インシデントの意味とは?
「インシデント」と言ってもピンとこない方も多いかもしれませんね。しかし、「○○空港で重大インシデントが発生!」と見聞きすると、途端に「あ、ニュースなどで見たことがある!」と感じられる方が増えるのではないでしょうか? 「インシデント」は、航空関連や医療などの情報でよく使われる言葉です。しかし、日常生活で使われることは、あまりないかもしれません。
とはいえ、IT関連などでも使われる言葉ですから、理解しておくと今後役に立つはずですよ。本記事では、「インシデント」について、紹介します。
インシデントとはどんな意味?
インシデントとは、次の意味があります。
▷インシデント【incident】
1:出来事。特に、ちょっとした事件。
2:《operational incidentの略》航空機などの運航障害。
(出典:小学館 デジタル大辞泉)
インシデントという言葉が使われるシーンは、「事件や事故などの危難が生じる可能性のある状況」であることがほとんど。この言葉が登場したら、何かしらの出来事や事件が起こる一歩手前であったと考えていいでしょう。
また、インシデントの意味合いは、業界やジャンルで少しずつ異なります。それぞれの違いを把握しておくといいですね。
分野・業界別にインシデントを解説
ここからは、各分野におけるインシデントについて見ていきましょう。まずは航空業界のインシデントから紹介しますよ。
航空業界のインシデントとは?
航空業界でのインシデントは、「重大事故にはならなかったけれど、事故が発生する可能性があった事態」を指します。具体的な事例としては、航空中に他の航空機との接触の恐れがあったことや、燃料の欠乏、発動機の破損、指示とは違う滑走路からの離陸など。「航空法」でも規定されています。
軽微な事故やヒヤリとしたり、ハッとしたインシデントについて徹底的に分析した報告書を公表することで、事故を未然に防ぐことが大切です。
なお、運航障害は、オペレーショナル・インシデント(operational incident)と言いますよ。
ICT分野のインシデントとは?
IT業界でインシデントを使う場合、「システムが正常に使えない状態」を指します。つまり、コンピューターやネットワークのセキュリティーが危ぶまれる事態のこと。
具体的には、内部からの情報漏洩や、外部からの不正アクセス、コンピューターウイルスの感染などが挙げられます。「セキュリティーインシデント」、「情報セキュリティーインシデント」とも言いますよ。
こうした事態に陥った場合、復旧が求められますよね。復旧のために行う調査や活動は、「インシデント・レスポンス」と言います。
医療業界のインシデントとは?
医療業界でのインシデントは、「医療事故につながりかねないような出来事」のこと。具体的には、誤った行為があったけれども患者に実施されなかった場合、本来必要でなかった簡単な処置を行なった場合(消毒や鎮痛剤の投与など)などが挙げられます。ヒヤリとしたりハッとしたインシデントについては、再発や未然に防止をする目的で、「インシデントレポート(incident report)」と呼ばれる報告書を作ります。別名、「ヒヤリハット報告書」とも言いますよ。わかりやすいネーミングですね。
なお、医療事故になってしまった場合は、「アクシデント」といいます。
参考:厚生労働省
インシデントとは何が違う? それぞれの意味を紹介
インシデントと似た言葉に、「アクシデント」や「ヒヤリハット」があります。それそれの意味や、インシデントとの違いを見ていきましょう。
アクシデント
アクシデントは、「不慮の事故」「予想外に発生した災難」などの意味を持ちます。実際に事件や事故が起き、被害や損害が生じている状態を指すため、アクシデントの一歩手前を意味するインシデントとは意味が異なります。
ヒヤリハット
ヒヤリハットは、「一歩間違えば大惨事に至る可能性がある状況」を指す言葉。「ヒヤリとした」「ハッとした」から来た造語で、インシデントとほぼ同じ意味で使われると考えてよいでしょう。違いがあるとすれば、ヒヤリハットはヒューマンエラーで生じる状況を指しますが、インシデントは必ずしもそうではないということがあります。
インシデント管理のメリットとは
インシデントが発生し、収束に至るまでを管理する取り組みを「インシデント管理」といいます。インシデント管理をすることは、大きなメリットをもたらすとされています。どのようなメリットがあるのか、ぜひ知っておきましょう。
スタッフや担当者の負担軽減
インシデント管理を適切にすることは、スタッフや担当者の負担軽減につながります。過去のインシデント事例と対処法をまとめておくことで、調査の必要がない、スタッフが対応しやすいというメリットが生まれるためです。
システムの安定稼働
システム改修や業務フローの見直しが可能になるのも、インシデント管理のメリットでしょう。インシデントは、恒久的な解決につながることが望まれます。インシデントの見直しを繰り返し行うと、発生リスクそのものを減らすことができ、システムの安定稼働につながるでしょう。
最後に
「出来事」という意味を持つインシデントは、アクシデントの一歩手前という意味で使われることが多い言葉です。業界や分野によりニュアンスは異なりますが、インシデントの対処を確実に行うことが、重大事故の発生を抑制することにつながるとされています。インシデント管理を上手く活用し、業務改善や従業員の負担軽減につなげていきたいですね。
あわせて読みたい