「いぶし銀」とは?意味をご紹介
いぶし銀とは、華やかさはないけれど、実力や魅力があることを示す言葉です。
いぶし(燻し)とは、銀細工や銀のアクセサリーなどによく見られる現象で、へこみや溝部分などが黒く変色していることを指します。意図的にいぶしを作って銀をツヤのない灰色に変え、陰影を強調したり、古びた感じを演出したりすることもあります。
【燻し銀】いぶしぎん
1.いぶしをかけた銀。つやのない灰色になる。また、そのような色。
2.見た目の華やかさはないが実力や魅力があるもの。「ベテラン俳優の―の演技」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
■「いぶし銀」の語源とは?
いぶし銀の語源は、いぶし(燻し)の技法により銀をツヤのない灰色〜黒に変えることに由来します。
いぶしの技法は、もともとは屋根瓦に用いられていたとされています。瓦をいぶして深みのある色合いにしたことから、銀細工や銀のアクセサリーなどに応用されたようです。
なお、屋根瓦をいぶす技法は、安土桃山時代に中国から伝えられたといわれています。
■「いぶし銀」を使うときの注意点
いぶし銀は、実力や魅力があることを表現する言葉です。そのため、基本的には誉め言葉ですが、「華やかではない」ことも意味するため、相手にとってはけなされていると感じるかもしれません。状況を読み、相手が不快にならないように使いましょう。
いぶし銀という言葉を、自分に使うこともあまりありません。また、若者や女性に使うこともあまりありません。明らかに派手ではなく、本人も派手さがないことを自覚しているときに、「いぶし銀」という言葉で実力や魅力を褒めるようにしてください。
「いぶし銀」として評価されるのは?特徴もご紹介
いぶし銀として褒める対象は、ある程度限られます。主な対象としては、次の人々が挙げられます。
また、上記に該当している人々なら、誰もが「いぶし銀」と評価されるのではありません。ここからは、「いぶし銀」と評価される人々の特徴もご紹介します。
■野球やサッカーなどのスポーツ選手
野球やサッカーなどのスポーツ選手に対して、「いぶし銀」という言葉で実力や魅力を評価することがあります。
ただし、華々しく活躍するホームランバッターや、スーパーゴールを連発するような主力選手については使いません。いぶし銀といわれるのは、主に次のような選手です。
・スターティングメンバーではないが、代打などで参戦して手堅い結果を出す選手
・守備などの得点につながらないプレーにおいて、頻繁にファインプレーを出す選手
いずれも若手ではなく、ある程度の年季が入っていることが一般的です。安心感のある、玄人好みのプレーをします。
■俳優や歌手などのパフォーマー
俳優や歌手などのパフォーマーに対して、「いぶし銀」という言葉で実力や魅力を表現することもあります。
スポーツ選手と同じく、ある程度の年季が入っているパフォーマーに使うことが一般的です。たとえば、次のようなパフォーマーを「いぶし銀」と評価します。
・とくにセリフがないのに、たたずまいだけで存在感を発揮するパフォーマー
・画面や舞台にいるだけで、ストーリー自体に重厚さが出るパフォーマー
■職人や芸術家
職人や芸術家に対しても、「いぶし銀」という言葉で評価することがあります。なお、この場合も、職人や芸術家自身がある程度年季が入っていることが一般的です。
たとえば、制作物や作品に以下のような特徴が見られるとき、「いぶし銀」や「いぶし銀の技術」と評価できるでしょう。
・手作りと思えないほど精緻な制作物や作品
・美術品として飾りたいほど美しい制作物や作品
「いぶし銀」と類似する状況で使われる言葉
いぶし銀と同じく、華やかさではなく実力や魅力を褒める言葉としては、次のものがあります。
それぞれの使い方を、例文をとおしてご紹介します。
「ベテラン」
ベテランとは、長年の経験を重ね、その道に熟達した人を指す言葉です。たとえば、次のように使います。
・タクシーに乗ったら、ベテランドライバーだった。停止やカーブの際にも揺れがほとんどなく、素晴らしいドライビングテクニックだった。
・彼女はベテラン看護師だ。どのような状況でも冷静に対応してくれるため、安心できる。
ベテランもいぶし銀と同じく、自分に対してはあまり使わないようです。ベテランは経験が長いだけでなく、その道に熟達していることを意味する言葉のため、自分に対して使うと自画自賛と受け取られてしまうかもしれません。
「渋い」
渋いとは、渋柿を食べたときなどのように舌がしびれるような味にも使う言葉ですが、落ち着いた趣があるときにも使います。派手ではないけれど、味わい深いものや人に対して、「渋い」と表現することがあります。
・彼の渋い魅力は、ほかの俳優では出せないものだ。
・トレンチコートにサングラス。そのような渋いファッションが似合うのも、彼女ならではだ。
「趣がある・味がある」
趣(おもむき)があるとは、風情があることや、しみじみとした味わいがあることを意味する言葉です。人に対してというよりは、ものや景色に対して使うことが多いようです。
・彼がつくった茶碗には、独特の趣がある。
・桜が散った後の景色も、また趣があるといえる。
一方、味があるとは、そのものが持っている趣やよさがあることを表現する言葉です。次のように使えます。
・玄関に味のある絵を飾っていますね。どなたが描かれたのですか?
・彼女の演技には味がある。何度も繰り返して見たくなるほどだ。
いぶし銀を正しい状況で使おう
いぶし銀とは、いぶして灰色に変えた銀細工のように、華やかさはないものの、独特の魅力や実力があることを示す言葉です。相手を褒める言葉ですが、「華やかさがない」という意味にもなるため、場合によっては相手を不快にさせるかもしれません。
状況を読み、適切な場面で使うようにしましょう。相手を不快にさせるかわからないときは、ベテランや趣があるなどのネガティブな意味が含まれていない言葉を選ぶと安心です。
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