本末転倒とは?
本末転倒(ほんまつてんとう)とは、重要なこととささいなことを取り違えてしまうことです。この場合、本とは「物事の根本」のことで、末とは「末梢」や「末端」のことです。
本当に大切にしなくてはいけない「本」をおろそかにし、とりわけ重要とはされていない「末」を重要視してしまったときに使われます。
【本末転倒】ほんまつてんとう
根本的で重要なこととささいでつまらないことを取り違えること。「―もはなはだしい」「―した考え」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
■本末転倒の語源とは?
本末転倒という言葉は、鎌倉時代の仏教の様子から生まれたといわれています。
仏教では各宗派の始祖が開いた寺などのメインとなる寺を「本山」、本山から派生して建立された寺を「末山」と呼びますが、末山が檀家を増やしたことで本山を超える勢力を持つようになったようです。
本来であれば、本山がもっとも上であるべきところ、末山のほうが力を持ったことから「本と末が逆転した状態」という意味で「本末転倒」という言葉が生まれました。
なお、もともとは「本末顛倒」と表記されていましたが、現代では「本末転倒」と記載することが一般的です。
■本末転倒の例文をご紹介
本末転倒は、日常会話でもよく使う表現です。いくつか例文をご紹介します。
・健康になりたくてスポーツジムに通い始めたが、いきなり重いバーベルを持ち上げようとして腰を傷めた。本末転倒とはこのことだ。
・マンガを読んだら、主人公の優柔不断さに腹が立ち、イライラしてしまった。ストレス解消のためにマンガを読んだはずなのに、本末転倒だ。
本末転倒の類似表現
次の表現は、本末顛倒と類似した意味で使われることがあります。それぞれの使い方を例文をとおして説明します。また、本末転倒との違いについても見ていきましょう。
■主客転倒
主客転倒(しゅかくてんとう)とは、主人と客の立場が逆転することを指す言葉です。本山と末山の立場が逆転する本末転倒と同じく、本来であれば尊重すべきものと、尊重すべきではないものが反対になってしまうときに用いられます。
また、単に立場を逆にするときや、重要なものと重要ではないものを置き換えるときにも用いることがあります。
ただし、主客転倒と本末転倒は、厳密には同じ意味ではありません。本末転倒は根本的なことに対して優先事項が反対になっているときに用いますが、主客転倒は従属的な物事や上下関係に対して反対になっているときに使うことが一般的です。
・あの店では、客が店主の機嫌をうかがって買い物をしなくてはいけない。実に主客転倒だ。
・勉強するにも体力が必要だと思い、筋トレを始めたが、いつの間にか主客転倒して、筋トレばかりに時間を使うようになった。
■木を見て森を見ず
木を見て森を見ずとは、目の前にあるささいなことばかりに気を取られ、全体を見渡せていない状態を指す言葉です。
ささいなことを重視してしまう点は本末転倒と同じですが、本末転倒のように重要なことを軽視するというよりは、大局的な視点を持てないときに用います。
たとえば、次のように使ってみましょう。
・文法的なミスをしないことばかりに気を取られていたら、文章自体のクオリティが下がった。木を見て森を見ずとはこのことだ。
・木を見て森を見ずでは、広い視野を持てないよ。
■元も子もない
元も子もないとは、失敗して利益だけでなく元手もなくなることを指す言葉です。
本末転倒のように、重視すべきことと重視すべきではないことが反対になっているのではなく、子(得られるもの)以外にも元(元々あるもの)も失ってしまうことを意味します。
次のように使ってみましょう。
・勉強して成績が上がっても、それで健康を失うなら元も子もないよ。
・そのキャンペーンで新規顧客を獲得できても、従来の顧客を失うのなら元も子もない。
本末転倒と反対の意味の表現
本末転倒は、大事なものや重視すべきものと重視すべきではないものが逆転した状態です。本来のあるべき姿とは異なるため、自分や相手の行動を戒めるときに用いられます。
一方、次の言葉は本末転倒とは異なり、立場や態度が本来あるべき姿のまま変わらないことを示します。それぞれの使い方やニュアンスについて見ていきましょう。
■徹頭徹尾
徹頭徹尾(てっとうてつび)とは、頭(最初)から尾(最後)まで一貫してぶれることなく、同じ態度や主張を持ち続けることを意味する言葉です。
本末転倒のように、もともと重要であったことがささいなことにとって変わることはありません。次のように使ってみましょう。
・彼の「学校を廃校せずに残したい」という主張は、徹頭徹尾ぶれることがなかった。
・私たちは、徹頭徹尾この計画には反対しています。
■首尾一貫
首尾一貫(しゅびいっかん)も、首(最初)から尾(最後)まで一貫してぶれることがなく、同じ方針や態度を持ち続けることを意味する言葉です。矛盾のない主張をし続けるときなどにも、使われることがあります。いくつか例文をご紹介します。
・彼の主張は首尾一貫していて、まったく矛盾することがなかった。
・彼女の話には首尾一貫したところがなく、ご都合主義な感じがうかがえた。
徹頭徹尾も首尾一貫も、矛盾なく論理的であるときに使われることが多いです。そのため、相手を褒めるときにも活用できる言葉といえるでしょう。しかし、あまりにも意志強固で頑固なときにも、皮肉なニュアンスで使うこともあります。
本末転倒を正しい意味で使おう
本末転倒は、「本」と「末」が逆転した状態を指す言葉です。何かに熱中したときなど、木を見て森を見ずの状況になってしまい、本末転倒することは珍しいことではありません。
しかし、本末転倒の状態は好ましいとはいえません。常に「本」が何なのかを意識し、「本」を実行するために必要なことを見極めて、行動を進めていくことが求められます。
「本末転倒しているよ!」と周囲から注意されないためにも、常に物事の本質や重要なポイントを見極めましょう。
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