「褒める」と「誉める」の違い
部下を上手に褒める上司がいると、職場の人間関係がよくなったり、職場の活性化につながることがあります。しかし、褒めるって意外と難しいですよね。部下を持ち、どう褒めればいいかわからず悩む人もいるのではないでしょうか?
今回は「褒める」の意味や「誉める」との違いを紹介します。後半では、褒め方について、ポイントやタイミング、注意点に触れますので、ぜひチェックしてください。まずは「褒める」の意味を見ていきましょう。
意味
「褒める」について、辞書で意味を調べてみました。
ほ・める【褒める/▽誉める】
[動マ下一][文]ほ・む[マ下二]
1:人のしたこと・行いをすぐれていると評価して、そのことを言う。たたえる。「勇気ある行動を―・める」「手放しで―・める」「あまり―・めた話ではない」⇔そしる/けなす。
2:祝う。ことほぐ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「ほめる」の漢字には「褒める」と「誉める」の2つがありますが、辞書によるとどちらも同じことを意味するようですね。人の行いを評価し、称える際に「褒める」や「誉める」を使います。
「褒める」と「誉める」、違いと使い分けは?
「褒める」の「褒」には、「よいことを賞する」という意味があります。親が子供を褒めたり、教師が生徒を褒めたりするときは、こちらの「褒める」を使うのが一般的です。それは「ご褒美」や「褒賞」といった熟語からも読み取れるでしょう。
一方の「誉める」の「誉」が意味するのは、「よいことをほめたたえる」意味もあるのですが、それ以外にも「よい評判」や「名誉」といった意味もあります。「名誉」や「栄誉」といった熟語があるように、周りから称賛されたり、企業や社会が評価を与えることを表す際に用いられていますね。
それぞれの例文
「褒める」と「誉める」、それぞれの使い方を例文で見ていきましょう。
【褒めるの例文】
・私が発案したPR方法が取引先に評価されたらしく、課長から褒められました。
・国語の先生に読書感想文を褒められてから、文章を書くのが好きになった。
【誉めるの例文】
・彼の発見は高く評価され、経営陣から誉めたたえられている。
・革新的な彼の発案は、社内のみならず世間からも誉められています。
褒めるの類語
褒めるの類語を見ていきましょう。「賞する」「賛する」「絶賛する」を紹介します。
賞する
「賞する」は、ほめたたえることを意味します。行いなどに対して、よい評価をし、褒めることを表す際に用いられています。
賛する
ほめたたえることや、賞賛することを意味します。同意することや、賛同するという意味も持つため、会話の流れや文脈などから意味を判断しましょう。
絶賛する
この上ない称賛や、口をきわめてほめるという意味を持つのが「絶賛する」です。褒めちぎったりすることや、絶大な賛美を意味する言葉です。
褒めるの対義語
褒めるの対義語も見ていきましょう。「貶す」「叱る」「腐す」を紹介します。
貶す(けなす)
悪い点を取り上げて、非難することを表すのが「貶す」です。人や物事の悪いところをあげつらうことや、おとしめて悪く言うようなさまを表す際に用いられます。
叱る(しかる)
目下の人の言動について、よくない点を指摘し、強くとがめることを表すのが「叱る」です。この言葉はなじみがありますよね。厳しく注意するさまを表す場合に用いられています。
腐す(くさす)
悪意を持ち、悪く評することを「腐す」といいます。欠点を取り上げて悪く言うさまや、貶すさまを表す言葉です。
褒めるの英語表現
褒めるを英語で表す場合についても見ていきましょう。
compliment
complimentとは個人的なことに対する賞賛や好意を表す際に用いる表現です。お世辞を言うという意味で使うこともあります。
【例文】
the clothes you always receive compliments on
→いつも褒められる服
praise
praiseは、褒めるやたたえると言う意味を表す表現です。
【例文】
sweet words of praise from customers
→お客様からのうれしいお褒めの言葉
congratulate
congratulateは、祝うという意味以外に、褒めるという意味でも使うことがあります。
【例文】
He congratulated me on what I have been doing.
→彼は、私のこれまでの努力を褒めてくれました。
相手を褒めることが大事な理由
上司が部下を褒めることは、職場のコミュニケーションを良好に保つ手段の一つといわれています。あなたが上司や先輩の立場にあるのなら、部下や後輩を積極的に褒めて、やる気を引き出したいところですよね。ここでは、相手を褒めることが大事な理由を紹介します。
関係性が良好になる
褒めてくれた相手に対して、ネガティブな感情を抱くことはほとんどないでしょう。それは、職場でも同様です。上司や先輩が目下の人を褒めれば、相手にも好意的な感情が芽生えやすくなり、気持ちに応えたいと思うかもしれません。
職場の雰囲気は、上司やスタッフ間の関係性が影響します。褒め言葉が飛び交う職場だと、雰囲気はおのずとよくなるでしょう。上司が積極的に部下を褒めるようになったことで、職場の雰囲気が変わり、取引先やお客様から「なんだか最近、雰囲気がいいね。おかげで来やすいよ」といわれたという例もあります。上司が褒めることを大切にすれば、働きやすさにもつながるといえるでしょう。
モチベーションアップにつながる
時には、部下や後輩を注意しなければならないときもありますよね。部下や後輩に指摘をする際には、指摘内容の中に褒める要素を入れると素直に聞き入れてくれることがあります。
■言い方例:部下に資料の誤字脱字を指摘する場合
作成してくれた資料ですが、引用データが正確で安心して読めました。もったいないと思ったのは、誤字脱字が多かったこと。次は複数回見直すと、ミスが減らせるかもしれませんね。全体的にレベルの高い資料で、とても助かりました。工夫してくれてありがとう。
このように伝えると、言われた人は承認欲求が満たされ、指摘もポジティブに受け止めてくれる可能性が高まります。
上手に褒めるコツとは?
褒めることが大切なのは分かっていても、「どうすればいいかわからない!」という人も多いでしょう。なんとなく褒めても、相手に気持ちは伝わりません。褒め方のポイントを紹介します。
具体的な言葉で褒める
褒めるときは、相手の素晴らしい点を具体的に触れましょう。「あなたは仕事ができるね」といわれても、相手はピンと来ないかもしれません。むしろ具体性が感じられず、「誰にでも同じことを言っているんでしょ?」と思われる可能性もあります。
たとえば、部下の電話対応が上手だと感じたら、どこが上手だと思ったのかなどを伝えます。具体例を紹介しましょう。
■電話対応について褒める場合
・〇〇さんは相槌のタイミングや打ち方がとてもいいですね。私がお客様の立場なら、どんどん話したくなります。
自分の気持ちを加える
褒め上手な人は、自分の気持ちをさりげなくのせて相手を褒めます。「えらい!」や「すごい!」といった表現ではなく、上司である自分はどう思うのかを明確な言葉で伝えるのです。
たとえば、部下の企画書を評価する際は、次のように褒めるのはいかがでしょうか?
■企画書について褒める場合
・〇〇さんが作った企画書の目の付けどころにセンスを感じました。図解を随所に取り入れ、イメージもしやすかったです。読みながらワクワクしてうれしくなりました。
見過ごされやすい部分にも注目
あまり注目されていない点や、本人や周りが見過ごしやすい部分にも着目し、褒めるのもいいですね。
たとえば「期日を必ず守る」「デスクやデスク周りが常にきれい」「はつらつとした挨拶をしてくれる」などは、当たり前のことかもしれませんが、できない人も多いものです。当たり前のことをきちんと継続できるのは、素晴らしいことですから、言葉にして伝えましょう。
■期日管理について褒める場合
・〇〇さんは私が言わなくても必ず期日を守ってくれますね。安心して仕事を任せられるから、本当に助かっているの。いつもありがとう。
褒めるタイミングは?
褒める際は、タイミングやシチュエーションにも気を配る必要があります。いつ、どのような場で褒めればよいのかを具体的に見ていきましょう。
成果の直後が伝わりやすい
部下や後輩が成果を出した場合は、その直後に褒めるのがいいでしょう。タイミングを合わせるのが難しいときは、一言だけでも褒めると、部下のモチベーションアップにつながります。
■成果を褒める場合
・今月は、とてもいい成績でしたね。おめでとう。〇〇さんのこれまでのがんばりが報われて、私も本当にうれしいです。