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友人や家族に相談した時に、「案ずるより産むが易しというし、まずはやってみたら?」などとアドバイスをされたことはありませんか? なんとなく意味はわかるものの、説明するのは難しいですよね。本記事では、会話の中で時折耳にする「案ずるより産むが易し」の意味や類語、対義語などを解説します。
「案ずるより産むが易し」の意味と語源
まずは、「案ずるより産むが易し」の意味と語源をチェックしていきましょう。
意味は「思ったより容易いこと」
「案ずるより産むが易し」は、不安にかられている状況で相手や自分を励ますために使われます。「考えているほど難しくて、深刻な状況ではないから安心しなさい」というニュアンスを含んでいます。
【案(あん)ずるより産(う)むが易(やす)し】
物事はあれこれ心配するより実行してみれば案外たやすいものだ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何かを新しく始める前には、誰しも不安な気持ちを抱くものです。「案ずるより産むが易し」は、そんな状況から脱するヒントとなる言葉だといえるでしょう。
由来は出産前の妊婦さんの様子
「母は強し」という言葉もあるように、命を懸けて出産を乗り越えた母親は、出産の痛みなど気にしていないかのように、我が子に愛情をかけてお世話をします。
出産前には、色々な情報を真に受けて心配になってしまう女性も多いでしょう。出産は大変な経験ですが、それでも出産した瞬間から少しずつ痛みを忘れていく女性の様子から、「案ずるより産むが易し」という言葉が生まれたといわれています。
「案ずるより産むが易し」の類義語・対義語
先のことを心配している相手を励ます際に使える、「案ずるより産むが易し」ですが、似た状況で用いられる表現として「窮すれば通ず」などがあります。紹介する類義語は次の3つです。
【案ずるより産むが易しの類義語】
・「窮すれば通ず」
・「案じるより団子汁」
・「取り越し苦労」
一方の対義語は、ピッタリとはまる表現はありません。
「窮すれば通ず」
「案ずるより産むが易し」の類義語の意味と読み方を紹介します。言い換え表現を知っておくと、言葉への理解も深まりますよ。
「案ずるより産むが易し」との共通点は、まだ起きていないことを心配している点が上げられるでしょう。「窮すれば通ず」は、実際にやってみれば何かしらの突破口があるというニュアンスを含み、より「案ずるより産むが易し」に近い表現だといえます。
「窮すれば通ず」の意味は以下の通りです。
【窮(きゅう)すれば通ず】
(「易経」繋辞下から)
事態が行き詰まって困りきると、かえって思いがけない活路が開けてくるものである。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ギリギリまで追い詰められた時ほど、思いがけない人から助けられることもあるでしょう。別の会社からスカウトされたり、起業することになるなど新たな可能性と出会うことになりますね。
「取り越し苦労」
「取り越し苦労」の意味は以下の通りです。
《「とりこしぐろう」とも》どうなるかわからないことをあれこれ心配すること。杞憂(きゆう)。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
先のことをあれこれ心配していたものの、心配していたような出来事は起こらなかった、というような時に、他人から「とんだ取り越し苦労だったね」と言われたことはありませんか? 日常会話でよく使われる言葉ですよね。
対義語は存在しない
「案ずるより産むが易し」と対になる対義語はないため、反対の意味を持つ言葉をいくつか紹介します。「取り越し苦労」や「杞憂(きゆう)」と相反する意味を持つ表現には「能天気」や「楽観的」などが挙げられます。
能天気
「能天気」の意味を辞書でみてみると、
[名・形動]軽薄でむこうみずであること。のんきでばかげていること。また、そのさまや、そのような人。「―な人物」
[補説]「脳天気」とも書く。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
となります。のんびりとしていて、くよくよと悩んだりすることがないような性格の人に対して「君は能天気だね」と言ったりしますよね。褒め言葉として使うこともあれば、嫌味として使う人もいるでしょう。
楽観的
「楽観的」の意味は以下の通りです。
[形動]物事をうまくゆくものと考えて心配しないさま。「―な見通し」「―に考える」⇔悲観的。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
将来のことなどに深く思い悩むこともなく、のんきに構えている人は楽観的とも言えるでしょう。「なんとかなる」と思うと余計な力が抜けて、ストレスが減るかもしれませんね。
「案ずるより産むが易し」の使い方と例文
「案ずるより産むが易し」は、使い方のポイントを押さえることで、自然な流れで使いこなせるようになります。上手く「案ずるより産むが易し」を使うコツは下記の2点です。
1.相手を励まし行動を促す
2.過去を振り返る
また、「案ずるより産むが易し」を活用した例文も紹介します。実際のシーンで使うところを想像しながらおさらいしてみましょう。
相手を励まし行動を促す
「案ずるより産むが易し」を効果的に使えるタイミングは、心配してなかなか決断できない相手を励ますシーンです。あれこれと考えすぎて自信を無くしてしまっている友人や、先のことを心配して挑戦できずにいる同僚に向けて使うとよいでしょう。
とにかくやってみることで良い結果が得られるかもしれないと、相手の背中を押してあげられる用法です。
過去を振り返る
これからのことだけでなく、過去の出来事を振り返る場合にも「案ずるより産むが易し」を使えます。あれだけ心配していたが、結果はそんなに大したことが無かったという意味で用います。
例えば、取り組む前は関係者からも反対意見が多く心配されていた新規プロジェクトが、結局は問題なく進んだ場合を考えてみましょう。「新規プロジェクトの件では、案ずるより産むが易しだと思い知ったよ」というふうに感想を表現することが可能です。