「滅私奉公」とは?
「滅私奉公」という言葉をご存じですか? 日常生活のなかでは、めったに耳にしない言葉かもしれません。実用度は高くありませんが、こういった言葉を知識として押さえておくことで、教養として活きてくることもあるはず。
そこで本記事では、「滅私奉公」の意味や使い方を詳しく紹介します。あわせて、「滅私奉公」と似た意味を持つ言葉、「滅私奉公」と反対のニュアンスを持つ言葉についても一緒に見ていきましょう。
「滅私奉公」の意味
さっそく、「滅私奉公」の意味について説明します。「滅私奉公」には、「私利私欲のこころを捨てて、公のために尽くすこと」という意味があります。「そもそもなんて読むの?」という方も多いかもしれません。「滅私奉公」は「めっしほうこう」と読みます。
「滅私」という言葉と、「奉公」という言葉が組み合わさった四字熟語です。それぞれの意味も見ていきましょう。まず「滅私」ですが、「滅私」は「私を滅する」と書きますね。「私」とは、ここでは「私利私欲」のこと。つまり「私利私欲を捨て去る」ということを表すのです。
「奉公」にはいくつか意味があり、「雇われて他者の家の家事や家業に従事すること」「国のために身をささげて働くこと」「封建社会において、主人から受けた恩を軍事義務などで返すこと」「主家に忠義であること」などが挙げられます。「滅私奉公」における「奉公」は、「国のために身をささげて働くこと」などのニュアンスが強いです。
参考:『日本国語大辞典 第二版』(小学館)
「滅私奉公」の使い方を例文で紹介
「滅私奉公」のニュアンスは掴めましたか? ここからは使い方について説明していきます。例文を挙げて説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
1:「あの会社は滅私奉公を強要するって有名だから、就職するのはよく考えた方がいい」
「滅私奉公」という言葉の響きから、なんとなく堅苦しい印象がありますが、友人など気心が知れた相手に対しても使うことができます。この例文で使われている「滅私奉公」は、ネガティブなニュアンス。自ら望んで私利私欲を捨て、何かに従事するならまだしも、それを強制するのは間違っていることを示しています。
2:「先輩には、新人のときにお世話になった恩がある。だから滅私奉公の気持ちで、今度は私が先輩の役に立ちたい」
この例文の場合は、滅私奉公は他者から強制されるのではなく、自分の意志で抱く気持ちです。損得勘定や見返りを求めて行うのではないというところが、重要なポイントだといえるでしょう。
3:「彼の滅私奉公は、当時の人々に感動を与え、巷の新聞で取り上げられるほどであったと言われている」
滅私奉公は自分の欲を捨て、社会など公のために行動すること。その行動が周りの人に感動を与えたことを表現しています。
「滅私奉公」と似た意味を持つ言葉と違い
「滅私奉公」の使い方は押さえられましたか? ここからは「滅私奉公」と似た意味を持つ言葉について紹介します。
1:自己犠牲
「自己犠牲」とは、「私利私欲や幸福を捨てて、ある目的のために尽くすこと」。「自己」は自分のことを表します。
2:利他
「自分のことよりも、他者の幸福や利益を願うこと」を「利他」といいます。読み方は「りた」です。仏教用語でもあり、「人々に利益を施して救うこと」という意味があります。
「滅私奉公」は公のために尽くすことですが、「自己犠牲」や「利他」はそれに限らず、自分を犠牲にすること、他者のためであることを広く表しているといえます。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「滅私奉公」の対義語を紹介
ここまでは、自分のことより、社会や他者の利益を優先することなどを表す言葉にフォーカスを当ててきました。では、その反対を表す言葉にはどのようなものがあるのでしょうか?
1:利己
「利他」の対義語でもあり、「滅私奉公」とも対照的なニュアンスを持つ言葉が「利己(りこ)」。「自分の利益だけを考え、他人のことはかえりみないこと」をいいます。「利己心」や「利己的」、「利己主義」などと使われることが多いです。
2:身勝手
「自分の都合や利益のみを考えて、他人のことはかえりみないさま」のこと。「身勝手な行動によって、多くの人が不利益をこうむった」というように使える言葉です。
3:自己中心的
「自己中心的」とは、「自分中心に物事を考え、他者をないがしろにするさま」のこと。会話の中では、略して「自己中」と言ったりします。私利私欲をなくして行動する滅私奉公とは対極といえるでしょう。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
最後に
本記事では、「滅私奉公」という言葉について解説しました。「滅私奉公」とは、「私利私欲のこころを捨てて、公のために尽くすこと」。心からの行動ならまだしも、無理は禁物。自分のこころをすり減らしてまで無理に尽くしたり、強制されたりしていると感じた場合は、1度冷静になって現状を見つめてみるとよいかもしれません。
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