「土壇場」という漢字、読み方はご存知ですか? 会話の中では、「土壇場でキャンセルされちゃって…」などというように使われる言葉です。一体「土壇場」とは、どのような状況を指すのでしょうか? そこで本記事では、「土壇場」の意味や使い方、よく似た「独壇場」との違い、類語などを解説します。
「土壇場」とは?
「土壇場」の読み方は、「どたんば」です。「どたんじょう」は誤読となりますので、注意してください。辞書で意味をチェックしていきましょう。
1 近世、首切りの刑を行うために築いた土の壇。前に穴を掘る。土壇(どだん)。
2 決断をせまられる、最後の場面。進退きわまった状態。「―で話がひっくりかえる」「―に立たされる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何かしらの決断を迫られている、ギリギリの場面のことを「土壇場」と言います。会話の中では、「土壇場で話がひっくりかえったよ」というように使われますが、言い換えると「もう話が決まりかけていたのに、最後の最後で話がナシになってしまったよ」というような意味になりますね。
元々は、首切りの刑を行なうために土を集めて、壇にしたものを「土壇」と言いました。「土壇」がある場所は刑場であるため、罪人にとっては最期を覚悟する場でもあります。このようなことから、差し迫った状況や最後の場面という意味として使われるようになったようですね。
使い方を例文でチェック!
「土壇場」は、主に急に予定を変更したり、キャンセルする場合に用いられます。「土壇場」の略語である、「ドタキャン」の使い方も合わせて紹介しますね。
1:午後から雨が降ると聞き、彼は土壇場で予定を変更した。
急に予定を変える時に、「土壇場で予定を変更した」と表現しますね。天候や思わぬアクシデントが起きたことがきっかけで、決めていた予定を急遽変更することもあるでしょう。「土壇場」を使うことで、いきなり予定が変更になったことがわかりますね。
2:試合終了1分前という土壇場で、彼がゴールを決め、チームは見事優勝した。
サッカーなどの競技では、あらかじめ終了時間が定められていることも少なくありません。「試合終了まであと数分」という差し迫った状況でゴールを決めるのは、まさに「土壇場」と言えるでしょう。最後の最後で応援していたチームが勝利する瞬間は、盛り上がりますよね。
3:せっかく高級なレストランを予約していたのに、ドタキャンされて困ったよ…。
会話でよく使われる「ドタキャン」は、「土壇場でキャンセル」の略語です。
[名](スル)《「土壇場でキャンセル」の意》俗に、直前になって約束や契約を取り消すこと。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
デートのディナーや取引先との会食では、事前にお店を予約しておくこともしばしば。相手の都合でいきなり約束を断られてしまうと、「もっと早く言って欲しかった…」と思うのが本音ではないでしょうか? お店によっては、キャンセル料が発生することもあるため、手痛い出費と言えそうです。また、お店の方にも迷惑をかけてしまうことになりますね…。
(例文)
・先方が風邪を引いたらしく、大物芸能人へのインタビューはドタキャンになった。
・取引先にドタキャンされたので、交渉はまた後日となりそうだ。
独壇場との違いは?
「土壇場(どたんば)」とよく似た言葉に、「独壇場(どくだんじょう)」という言葉がありますよね。字面はよく似ていますが、意味は全く異なるのでこの機会に違いを押さえておきましょう。
「独壇場」とは、「その人だけが、思うままに振る舞うことができる場所・場面」を指します。「土壇場」は「決断をせまられる、最後の場面」のことなので、意味は全く違いますよね。
ちなみに、実は「独壇場」は「独擅場(どくせんじょう)」という言葉を勘違いしたことから生まれた言葉なのだとか。「擅(せん)」と「壇(だん)」がよく似ていたことから、「どくだんじょう」と間違って読まれるようになり、現在では表記も「独壇場」が一般化されたようです。
参考:NHK放送文化研究所〜「独壇場」「独擅場」?〜
類語や言い換え表現は?
「土壇場」は、「決断を迫られて、ギリギリの場面」のこと。このような差し迫った状況を表す言葉は、他にどのようなものがあるのでしょうか? 合わせて覚えて使い分けてみてください。
1:崖っぷち
「崖っぷち」は、辞書に以下のように記載されています。
1 崖のふち。
2 限界ぎりぎりにある状況・状態。「生死の―に立つ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
崖のふちは、あと一歩で下に落ちてしまうような、非常に危険な場所であることから、転じて「限界ぎりぎりにある状況」を指すようになりました。これ以上先のない、進退きわまった状態が、「土壇場」と共通していると言えるでしょう。
(例文)
・その政治家は、週刊誌に不正疑惑が報じられ、崖っぷちの状況だ。
・父の飲食店の売り上げは赤字続きで、まさに崖っぷちの状態だ。
2:土俵際
「土俵際」は、「どひょうぎわ」と読みます。意味は以下のとおりです。
1 相撲の土俵上で内外の境界となる俵のそば。境界線は俵の外線。「―でうっちゃる」
2 物事が決着する瀬戸際。土壇場。「交渉は今が―だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
本来「土俵際」は、相撲の土俵上のきわにある俵のそばのこと。この俵を先に越えてしまうと、負けとなってしまうことから、「勝敗が決まる間際」を指すようになったとか。ビジネスシーンの話し合いの場面などで、「交渉は今が土俵際だ」というように表現することもできますね。
(例文)
・なんとか土俵際で話がまとまった。
・相手からの反撃を受けて、土俵際に追い詰められた。
3:瀬戸際
「瀬戸際(せとぎわ)」の意味は、以下のとおりです。
1 狭い海峡と外海の境。
2 勝負・成否などの分かれ目。「生きるか死ぬかの―」『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
成功するか失敗するかの分かれ目のことを、「瀬戸際」と言います。「生きるか死ぬかの瀬戸際」と表現されることもあるように、運命が決まる重大な分岐点と言えそうです。非常に差し迫った状況である点が、「土壇場」とよく似ていますね。
(例文)
・彼はギャンブルに大負けして、破産の瀬戸際にいる。
・妻に浮気がバレて、離婚の瀬戸際に立たされている。
最後に
「土壇場」とは、「決断を迫られる最後の場面」のこと。まさか、近世の刑場に由来があったなんて意外でしたね。ビジネスシーンでは、あらかじめ約束していた予定や商談を、キャンセルする時などに使われます。場合によっては、自分の印象が悪くなる可能性もあるため、「土壇場」でキャンセルしないように気をつけたいですね。
TOP画像/(c) Adobe Stock
【関連リンク】