「河豚」の正しい読み方と意味
河豚の正しい読み方は……「ふぐ」です。漢字から受ける印象と少し異なるため、意外だと感じた方も多いのではないでしょうか。
デジタル大辞泉での解説は、以下のとおりです。
【河豚】ふぐ
《「ふく」とも》フグ目フグ科の魚の総称。海産のものが多い。体はふつう太っていて腹びれがなく、体表にとげ状のうろこをもつものや、うろこのないものがある。口は小さく、歯は癒合してくちばし状を呈し、よく水を飲んで体を膨らませる。多くは内臓に毒をもつ。肉は淡白で美味。トラフグ・マフグ・キタマクラなど、日本近海に約40種が知られる。フグ目にはハコフグ科・ハリセンボン科なども含まれる。ふくべ。かとん。《季 冬》「―の面世上の人を白眼にらむ哉/蕪村」
[類語]真河豚・虎河豚
河豚は日本各地で楽しめる高級食材として、知名度のある魚の1つです。この機会に、漢字の誤用をしないようにしっかりと覚えておきましょう。
■日本では馴染み深い食材
河豚は日本では馴染みのある食材で、昔から親しまれてきました。日本一の漁獲量を誇っているのは、日本海側に位置する自然豊かな石川県です。
石川県のなかでも、特に河豚料理で有名なのは能登地域で、さまざまな種類の河豚が水揚げされています。一般的に河豚の漁獲に用いるのは、定置網です。
しかし、定置網を使った漁では網にかかった河豚同士が噛みつき合ってしまうケースがあるため、1匹ずつ捕獲するノベナワ漁も盛んにおこなわれています。
■「海豚」との誤用に注意!
河豚と表記が似ている生き物として「海豚」が挙げられます。河と海の違いになるため、ついつい読み間違えてしまう方も多いでしょう。
海豚の正しい読み方は……「いるか」です!どちらも良く知られた生き物ですが、いざ漢字を前にすると迷ってしまうかもしれません。
【海豚】いるか
クジラ目の哺乳類のうち、小形のハクジラ類の総称。体長1~5メートル、体形は紡錘状、口の先がくちばし状で、背びれのあるものが多い。マイルカ・カマイルカ・バンドウイルカなど大部分が海洋性であるが、カワイルカなど淡水にすむものもある。多くは群れをなして泳ぎ、魚類を主食とする。知能が高い。《季 冬》
河豚は「河」という字が入りますが、実際には河豚科の魚の多くは海に生息しています。海と河の違いで全く違う生き物を示す言葉になってしまうため、正しく使い分けられるようにしておきましょう。
「河豚」の由来は諸説あり
河豚という言葉の由来には、諸説あります。今回は、次の2つの説をご紹介します。
・由来1:怒った様子を表している
・由来2:口の形を表している
河豚は大きく膨らんだお腹に、鋭いとげをもつ、とてもユニークな魚です。特徴のある見た目が、名前の由来にも影響を及ぼしています。
日本では古く縄文時代の遺跡から、河豚の化石が発掘されています。歴史ある河豚の名前の由来を知っておきましょう。
由来1:怒った様子を表している
河豚の由来の1つ目は、怒って膨らんだ様子を表しているという説です。かつて河豚は「ふく」と呼ばれていました。
丸くプクッと「ふくれる」姿から、「ふく」という名前が付けられます。現在でも河豚料理が有名な山口県では、河豚のことを「ふく」と呼び、ふく料理は多くの地元の人々や観光客に親しまれています。
また、膨らんだ河豚の姿がひょうたんを意味する「フクベ」に似ていたことから「ふく」となったとする説もあります。
由来2:口の形を表している
2つ目の由来は、河豚の口元が息を吹きかける時のような形をしていることが、名前の由来となったとする説です。河豚の口は、確かに前に突き出す特徴的な形をしています。
河豚は砂のなかから食料を探す際に、吸い込んだ水を口から勢いよく吹き出して砂利をどける仕草をします。尖った口から水を吹く姿から、現在の河豚の名が付けられました。
「河豚」が高級食材である理由
河豚は特別な日に楽しみたい、高級食材として親しまれています。毒の処理には高い技術が必要とされるため、河豚の調理が難しいことは有名です。
そのほかにも、河豚が高級食材であることには次の2つの理由が関係しています。
・江戸時代までは調理が禁止されていた
・身以外の部位は破棄されてしまう
意外と知らない、河豚に関する関連知識をご紹介します。
■江戸時代までは調理が禁止されていた
日本における河豚食の歴史は古く、縄文時代から食材として用いられていたと推測されています。しかし、河豚は毒の扱いを間違えてしまうと、人間の健康にも大きな被害をもたらす食材です。
河豚料理で多くの兵士が命を落としてしまう自体が発生し、豊臣秀吉は「河豚食用禁止令」を発令しました。それでも隠れて河豚を食用として楽しむ人々が多く、江戸時代には現在につづく河豚料理の文化が発展していたとされています。
最終的に河豚の食用が解禁されたのは、明治時代に入ってからのことです。古くから日本では親しみのある食材ではあるものの、時代によっては食用が禁止されており、貴重な食材として扱われるようになりました。
■身以外の部位は破棄されてしまう
河豚は比較的大型な魚ではあるものの、猛毒をもっているため専門家によってさばかれた後、身以外の部分は破棄されてしまいます。種類によっては皮や白子が食用にまわされる場合もありますが、かなりレアなケースだといえるでしょう。
ほかの魚の場合は、部位ごとに切り分け出荷されたり、飼料のエサ用に出荷されたりして、余すところなく利用できます。河豚の場合は取り扱うのにも免許が必要なうえに、食用にできるのが全体の一部に限られていることから、どうしても高価になってしまうのです。
「河豚」は各地で呼び名が異なる
河豚は、日本各地によっても呼び名や表記が異なるのが特徴です。各地の呼び名を確認しておきましょう。
・ふく:山口県(下関市)
・まふぐ:広島県
・きたまくら:高知県
・いかふぐ:富山県
・トミ:千葉県(銚子)
・テッポウ:大阪府
・くろもんふぐ:大分県
・ブッキン:熊本県(天草)
見た目にも珍しく、特別な調理法が必要とされる河豚は、その独特な様子からさまざまな愛称で親しまれているようです。
「河豚」の正しい読み方をマスターしよう!
河豚は日本に古くから馴染みのある食材として、現在まで日本各地で親しまれています。名前の由来には諸説ありますが、どれも河豚の独特な見た目や生態に関連しているものです。
ほかの魚とは少し違った魅力を味わえるのが、河豚ならではの良さだといえるでしょう。河豚と間違えやすい海の生き物として「海豚」が挙げられます。
いざという時にミスをしてしまわないように、この機会にしっかりと整理しておくのがおすすめです。ご紹介した河豚の知識を参考に、今後も日本の素晴らしい河豚料理文化を楽しみましょう。
(引用全て〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
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