「過渡期」とは
さまざまな場面で使われる「過渡期」。よく見聞きするけれど、正しい意味は知らない人もいるかもしれません。「過渡期」は、古いものが新しいものへと移り変わる中間期のこと。状態や状況が安定せず、さまざまなことが変化していくようなイメージを抱かせる言葉です。
「過渡期」はどのような場面で使うのか、意味なども含め見ていきましょう。
「過渡期」とは移り変わる時期のこと
【過渡期】
読み方:かとき
古いものから新しいものへと移り変わっていく途中の時期
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「過渡期」は、社会や組織の変革や革新が生じた時や、制度の変化などが生じた際によく使われています。それまでの体制や制度は通用しなくなるが、新しいことは確立されていないことが多いため、不安定な状態になりやすいでしょう。
「過渡期」の使い方は
「過渡期」という言葉の使い方を紹介します。よく使われている言い回しを中心に例文を挙げますので、参考にしてくださいね。
「過渡期を迎える」
《例文》
・当社は過渡期を迎えているが、顧客ファーストであることに変わりはない
・法令改正の影響もあり、この業界は過渡期を迎えつつある
「過渡期を迎える」は、ビジネスシーンでよく使われる言い回しです。企業などが制度や体制、事業内容を大幅に変更する際や、世界情勢や法令改正による影響で変革を余儀なくされた際などに、「過渡期を迎える」という表現を使うことが多いでしょう。
「過渡期である」「過渡期にある」
《例文》
・スタッフの入れ替わりもありチームとしては過渡期であるが、雰囲気はよい
・物流業界は過渡期にあり、課題が山積みだが、伸びしろもある
環境変化が生じた時はもちろん、スタッフなどが世代交代する際も「過渡期」を使うことがあります。たとえば、ベテランの社員が中心だった部課署を刷新し、若手社員メインとなる場合は「過渡期にある」と言えるでしょう。
「過渡期」は成長する時期を表すことも
「過渡期」は、古いものから新しいものへ変化を遂げる移行期を指しますが、企業や組織などが成長して行く時期であるケースも多いです。会社や人材は、「過渡期」を経て成長すると言えるでしょう。
また、歴史において時代が変わるような出来事が生じた際や、そのようなことが起きた時期を表す際に「過渡期」を使うことがあります。歴史上の大きな出来事に対して、「過渡期」という表現が使われているのを見たことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「過渡期」は、個人のことに対しても使います。思春期から大人になる時期や、恋愛や仕事などにおいて、考え方や価値観が変わるような時期を「過渡期」と表現することもあるでしょう。
「黎明期」との違いは
「過渡期」と似た意味を持つ言葉に、「黎明期(れいめいき)」があります。「過渡期」の意味と混同しやすいので、あらためて意味や使い方、違いを見ていきましょう。
「黎明期」の読み方と意味
夜明けにあたる時期、新しい文化・時代などが始まろうとする時期を意味する「黎明期」。暗闇に太陽の光が差し始め、徐々に明るくなる1日の始まりのような時期を指します。何もないところから新しい事柄が生まれ、スタートすることを表すため、何かしらの創成期や出発点が該当すると言えるでしょう。
使い方と違いをチェック
《例文》
・インターネット黎明期は1990年前後と聞いたので、根拠資料を探している
・この会社は黎明期にあるため、不安定ながらも勢いがある
「過渡期」「黎明期」ともに変化する時期を表しますが、言葉の意味は異なります。既存の古いものから新しいものへと変わる時期が「過渡期」、新しいものが始まろうとしているのが「黎明期」になります。それぞれの意味と違いを把握し、誤用しないようにしたいですね。
「過渡期」の類義語を紹介
ここからは、「過渡期」の類義語を見ていきましょう。それぞれの意味を紹介します。
「変革期」
物事の仕組みや制度を大きく変え、新しくすることや、変わって新しいものになる時期を表す言葉。社会や組織、意識に対して使われています。「過渡期」よりも、大きな変化に対して使うことが多いでしょう。
《例文》
・新規事業立ち上げを皮切りに、わが社は変革期に突入するだろう
「転換期」
傾向や方針などを違う方向に変えることや、別のものに変わることを表します。「過渡期」とほぼ同義と考えていいでしょう。言い換え表現としても使えます。
《例文》
・働き方改革による制度の見直しがはじまり、当社は大きな転換期を迎えている
「過渡期」の対義語
「過渡期」の対義語も見ていきましょう。落ち着いている状態や、「過渡期」を経た時期が該当すると考えてください。
「安定期」
物事が落ち着いた状態にある期間のこと。変化があまりなく、体制や状態が整った状態になることが多いでしょう。
《例文》
・変化著しい時期を経て安定期に入り、ようやく落ち着き始めた
「全盛期」
もっとも勢いがあり、活発である時期のこと。「全盛期」は、物事が移り変わったあとに訪れることがあるため、「過渡期」の対義語になると言われることもあります。
《例文》
・全盛期を迎えたが、さらなる飛躍を目指し、今一度気を引き締めたい
「爛熟期」
物事が発達しきって、衰えの兆しさえ含んでいる状態になる時期のこと。読み方は「らんじゅくき」。果実が熟し過ぎているという意味から、物事が成熟し切るということを表す際にも使われるようになりました。
《例文》
・私がもっとも興味があるのは、江戸時代の爛熟期だ
「過渡期」を英語で表すと?
「過渡期」を英語で表したい場合は、次の英語表現を使うといいでしょう。
▷「transition」
意味:移り変わり、移行、変化
《例文》Our company is in transition./当社は過渡期にある
「過渡期」同様、時代や体制、制度の移行、物事の変化などに対して使うことができます。
最後に
「過渡期」は、古いものから新しいものへと移り変わって行く途中の時期を表す言葉。時代や体制、制度、物事などに対して使います。社会や組織に対して使われることが多いですが、個人の出来事や人生、恋愛、成長などに対して使うのもOK。
さまざまなシーンで使える言葉と言えるでしょう。「過渡期」の類義語や対義語を把握しておくと、語彙力や表現力が高まります。使い方や「過渡期」との違いを把握しておくといいでしょう。
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