頼され、困惑している
・事故の引き合いを請け負ったため、仕事を休んで裁判所に出向いた
この意味の場合は、「請け負う」という言葉をつけて使うことが多いでしょう。特殊なケースやシーンで使う意味のため、日常会話やビジネスシーンで見聞きすることばあまりないかもしれません。
意味5:仲を取り持つこと
《例文》
・私が引き合わせた2人が婚約し、わざわざ報告に来てくれた
・先日は〇〇社様をお引き合いいただき、誠にありがとうございました。
人と人との仲を取り持つという意味の場合にも、「引き合い」を使います。またビジネスシーンでは、「お引き合いいただく」のように使うこともあるでしょう。
「引き合い」の類義語
ここからは、「引き合い」の類義語を見ていきましょう。ビジネスシーンで使う意味別に紹介します。その時のシチュエーションにふさわしい言葉を選んでくださいね。
「引っ張り合い」
「引っ張り合い」とは、互いに引っ張ることを意味する言葉。「引き合い」の言い換え表現として使うことができるでしょう。
《例文》
・お互いに引っ張り合う力を「引力」と言うが、重力との違いがいまいちわからない
・ロープの引っ張り合いをしていて、どちらも転んでしまったそうだ
「例示」「参照」「リファレンス」
・例示
「例示」は、例として示すことや、例を挙げて示すことを表す言葉。
・参照
「参照」は、データや情報などを照らし合わせて、参考にすること。
・リファレンス
「リファレンス」は、参照や照会、照合などを意味する言葉。レファレンスと言うこともあります。
上記は、いずれも証拠や参考として例に引くことと同じような意味を持ちます。「引き合い」の言い換えとして使っても問題ないでしょう。
《例文》
・申込者には複数の記入パターンを例示した上で、話を進めた
・他社のデータと実績を参照しながら、打ち合わせをしている
・特定の記事におけるリファレンスの解説を頼まれた
「召喚」
「召喚」は、人を呼び出すこと。特に、裁判所が被告人・証人・鑑定人などに対し、一定の日時に裁判所その他の場所に出頭を命ずることを表します。読み方は「しょうかん」。
《例文》
・裁判所に召喚されたため、行かざるを得ない
「仲介」「橋渡し」「口利き」
・仲介
「仲介」は、当事者双方の間に立って便宜を図り、事をまとめることを意味する言葉。また、第三者が紛争当事者の間に立って、紛争の解決に努めることという意味も持ちます。
・橋渡し
「橋渡し」は、両者の間に入って、取り持つことの意。その人のことを指すこともあります。仲介と同じ意味と考えていいでしょう。
・口利き
「口利き」は、間に立って紹介や世話をすることを指します。読み方は「くちきき」。交渉や談判が上手な人という意味や、弁舌が巧みなことを表す際もこの言葉を使うことがあります。
《例文》
・取引の仲介をしているが、なかなか条件が折り合わない
・A社とB社との橋渡しを頼まれたが、どのように進めればいいかわからない
・関連会社で働く知人の口利きもあり、トップ企業の部長に会うことができた
最後に
「引き合い」という言葉を紹介しました。この言葉には複数の意味がありますが、ビジネスシーンで使うのは、「互いに引っ張り合うこと」「証拠や参考として例に引くこと」「注文や取引」「仲介」などになるでしょう。
シチュエーションにより意味が異なる言葉ですので、それぞれの意味や使い方を把握しておきたいですね。また、類義語を覚えておくと、スムーズに言い換えることができるでしょう。
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