一生懸命の意味
一生懸命とは、自らの意志によって物事にひたむきに取り組むこと、いちずな気持ちになること、引くに引けないせっぱ詰まった状況やせとぎわなどを表す言葉で、読み方は「いっしょうけんめい」です。
【一生懸命】名・形動《「一所懸命」から》
命がけで事に当たること。また、そのさま。「―に働く」「―探しまわる」
引くに引けないせっぱ詰まった場合。瀬戸際。
「―の敵(かたき)を防ぐ」〈風来六部集・放屁論〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
ビジネスでもプライベートでもよく使われており、所信表明や抱負を述べるシチュエーションで登場することが多い言葉といえるでしょう。
■一生懸命と一所懸命の違いとは?
一生懸命と似た言葉に、一所懸命があります。一生懸命の読み方が「いっしょうけんめい」であるのに対して、一所懸命の読み方は「いっしょけんめい」と微妙に異なるため、注意が必要です。
一所懸命の意味は、大きく分けて2つあります。1つ目は、中世に使われていたもので、生活の頼みとして、命をかけて自分の領地を守ろうとすることという意味です。2つ目は、命がけになることという意味です。2つ目の意味は、1つ目の意味が転じたものとされています。
一生懸命の意味と一所懸命の1つ目の意味はかなり違いますが、2つ目の意味はほぼ共通しているといえるでしょう。
■一生懸命の語源は一所懸命?
一生懸命の語源は、一所懸命です。中世の時代に、自分の命をかけて領土を守るという意味で一所懸命という言葉が使われており、のちに転じて、命がけで物事にあたるという意味が生まれました。
さらに、その意味から転じて、「一所」が「一生」となり、「一生をかけて頑張る」というニュアンスが加わって、一生懸命という言葉が生まれたという流れです。
どちらの言葉も間違いではありませんが、現在では一生懸命のほうがよりメジャーな言葉といえるでしょう。「1つの場所で頑張る」という意味を強調する場合には、一所懸命を使うケースもあります。また、歌舞伎のような伝統芸能の世界では、一所懸命という言葉を使うことが多いようです。
一生懸命の例文
一生懸命は、さまざまな場面で使える言葉です。ただし「命がけで事にあたる」という意味があるため、ここぞという場面で使いたい言葉といえるでしょう。
【例文】
・彼女は将来の夢をかなえるための第一歩である国家資格の取得を目指して、一生懸命勉強しました。
・このプロジェクトを成功させるためには、参加しているメンバー全員が一生懸命、自分の職務をまっとうすることが必要です。
・あなたは一生懸命勉強しているつもりなのかもしれませんが、はたから見ていると、とてもそうは思えません。
■一生懸命をビジネスで使う場合の注意点
ビジネスで一生懸命という言葉を使う場合に注意しなければならないのは、多用しすぎないことです。「命がけで事にあたる」という意味を持った言葉であるため、乱発すると、説得力がなくなる場合もあるでしょう。
「一生懸命頑張ります」は、カジュアルな表現でもあります。「精進してまいります」「努力いたします」「励みます」など、場面や相手によって使い分けることを意識するといいでしょう。
一生懸命の類義語4つ
一生懸命には、さまざまな類義語が存在します。「熱心」「本気」「本腰」「真剣」「懸命」「命がけ」「躍起」「全力」「総力」「渾身」「入魂」などです。
一生懸命と同様に、四字熟語でも類義語がいくつかあります。おもな四字熟語の類義語は、以下の4つです。それぞれの言葉のくわしい意味や読み方、例文をご紹介します。
1.粉骨砕身
粉骨砕身は「ふんこつさいしん」と読み、力のかぎりを尽くして働くという意味の言葉です。努力を惜しまないというニュアンスを持っているため、相手に自分の意志を伝えたり、アピールしたりする場合に有効な言葉といえるでしょう。
【例文】
・我が社の発展のために、粉骨砕身努力する所存です。
・彼はチームのために粉骨砕身頑張ってきたのに、故障したとたん、首になってしまいました。
2.不惜身命
不惜身命は、もともと仏教に関連する言葉として使われていました。仏の道を究めるためには、自らの身も命も惜しまないという意味の言葉です。転じて、自分の身をかえりみずに力を注ぐという意味で使われるケースが多くなりました。読み方は、「ふしゃくしんみょう」です。
【例文】
・彼は山火事が起こった時に、不惜身命で自分の家族や近くにいた人々を救出しました。
・彼が負け知らずの戦国武将になれたのは、不惜身命で戦った家来の存在があったからです。
3.全身全霊
全身全霊とは、その人の持っている肉体と精神のすべてという意味の言葉で、読み方は「ぜんしんぜんれい」です。「身」は肉体を表し、「霊」は精神を表しています。
【例文】
・演技派女優として評価されている彼の妹は、全身全霊で役作りをしているため、演技が終わるまでは別人のようになっています。
・「全身全霊で君のことを愛するよ」という彼の言葉を信じた私がバカでした。
4.一心不乱
一心不乱とは、脇目も振らず、ひとつのことに心を向けてのぞむという意味の言葉で、読み方は「いっしんふらん」です。集中するというニュアンスを強調する場合に使われる言葉といえるでしょう。
【例文】
・うちの息子が勉強に集中している姿を見たことがありませんが、大好きなゲームは一心不乱にやっています。
・近所の公園で行方がわからなくなってしまった猫を、一心不乱になって探している娘の姿を見ていると、心が痛みます。
一生懸命の意味を知って正しい使い方をしよう
一生懸命とは、命がけで物事にあたることという意味の言葉です。漢字や読み方も似ているため、混同されることもある一所懸命という言葉が語源で、どちらの言葉も間違いではありません。ただし、現在では一生懸命という言葉が多く使われています。
ビジネスでも所信表明や抱負を述べるシチュエーションでよく登場しますが、多用しすぎには注意したほうがいいでしょう。一生懸命との言い換え表現や類義語も知ったうえで、適切な使い方をしてください。
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