不退転とは信念を持ち何ごとにも屈しないこと
不退転(ふたいてん)とは、信念を持ち、何ごとにも屈しないことを意味する言葉です。また、不退(ふたい)とは、修行の過程ですでに得た境地から後戻りしないことや、退くことなくいつも修行することを指します。
【不退転】ふたいてん
1.信念を持ち、何事にも屈しないこと。「―の決意」
2.「不退」に同じ。【不退】ふたい
1.仏道修行の過程で、すでに得た境地から後戻りしないこと。不退転。
2.退くことなくいつも修行すること。善根を重ねて、退いたり失ったりしないこと。不退転。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
不退転を例文でご紹介
不退転は日常会話でも使われますが、スピーチや演説などでも使われることがあります。信念を持ち、どのようなことが起こっても折れずに進んでいくときに「不退転」の言葉で表現しましょう。
・賛同者が少ない中、不退転の決意でプロジェクトを開始した。
・彼はすぐに「不退転の決意で……」というが、まだ何一つ最後までやり遂げていない。
不退転は元々は宗教(仏教)用語
「不退転」は元々仏教用語で、仏道修行の過程で得た悟りや地位を失わないことを指します。仏教に帰依し、信仰のためにすべてを投げ出すことも辞さない強い精神力や、理想に向かって不断の努力を続けることなどを「不退転」と表現します。
強い意味を持つ言葉のため、目標や主張がすぐに変わってしまうような人物が使うのはふさわしくありません。どのようなことが起こっても変わらないと自分自身で判断できるときのみ、「不退転」の言葉を使って表現するようにしましょう。
ビジネスシーンでの不退転の使い方
「不退転」は強い意志を示す言葉のため、確実性を重んじるビジネスシーンでも使われることがあります。よくある使い方をご紹介します。
決意を示すときに使う
「不退転」は、決して退くことがない強い決意を示すときに使われる言葉です。ビジネスシーンでは、決意を示す状況も多いのではないでしょうか。心が変わらないことを表現したいときに、次のように使ってみましょう。
・不退転の決意を持ち、このプロジェクトに参加しました。全力で頑張ります。
・これからも困難にぶつかることと思いますが、不退転の決意で最後までやり遂げます。
相手の覚悟を確認するときに使うこともある
自分自身の決意を表明するときに「不退転」を使うことがありますが、相手の覚悟を確認するときにも使うことがあります。
・彼には不退転の覚悟があるのだろうか。今までの態度を見ていると、にわかには信じられない。
・皆さんには不退転の覚悟でプロジェクトに取り組んでほしいと思います。
確固とした決意があるときに使おう!
不退転は、確固とした決意があるときに使う言葉です。「どうしようかな」と迷っている段階では、使わないようにしてください。
また、何度も「不退転の覚悟」「不退転の決意」と使うと、言葉に重みがなくなってしまいます。不退転は、単に強い覚悟や決意ではなく、精神力や不断の努力を問われるほどの強い覚悟・決意を指す言葉です。
ここぞという大事な場面で、「不退転」を使って強い意志を示すようにしましょう。
不退転と類似する意味の言葉
「不退転」のように強い意志や覚悟を示す言葉としては、次のものが挙げられます。
それぞれの意味やニュアンスの違いについて、例文を通してご紹介します。
不撓不屈
不撓不屈(ふとうふくつ)とは、どのような困難にあっても決して心がくじけないことを指す言葉です。「撓(とう)」は、「撓う(しなう)」や「撓む(たわむ)」とも読みます。
「撓う」は、弾力があって折れずに柔らかに曲がるという意味です。弾力があって復元しやすい状態を指し、「よく撓う身体だ」「むちを撓わせて脅かす」などと使うことがあります。
一方、「撓む」は、他から力を加えられて弓なりに曲がることや、心がくじけることを指す言葉です。「撓う」にはくじけるや気力が衰えるの意味がないため、不撓不屈の「撓」は「撓う」ではなく「撓む」意味を指すといえます。
・不撓不屈の精神でチャレンジする。
・彼女のモットーは不撓不屈らしいが、口先だけだろう。
独立不撓
独立不撓(どくりつふとう)とは、他人に頼らず、自力で行動し、困難にあってもくじけないことを指す言葉です。この場合も「撓」も、心がくじけることを意味する「撓む」だと考えられます。
・独立不撓の気持ちで頑張ってきたが、一人では限界があるため、彼に助けを求めることにした。
・独立不撓の精神は立派だが、他人の意見も取り入れるほうがより良いものが完成するだろう。
百折不撓
百折不撓(ひゃくせつふとう)とは、何回失敗しても志を曲げないことを意味する言葉です。何度失敗を繰り返しても立ち上がり、困難に臆せず、最初の志を貫く様子を指します。この「撓」にも「心がくじける」の意味があるため、「撓む」由来だと考えられます。
・百折不撓の精神で挑戦する。
・百折不撓の気持ちで研究に取り組んでいるが、もうそろそろ気持ちがくじけそうだ。
なお、百折の「百」は文字通りの意味ではなく、「何度も」の意味で使われます。同じように数が多いことを示すために「百」を使う例としては、次のものが挙げられます。
・百戦錬磨(ひゃくせんれんま)
・議論百出(ぎろんひゃくしゅつ)
・百花繚乱(ひゃっかりょうらん)
・百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)
不退転を適切な場面で使おう
不退転は、信念を持ち、何ごとにも屈しないことを意味する言葉です。「不退転の決意」や「不退転の覚悟」のように、強い意志を示すときに使われます。
強い意志を確立していないときに「不退転」の言葉を使うと、言葉に重みがなくなり、信頼も失われることがあるため注意が必要です。
「不退転の決意」や「不退転の覚悟」という言葉を口にするときは、本当に最後までやり抜く強い意志を持っているか自問自答してみましょう。
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